学校訪問 男子に適した教育で学力も人間力もつける! 長野雅弘校長就任で、より飛躍する東京都市大学付属中学校・高等学校
4つの中・高再建に成功し「学校再建・飛躍のプロ」としても知られる長野雅弘氏がこの春校長に就任したのは東京都市大学付属中学校・高等学校だ。
氏はかねてより「男女別学」を推奨しており、特に身体も精神面も大きく成長する中学校からの別学は大いに効果があるという実証を示しながら実践をしてきた。同校は都内でも人気が高く、学力面でも申し分ないレベルではあるが長野校長の就任からわずか数カ月、校内にはすでに変化が現れている。長野校長の話とともに同校の魅力をお伝えする。
男女別学は中学校からが最適
長野校長は女子校での勤務が長いが、かねてから男女別学を推奨しており、今回の就任についても「論理学的に、女子教育の必要性を語るには男子教育への理解が大前提です。男子校からの講演依頼は以前からもかなり多くありましたし、そのせいか男子校でも違和感なく入れました」と語る。
近年、男女で脳のつくりまでが違っていることが科学的にも証明され、全く別の生き物と言っても差し支えないほど考え方や見え方も違うことがわかってきている。男女別学は必然なのだ。
一般的に女子の方が成長が早く、それに男子が追いつくのは高校2年生あたり。現在の都内の小学校では女子が生徒会長、男子が副会長、クラス委員長も女子で、男子が副委員長というケースが多い。力でも精神面でも女子の方が勝っているのもかかわらず「女の子は大切にすべき」という風潮、目に見えぬ様々な圧力のせいで自分を抑えている男子、自信を失っている男子が多くいる。それが「最近の男の子は弱くなった」と言われる所以でもある。
声変わりが始まり、背が伸びて、精神面での伸長が顕著になるこの時期に思う存分自分を活かせる男子校での男子教育は、その子の能力を最大限に引き出せると言っても過言ではない。
就任後すぐ、長野校長が手を付けたのは教職員の意識改革だ。教員のみならず事務員まで全ての教職員と面談をした。一人ひとりに対し、「あなたはこの学校をどうしたい? どうしたらあなたがもっと良くなるだろうか?」とそれぞれの志を引き出した。「職員がイキイキと働けば生徒は変わる!先生が明るいと生徒は付いてくる!」という確信があるからだ。また、男女の違いについても理解してもらい、男子に合った教育、対応を徹底した。変化はすぐに表れ、学校全体の雰囲気が明るくなった。
知的好奇心を引き出し、グローバルマインドを育む様々なカリキュラム
同校では生徒の知的好奇心を引き出すカリキュラムが満載だ。中でも中学3年間で行う科学実験は約120時間、60ものテーマに取り組む。論理的思考力と記述力を養う実験後のレポート提出が必須だ。高1ではそれまでの学びの集大成として、自ら設定したテーマに沿った中期修了論文の執筆と発表がある。フィールドワークや文献調査を行い、仮説を立てて検証を行っていく。
生徒の興味は様々な分野に向き、それぞれが主体的に学ぶのだ。先生はそっと後押しをするだけ。
こういったアクティブラーニングも授業全てで行うと生徒が疲弊してしまい、学力は上がらないのだと長野校長は言う。
50分の授業で15分程度、週に3時間あるなら1時間だけを目安にしている。いずれも全体の3分の1になるようにとどめている。教育学の専門家で大学教授でもある長野氏によると、この1/3法則は教育学の分野ですでに実証されているとのことだ。
キャリア教育も充実しており、中学3年時に行われるOBによる講演やマナー講座、企業研究を経ての企業研修、研修後のレポート作成に発表といった流れは一般的な中学・高校で行われているものよりも本格的で手厚い。社会で自立するための土台をつくり、主体的に自分の進路を決定できる能力やしっかりした職業観、人生観を身につけることができる。
高校1年時に実施される海外研修旅行はアメリカ西海岸が行き先だ。IT企業の聖地とも言われるシリコンバレーでインテル本社内の博物館見学をはじめ、アップルやグーグル等、世界有数の企業の本社を巡り、アメリカに進出している日本企業を訪問する。スタンフォード大学やUCLA、カリフォルニア工科大学など世界トップの大学へも訪問し、現地の留学生から話を聞く機会もあるという。
これらの体験に加え、学校での日々の英語の授業はもちろん、海外での異文化体験や3週間の語学研修、3カ月の短期留学など生きた英語と様々な世界観を学ぶためのプログラムも充実している。結果、世界を舞台に活躍できるグローバルマインドを育むことへもつながっている。
脱・競争成長を喜べる、認め合える価値観に
これらのカリキュラムは決して他者との競争を促すものではない。比較対象は過去の自分。自分との競争だ。昨日の自分より、今日の自分は成長しているだろうか? 成長を喜べるだろうか? 成績ではなく、自分がどれだけ学んだかが評価につながる。この価値観こそ、今後の大学入試や社会で求められるものでもある。
現在、同校は海外在住の日本人からも人気が高い。帰国生向けの入試を実施していることだけが人気の秘密ではないはずだ。海外で育った彼らや彼らの保護者が同校のカリキュラムや教育姿勢、価値観を評価しているからにほかならない。
最後にどのような生徒に入学して欲しいか尋ねたところ、「(同校を運営する)学校法人五島育英会から『ハイレベルな大学に合格するような圧倒的な個々の力を持った生徒に育てて欲しい』という要請がきており、私もそれに賛同していますし、圧倒的な力は入学後に付けられる自信があります。ただ、オープンスクールも受付開始と同時に定員に達し、キャンセル待ちが出るほどの人気です。また学校のレベル自体が上がってきており、現在ではある程度の力がないと入学できません。我が校が第1志望であった生徒は入学後も非常に伸びやすい傾向にありますから、ぜひとも第1志望で受験していただけたらと思っています」と締めくくった。