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(一社)NEA教育アライアンスネットワーク授業力向上学習会 他塾に差をつけられるオンライン指導方法

2020-08-03

「新しい塾の当たり前」として アフターコロナに向けた指導法を考える
他塾に差をつけられるオンライン指導方法

(株)市進ホールディングス・細谷幸裕 事業研究所所長

(株)市進ホールディングス・細谷幸裕 事業研究所所長

オンライン指導をより効果的にし、生徒の学力向上を図るための「オンライン指導 授業力向上学習会」がビデオ会議システム「Zoom」を使って6 月11日(木)に開催された。主催は、一般社団法人 NEA 教育アライアンスネットワーク(下屋俊裕代表理事)。講師は、市進ホールディングス コンサルティング事業研究所所長の細谷幸裕氏だ。学習会は細谷氏とNEA事務局の柳裕樹氏との対談形式で進められ、NEA会員の塾・事業者を中心に95名以上が参加した。増設回でも55名が参加。

子どもたちの未来を輝かせる指導方策の拡充

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「コロナによって学習塾が変わったことは、大きく2つあります。ひとつは在宅学習が可能になったこと。もうひとつは在宅学習により、保護者がオンラインによって授業を見たり、聞いたりできるようになったことです。この2つにより、学習塾の存在価値の見直しと在宅学習法のブラッシュアップが必要になってきました。これからは、オンラインとオフラインのつなぎ目がなくなり、塾が家庭と共同して子育て支援者となっていく時代になるでしょう。そこで、私たちNEAは『子どもたちの未来を輝かせる指導方策の拡充』と『民間教育機関の持続的発展』を目的に学習会を開いています。
今日はみなさんと学習塾の『新しい塾の当たり前』としての指導法を考え、共有していきたいと思います」

NEA事務局の柳裕樹氏がこのようにコロナ禍のもとでの学習塾の現状と、アフターコロナに向けた課題などを解説したあと、講師の細谷氏を紹介。学校だけでなく企業や官公庁の研修でも活躍する細谷氏が柳氏ととともにオンライン指導について語り合った。細谷氏が授業力を高める行動指標として述べたのは次の5つだ。
1の「基本姿勢」を中心に、2の「クラスマネジメント」、3の「発問作成の視点」、4の「学習効果の高い教授活動」、5の『学習活動を促進するファシリテーション』がある。そして、それぞれの行動指標に5つの項目があるのだ。
1の「基本姿勢」にある5項目は、①「表情・姿勢」、②「視線」、③「発声」、④「話の構成」、⑤「板書」である。
「1の『基本姿勢』は、私よりも実際に授業を教えておられるみなさんのほうが詳しいでしょう。
この『クラスマネジメント』から、5の『学習活動を促進するファシリテーション』までは、生徒をどうやって授業に巻き込んでいくか、どのような教材を使って、どのように考えさせていくかについてお話します。生徒を巻き込むといっても、オンラインではなかなか空気感は伝わりにくいと思いますが、対面では非常に大切な行動です。
この『クラスマネジメント』には、①『指示の出し方は〝一時に一事 〟』、③『指示を出したら、必ず確認』、③『観察と承認』、④『受けと返し』、⑤『沈黙の効果』の5項目がありまです。柳さんが重要だと思うのはどれでしょうか?」
「①の『指示の出し方は〝一時に一事〟』と、④の『受けと返し』です。1度に2つ以上の指示を出すと、生徒は記憶に残ったことしかやらない傾向にあるからです。④の『受けと返し』は、オンラインで集団授業をする際にますます重要になってくると思います」

この意見に細谷氏は次のように返した。
「『受けと返し』とは、例えば、生徒が『ロシア革命』と発言したら『ああ、ロシア革命ね』と復唱することです。そして『ロシア革命について知っている人、他にいるかな?』というふうに生徒の発言を全体に浸透させていきます。こうすると、授業にも活気が生まれるのです」

ゴールを示し、ゴールに向かって掘り下げていく

細谷幸裕氏とNEA事務局の柳裕樹氏(左)

細谷幸裕氏とNEA事務局の柳裕樹氏(左)

3の「発問作成の視点」には、①「問いの明確さ」、②「タイミング」、③「レベル設定」、④「理由を問う」、⑤「方法を問う」の5項目がある。
「問いは、生徒に思考させる方法であり、授業の生命線といえます。オンラインの授業でも重要です。問いは曖昧であってはいけません。『どこだと思う?』『これは誰ですか?』という点を問う聞き方が明確さにつながります。深く考えさせるなら『どうすればよいですか?』と聞いてください。これが④『理由を問う』、⑤『方法を問う』になります。
そして生徒に答えさせて、満足感を味わってもらうことが大切です。③『レベル設定』の基本は、高いところから、徐々に下げていきます。ゴールをきちんと示して、そのゴールに向かって考えてもらう指導スタイルです。反対に低いところから考えてもらうことを『積み上げ』といいます。階段を上がるような感じでいいかもしれませんが、作業的になり、生徒は達成感をあまり味わうことができません」

この解説に対して柳氏は「私もオンラインの個別指導で生徒が飽きるのは『積み上げ』をしているからだと思います。また、『積み上げ』をすると、生徒はわかったつもりになり、先生も教えたつもりになることが多いといえます」と述べた。
4の「学習効果の高い教授活動」には、①「比較させる、分析させる」、②「推測させる、仮設を立てさせる」、③「表現させる、説明させる」、④「反復させる、確認させる」、⑤「改善させる、別解を求める」の5項目がある「どの教科の教科書にも、図やグラフや写真が掲載されています。これを効果的に活用させる方法がこの5項目です。
例えば、日本の今の人口の動態を示すグラフなら、項目の①を使って、このグラフからどんなことが読み取れるかを問います。指名しなくても、問いを投げれば、考える生徒が出てきます。その上で50代や60代の人口が多いこと、10代が減少していることを解説すれば、生徒に情報がすっと入ってきます。そこから項目の②と③に移り、『この状態が日本で20年続いたらどうなると思う?』と聞いて推測させ、説明させます。その後、項目の④と⑤に移ります。『日本と似たような国があるとしたらどこですか?』という別解を求めるのです」
柳氏は現在の入試が「推測して、そこから仮設を立てた上で、それをどのように表現するかが問われている」と述べ、こうした探究的な学びを、ブレイクアウトルームを使って行うといいのではと語った。

どのように考えさせ、学ばせるか本質はオンラインでも変わらない

5の「学習活動を促進するファシリテーション」には、①「動機づけ」、②「関連付け」、③「参画の促進」、④「ゆさぶりの促進」、⑤「収束の工夫」がある。
「グループ学習をさせる時、最初に必要なのは動機づけです。何のためにやるのか、生徒に目的を伝えます。しかし、目的を伝えても、全員がやる気になるとは限りません。最初に軽いクイズを出すなど、関心を引き出すと学習に入りやすくなります」
細谷氏が5つの行動指標の解説を終えた後はチャットによる質疑応答へ。続いて柳氏が塾のオンライン指導についてのアンケート結果を紹介し、オンライン指導の基本姿勢をまとめて、次のように結んだ。
「学習塾は、ビフォーコロナに戻れないでしょう。そこで今年は夏というくくりを取り払って、9月や11月の連休、さらに冬までを含めたロングラン講習を行うべきだと思います。『コロナだからこの先の予定はわかりません』では保護者の安心は獲得できません。今後の展望を明確に保護者に提示して、塾が柔軟に対応できることをアピールしましょう。
コロナによって塾ができることも、塾に求められることも変わりました。そして、社会はEdTechで大きく変わります。しかし、塾の本質は変わりません。細谷さんのお話にもあったように、教えることではなく、どのように生徒たちに考えさせ、学ばせるか。これらが本質なのです」

2020_8_p45_qrNEA お問い合わせ
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