SRJが藤原和博氏による緊急オンライン講演会を開催「ポストコロナの新しい教育のありかた」
速読やICT教材の企画開発・販売を行う株式会社SRJ(堀川直人代表取締役社長)は、6月26 日、「ポストコロナの新しい教育のありかた?危機か、転機か、それとも好機か!?激変に備えた次の一手~」と題した教育関係者向けセミナーをオンラインで開催した。講師は杉並区立和田中学校の元校長で教育改革実践家でもある藤原和博氏。参加者との質疑応答時間も盛り込まれたセミナーは午前と午後の2回に分けられ、それぞれ学習塾関係者と学校関係者を対象に行われた。
セミナーを主催した(株)SRJの堀川直人社長はこの日、出張先の松山から参加。「スマホ一つで世界がつながっていく。これがコロナ禍でこんなに早く実現するとは思わなかった」と参加者らに語りかけ、このセミナーこそがすでに変革しつつある学びの形の一つであると示した。
人生の半分をネットの中で過ごす時代になる
これからの時代に必要だといわれているのは思考力、判断力等で大学入試改革が進められていました。入試改革が中止になってもその流れは変わりません。これからの10年、最大の社会変化は何か考えてみましょう。
新幹線や高速道路、高層ビルなど、大きなものが次々とできあがっていく時代は建設会社が儲かり、人や物が集中する都市は産業を効率化させました。しかし、今後は集中から分散へ、一斉からバラバラへという動きが加速するでしょう。今の子どもたちは人生の半分をネットの中で過ごすようになります。こういう表現をすると驚く方もいるかもしれませんが、ニュースや娯楽はもちろん、学習や仕事、補助金の申請までもが一気にオンラインへ移行したのを皆、目の当たりにしたはずです。個性を発揮しながらネットワークで結びつき、オフィスへの出勤は古いスタイルとなります。変化のスピードはコロナ禍により加速されました。
ネットの中に都市やサービスが作りあげられていく時代はもうすでに始まっている未来です。
ホワイトカラーの事務業務が削減される未来
では、今後10年でなくなる仕事、なくなりにくい仕事、新しく生まれる仕事とはどんなものでしょうか? 例えば鉄道では、東京のゆりかもめは開業当初から自動運転で運転士がいません。一方、車掌の場合、アナウンスは自動でも差し支えありませんが、急病人や事故、犯罪の発生時の状況判断や酔客の対応など、業務は多岐にわたるため、当面ロボットへの切り替えは難しいでしょう。「事案処理のため電車を止めるが運行への影響は最小限にする、かつ、お客様の安全にも配慮する」などといった二律背反の状態や、そこに大きな責任が生じる判断には人間の方が適しています。
人件費ベースで見ると、時給800円程度のコンビニ店員から時給8万円のシニアコンサルタントまで世の中には実に様々な職種がありますが、会社に勤めている人の多くは時給3000~5000円の間に該当します。「今後なくなる仕事」はこの層。ホワイトカラーの事務業務が真っ先に奪われ、人間にやらせた方が安い仕事が残るのです。
親世代が望む「安定した会社でのサラリーマン生活」は10年どころか5年先でもずいぶんと減っているはずです。
ベースの学力をICTで身につけ、その知識を編集できるよう訓練する
人間がやるべき仕事においても必要とされ続けるためには「希少性を高める」ことが必要です。つまりは他に代替がきかないスキルを身につけることです。希少性はスキルの「かけ算」で高めることが可能です。講師の例だと、オンライン授業の特性を理解しキチンと指導できる人、海外での生活経験があり外国語もでき途上国の事情も詳しく子どもたちに伝えられる人、東大に絶対合格させますと言い切れる人など、通常の指導以外にプラスアルファの価値を提供できる人は引く手あまたとなるでしょう。
では、具体的にどういう指導をしていけばいいのでしょうか? 日本の教育力は学校でも地域でも家庭でも低下しています。学校では50~60代の教員が多すぎて、20代の採用を増やしたものの、年齢層の偏りは是正されていません。ベテラン教員が退職を迎え、学校がやっていた学習指導や生徒指導ができなくなってきます。
20代の教員にベテラン並みの指導を可能にさせ、かつ子どもたちにも有効なのはICT教材です。子どもたちの学力を上位層、中間層、下位層に分けたとき、上位層の子はすでに学習習慣が身に付いており自立学習が可能なため、自分のペースでさせるのがいいでしょう。大学レベルの講義まで進ませても問題はありません。中間層には反転学習が有効です。事前に動画授業で予習させた上で授業に入ります。動画授業で分からなかった部分だけリアルの授業、またはオンライン授業で詳細な解説を受けるというわけです。また、上位層が中間層をサポートする体制にすることで上位層もまた理解を深めることができますし、反転学習さえも難しい下位層には講師が付きっきりで教えることが可能になります。クラスを習熟度別にすることなく十分効果が得られますし、様々な層が集まることで教室は活発になります。
1人1台のパソコンやタブレットなどと言わず、中高生には個人のスマートフォンを使わせればいいのです。高校生はほぼ全員、中学生でも2/3持っているので、わずかな貸出用端末とwi-fiの整備だけで始められます。質問もスマホからさせ、授業に対するアンケートは毎回実施し、改善に役立てることも可能です。
知識を詰め込んでも意見があふれてくることはありません。教員がファシリテーターとなり、ブレインストーミングやディベートで自分の考えをたくさん言う訓練をしましょう。自分が持つ知識を編集し、組み合わせ、新たな価値や説得力を生み出す「情報編集力」が求められています。スキルのかけ算もそうですが、身につけた知識をどう使っていくかが問われています。