IT企業の楽天が、学習ノート共有アプリ「Clear」を運営するCLEARと塾紹介事業で業務提携
画期的な料金プランとサービスで、事業環境の変化に直面する学習塾業界を盛り上げる
(株)CLEAR は学習ノート共有アプリとして国内最大級のアクティブユーザー数(実際にサービスを利用し続けているユーザー数)を有する「Clear」を運営。2019年には「Clear」を利用する中高生に対して学習塾や予備校が生徒募集を行えるサービス「MEETS」を立ち上げた。IT企業の楽天(株)はこの(株)CLEARと2020年2月に業務提携。塾向けの生徒募集サービスを協働して拡充・提供していく。提携について楽天(株)インベストメント&インキュベーションカンパニー教育事業部のジェネラルマネージャーである野寺雄太氏と(株)CLEAR代表取締役の新井豪一郎氏とが語り合った。
保護者層を会員に持つ楽天と協働することで入塾率が向上
──業務提携のご契約までに至るプロセスをお教えください。
新井 2019 年秋に学習塾業界のイベントで楽天の教育事業部の方と出会い、これをきっかけにお付き合いが始まりました。
野寺 当社は2010 年から英語化を推進してきた中で、社員全員がTOEIC800 点をクリアすることを目標としてきました。そのノウハウを活用して、英語を中心とした教育事業を展開しています。
教育事業の立ち上げ後は、英語学習アプリや、当社の会員基盤を活用した総合英語学習サービス「Rakuten Super English」を提供しています。当社ではこれをきっかけにサービスの幅を広げていきたいと考えていました。当社は中高生やその保護者層に向けた教育ニーズをまだまだ満たしていません。しかし、多くの中高生をユーザーに持つCLEAR さんと、当社の会員基盤をかけあわせることで、中高生にも保護者層にも最適なサービスをお届けすることができるのではないかと考え、新井さんと意気投合したのです。
新井 当社の「Clear」の国内アクティブユーザー数は約140 万人です。これは日本の中高生の5人に1人です。しかも、この数は日々増えています。「Clear」のユーザーである中高生と塾・予備校との出会いを生み出すサービスが「MEETS」です。塾や予備校は「Clear」に学習に役立つノートや動画をアップロードすることで講師の指導力を中高生にアピールできます。そして資料請求や体験入塾を促すことができるのです。私はこの生徒募集をこれまで以上に効率的に行えないかを模索していました。塾に興味があって行きたいと考えているのに、実際は通塾していない中高生の割合を調査すると全体の約16%もいるのです。さらになぜ塾に行きたい気持ちがあるのに行かないのかを調査するとその80%が「行きたい塾に出会えてない」「親が十分に探してくれない」という回答をしています。楽天さんの会員には保護者の年代層が多くいま
す。楽天さんとともにこうした問題を解決できれば、塾市場全体が16%近く拡大して、塾業界にさらに貢献できると確信して、業務提携させていただきました。
中高生の学習行動を分析して最適な学びのスタイルを提案
――塾の方々が「MEETS」に登録するには、どのような流れになるのですか?
新井 まず、塾と教室の状況を登録していただきます。「Clear」の特徴は、中高生が、塾の講師など教育のプロが投稿した「プロノート」を見て、勉強のあらゆる疑問を解決できることです。その時に中高生が「この塾なら成績が上がりそうだな」「僕と合っているな」と感じたら、無料体験授業に申し込んだり、資料請求をしたりします。さらに中高生に当社からアプローチして、入塾したらどのようなコースに入りたいのかなどを聞きます。その情報を学習塾に届けて、その生徒に電話をかけやすい環境を整えます。
――業務提携により2020 年4月から学習塾に新たなサービスの提供を行うと聞きました。具体的なサービス内容を教えていただけますか。
新井 楽天さんとともに「Clear」を通して中高生を学習塾に送り出すとともに、保護者が塾を検索し、無料体験授業の申し込みや資料請求ができるサイト「CLEAR 塾えらびPowered by Rakuten」を開設します。これに加え楽天さんの担当者が教室ごとのマーケティング支援も行い、子どもが入塾したら保護者には楽天ポイントをプレゼントして入塾を促すといった施策も検討しています。子どもと保護者の両方が十分に納得した上で塾を選べるようにするのです。
また、弊社では「カイズ」という学習個性診断サービスを以前から学習塾向けに提供しています。学習塾の先生は来塾した中高生と保護者の学習診断を、カイズを用いて診断し、学習アドバイスを提供して、入塾を促していました。新たなサービスでは、カイズの学習診断を中高生は『Clear』で、保護者は塾検索サイト『CLEAR 塾えらびPowered by Rakuten』で受けられるようになります。簡単な診断結果はアプリやサイトで提供し、詳しい診断結果や学習アドバイスは興味のある塾で受けられます。学習塾にそこから入塾につなげていただくという仕組みです。
野寺 当社ではユーザーに同意を得た範囲内で、行動データを分析・研究しています。このノウハウを駆使してCLEAR さんのユーザーである膨大な数の中高生の学習行動を分析し、一人ひとりに最適な学びのスタイルを提案していきます。また、保護者層の家庭内での行動データも蓄積されているので、これらを分析することで新しい教育サービスも保護者に向けて展開できるはずです。
楽天のブランド力によって信頼度は高まる
──ベストパートナーとしてお相手を選ばれた決め手は何ですか?
野寺 当社には中高生という若年層にアプローチしたいという思いとともに、コンテンツを拡大するためのプラットフォームや多くのユーザーを持っている企業と新しいサービスを創造していきたいという思いがありました。しかし、中高生向けのサービスが多くない上に、老舗の企業では早急なレスポンスが期待できません。「明日にでも」という勢いで、そのスピードに応えてもらえる企業を探していたところ、新井さんと直接お話する機会を得たのです。
新井 楽天さんは日本だけで1億以上の会員基盤があります。30~ 50 代の保護者層に絞ってもかなりの数であり、当社のサービス基盤をさらに拡げられます。
もうひとつは、強いブランド力です。中高生や保護者が塾を選ぶ際に楽天さんがパートナーなら信頼度や安心感が高まります。
特に中学生の場合、学生本人よりも保護者の方が塾えらびにおける決定権が強い傾向にあります。保護者にとっては楽天ポイントがつくことも大きなメリットになるでしょう。
さらに楽天さんは楽天市場や楽天トラベルでも、顧客に対して懇切丁寧にサポートされています。そんな楽天さんとチームを組めば、安心してプランニングから実行までを二人三脚で行えます。
野寺 当社は台湾でのインターネット通販を始め、海外にも市場を拡大しています。一方、CLEAR さんの「Clear」は、台湾やタイでも最大級のアクティブユーザー数を有しています。両社が力を合わせて教育サービスを海外に向けてさらに展開していきたいと思います。
新井 海外に教育事業を展開していると、日本の学習塾業界は指導の質や社会的な浸透度から世界に誇ることのできる教育基盤であることを常々感じます。この塾業界を盛り上げていくことも私たちのミッションです。
新型コロナ感染拡大で影響を受けている学習塾業界を盛り上げる
――新型コロナウイルスの学習塾業界への影響に対しての対策は何か考えていますか?
新井 新型コロナウィルスによって、塾の生徒募集が縮小しています。直近の募集低迷を回復させる、また募集が復調したあとに活性化するための新たなサービスを提供できないか、楽天さんと準備してきました。破壊的な料金設定のプランを期間限定で提供いたします。
野寺 新型コロナウィルスの影響をきっかけにして、自宅でも学習できるようにICTを積極的に導入するなど、学習塾の運営方法も大きく変わるでしょう。こうした新しい動きにもすぐに対応して、両社で塾業界全体に貢献していきたいと思っています。