AJC(全国学習塾協同組合)森貞孝理事長の最新教育情報 第21回
「令和」時代は明るい話題が続くように
新元号が「令和」と決まった。
安倍首相は美しく心寄せ合う中で文化が育つという意味だと述べた。すっきりとした新しい時代の幕開けにふさわしい名称だと思う。塾の経営者なら当然生徒たちからいろいろ元号やその由来について質問を受けるだろう。そこで元号についてまとめてみたい。
平成の時は、小渕長官が発表したが昭和天皇の崩御の直後だったため、今回のような華やかさはなく、翌年の11月に平成天皇の即位の儀式が行われた。今回はマスコミもあおっていたが、街のあちこちで新しい元号は何になるか予想したり話題にしたりして盛り上がった。
世界でいまだに王室(皇室)が変わるときに元号が変わる国はほかにない。また、天皇が即位するときに元号が変わるのではなく、多くの場合、慶事があったりよくないことが続いたりした時に元号を変えたりしてきたことも多く、明治天皇の前、孝明天皇の時などは弘化三年に即位されたが、崩御されるまでの間に、弘化・嘉永・安政・万延・文久・元治・慶應といくつも元号が変わった。明治天皇が即位されたのも慶應2年の12月に孝明天皇が崩御されたあとということになっているが、正式には慶應4年4月に即位式を行われた。そして明治と元号を改め一世一元の制が行われることになった。
以後明治・大正・昭和・平成と続き、今回令和と元号が天皇の即位とともに変わっていった。現在の天皇は今上天皇と申し上げ、退位後に昭和天皇とか平成天皇というような呼び方をする。
典拠とされる万葉集は日本最古の和歌集であり20巻に約4500首が収められている。
100年以上にかけて作られた短歌・長歌・旋頭歌などが集められ、最後に大伴家持がまとめたのではないかというのが通説になっている。
特に初めの一・二巻は勅撰集の色合いもあり、最後の巻などは家持の歌が圧倒的に多い。学校で習う歌人としては、山部赤人、柿本人麻呂、山上憶良など。ほかに額田王、天智天皇、大伴旅人、有間皇子など。
万葉集はまだカナ文字がなかったので、万葉仮名という漢字の音だけを借りて表記しようとした時期であった。
今回万葉集から梅の歌三十二首の序文にある「初春の令月にして気淑く風和らぎ」の部分から令和という元号を考えたという。
日本は貨幣にも皇帝や元首の肖像画を使わずに福沢諭吉や樋口一葉、野口英世などの文化人を使うことで、世界の国々から文化を大切にする国だとみられているが、今回中国の元号の模倣ではなく、日本古来の万葉集からの由来で元号をつけたことで、独自の元号を存続させていくことを世界に印象付けたと考えている。最後に私の好きな祝いの和歌。万葉集の一番最後の和歌で大伴家持の句「新しき年の初めの初春の今日降る雪のいや重け吉事」。
世界がいくつもの問題を抱えている時に日本だけでも明るい話題が続いてほしいと思う。