(公社)全国学習塾協会 教育政策提言のための学習塾タスクフォースを立ち上げ
学習塾業界の声を文部科学省へ届ける、教育を変える! 教育政策提言のための学習塾タスクフォースを立ち上げ
教育改革の鍵を握る教育再生実行会議へ学習塾業界の意見を届けようと公益社団法人全国学習塾協会(安藤大作会長)が「教育政策提言のための学習塾タスクフォース」を立ち上げる運びとなった。
同会議は安倍内閣が最重要課題の一つとして教育改革を推進するという趣旨の下に設置した首相の私的諮問機関。新内閣においても継続が決定したことを受け、委員を務める成基コミュニティグループ・佐々木喜一代表が「より多くの志ある民間事業者の声を教育政策提言に盛り込みたい」と安藤会長に相談したのがきっかけだ。今回の実行会議では来年5月までに2回の提言がなされる予定で、遅くとも3月頃までには意見をまとめたいとのこと。ここでは10月7日にオンラインで開催された「タスクフォースの概要を伝えるためのオリエンテーション」における佐々木代表の言葉を紹介する。
首相が最初から最後まで出席する2つの会議のうちの1つ
2013年1月に発足した教育再生実行会議は首相、官房長官、文部科学大臣と有識者らによって構成され、70回を超える会議を経て11にも上る提言がなされてきました。日本の長期的な成長戦略として、最終的には世界トップレベルの学力と規範意識を身につける機会を保障していくことを目標としています。首相が最初から最後まで出席する会議は2つしかなく、うち1つがこの会議であることを見てもその重要性はご理解いただけると思います。
会議自体は教育改革の推進エンジンとして、大きな方向性を指し示す役割を務めます。会議から上がる提言をもとに法的根拠や法改正など、中央教育審議会での審議を経て実現に向けて動きます。教育改革への試みはこれまでも行われてきましたが、首相直轄の機関とあってか提言がなされてから実現に至るまでのスピードがとても速いことが特徴です。
まずは少人数クラスの実現から
首相の私的諮問機関ですから、安倍首相の退陣と共に解散かと思っておりました。退陣表明から新内閣が発足するまで、「できることはやってしまおう!」とわずかひと月の間に萩生田文部科学大臣は会議を4回も開催したほどです。結果として大臣も続投が決まり、以降、年内に計9回の会議が予定されています。非常にハイペースですが、これは次年度の予算概算要求に少人数クラス編成を盛り込む予定をしているからです。現在の法律では小学校1年生だけクラス定員が35名、それ以外は40名です。定員の削減は文科省にとって40年にわたる悲願だそうですが、予算の都合もあり実現せぬままでした。
ソーシャルディスタンスが求められるコロナ禍ではクラスの人数は少ないに越したことはありません。少人数といえば6~8名程度を想定する私たち民間業者からすると30~35名を少人数と称することに違和感がありますが、コロナの第二波、第三波の対策として予算が下りやすいという一面もあり、一気に法改正に持ち込みたいという思惑もあるのでしょう。
中長期的には来年5月に提言をするということなので、それに合わせ、学習塾業界のみなさんの意見を聞かせていただき、反映したいと考えたのがタスクフォースの趣旨です。
これまでの教育再生実行会議の流れ 第一次提言から第十一次提言まで
第一次提言ではいじめ問題への対応が上がりました。当時、各地で問題となっていたものです。第二次は教育委員会制度のあり方について。教育委員会は戦後GHQの下に作られた政治家や自治体首長の権限が及ばず政治から独立した機関でした。法改正により首長が教育長の人事権を握ることになりました。これはマスコミが騒がなかったのが不思議なくらい大きな改革でした。
第三次はこれからの大学教育等のあり方についてで、大学のガバナンス改革が実施されました。教授会の役割を見直し、予算や人事権を学長へ委譲。意欲ある学長が大学改革を推進しやすい環境へと変えていきました。この時にグローバル化が議題に上がり、英語4技能の話へとつながっていきます。
第四次は大学生のあり方について。日本の大学は「入るは難く出るは易い」「トコロテン方式」と揶揄されてきました。原因の一つが留年生が多い大学への補助金カットです。基準を厳しくし、留年生が増えると大学経営が苦しくなってしまうのです。これは改善済みです。
第五次は今後の学制のあり方として、幼児教育の無償化や義務教育機関の見直しなど学習塾には大きく影響するところですが、皆の意見がまとまらず全提言の中でこれだけが座長預かりとなっています。
第六次は「学び続ける」社会、全員参加型社会、地方創生を実現する教育の在り方について、第七次はこれからの時代に求められる資質・能力と、それを培う教育、教師の在り方について、第八次は教育立国実現のための教育投資・教育財源の在り方についてですが、この3回には有識者以外にそれぞれの専門の委員が5名ずつほど加わっています。第八次提言がきっかけで消費税増税による税収のうち7000億円が幼児教育無償化に、1兆3000億円が高等教育に割り当てられ、大学進学の際の給付奨学金の創設につながっています。
この後、下村大臣が五輪問題で辞任したのをきっかけに私を含めた委員は全て入れ替えられ、月2度ペースの会議も年2度ほどになりました。私とかつて塾経営者であった下村博文大臣が去ったあとの第九次提言には塾を批判、悪の根源であるかのような表現が登場します。
その後、文科省から復帰要請があり委員の顔ぶれは元に戻りました。第十次は自己肯定感をどう高めるのか、学校、家庭、地域の教育力の向上について、第十一次は高大接続を含めた高校の改革について。以上がこれまでの流れです。
大学入試における英語4技能の民間検定や記述式問題の見送りについて、ホッと胸をなで下ろした保護者や塾関係者は多いようですが、私は改革の機会を逸したと思っています。全ての大学で実施する必要はありませんが、社会がそういう人材を必要としている以上、少なくとも世界レベルを目指す大学なら必要だと思っています。第九次提言で学習塾がネガティブな印象を与えてしまっているため、次回の提言ではこれを修正する方向に持っていきたいと考えています。
Go to Studyも必要か?
今回、様々な給付制度が設けられましたが、不十分との声もあるでしょう。例えば旅行業界や飲食、イベント関連救済のためのGo to事業ですが、これにStudyがあってもいいのではないかと思います。みなさんはいかがですか?私の役割は皆さんの意見を聞き、提言に盛り込んでいくことだと、業界としての声を届けることだと思っています。反映されないこともありますが、声を上げていくことが何より重要です。
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