(株)開倫塾「教育経営品質研究会」 東京新聞のNIEの取り組み
開倫塾 主催「教育経営品質研究会」開催 東京新聞のNIE(エヌ・アイ・イー)の取り組みで情報交換
10月21日(水)東京都千代田区の中日新聞東京本社にて、(株)開倫塾(林明夫塾長、栃木県足利市)主催の「教育経営品質研究会」が開催された。
今回は、東京新聞のNIE(エヌ・アイ・イー)の取り組みで様々な情報交換が行われた。NIEとは、Newspaper In Education の略で、「教育に新聞を」という意味。
新聞ができるまでの映像紹介のほか、編集局などの見学、東京新聞の紹介、NIEの取り組みについて、教育現場での新聞活用などについて東京新聞の担当者から説明があり、質疑応答、意見交換などが活発に行われた。
今後も新聞を子どもたちの教育に役立てていきたい
冒頭、開倫塾の林明夫塾長が挨拶。「先週の10月15日から今日21日までは新聞週間です。その最後の日に東京新聞にお邪魔させていただくことができて、本当に光栄です。我々開倫塾をはじめ学習塾でもNIEが盛んに行われていますが、今後も子どもたちの教育に役立てていただき、さらに新聞文化の発展に貢献できれば幸いです」
その後「新聞ができるまで」というタイトルの映像が紹介されたあと、参加者たちは当日の夕刊の編集作業をしている編集局を見学。そして東京新聞読者部部長の田中秀樹氏が東京新聞のことを紹介した。「東京新聞とは、中日新聞東京本社が作っている新聞のことです。各部が議論を重ねながら紙面づくりをしています。私個人として感じるのは、あまり忖度してはいけないと思っていて、異なる意見でもしっかりと取材して、その論旨が明確であれば採用すべきだと思います」
営業推進部の古賀健一郎氏は、新人記者やカメラマンの研修について説明。「記事を書くとき重要なのは、やはり5W1H。言うのは簡単ですが、何度やっても足りない部分を感じさせられるものですが、経験を積み、部署を移動することによって徐々に力がついてきます」
5W1Hとは、Who(だれが)、When(いつ)、Where(どこで)、What(なにを)、Why(なぜ)、How(どのように)を指し示す言葉。5W1Hを意識し文章を構成することで、伝えたい情報の主旨が明確になり、かつ過不足なく伝えることができると言われている。
「自分が面白い仕事をしていると思えれば、いい紙面ができると私は思います。やりがいという点では、読者からの反響というのはすごく嬉しいし、励みになります」と語るのは、読者部の鈴木賀津彦氏だ。
中日新聞・東京新聞独自の「新聞切り抜き作品コンクール」
その後、NIEの取り組み、教育現場での新聞活用の仕方などについて、鈴木氏と古賀氏が述べた。
NIEとは、教育現場での新聞活用のこと。新聞には多くのグラフや図が論理的・実用的な文章とともに載っているので、新聞に日常的に接することで、多様な文章や資料を読み解く力が伸びる。新聞を読むと、いま地域や社会で何が起きているかがわかるので、子どもたちが社会に目を向け、考えるきっかけが生まれる。フェイクニュースが蔓延する現代社会で、信頼性・正確性の高い新聞の情報は、子どもたちが情報を取捨選択する基準となり、メディアリテラシーを高めることにもつながるという。こういった「読解力」「課題発見・解決力」「情報活用能力」「批判的思考力」などを育むことは、めまぐるしく変化する社会を生き抜く子どもたちに必要だと学習指導要領でも求めている。
(一社)日本新聞協会に加盟する新聞社はそれぞれ独自にNIEに取り組んでいるが、東京新聞では「新聞切り抜き作品コンクール」を行っている。しかし、今年度は新型コロナウイルスの影響を考え中止にしたという。
新聞切り抜きコンクールは、テーマを決めて集めた新聞記事を模造紙にレイアウトして貼り付け、適切な見出しやイラスト、感想、まとめを付け加えて作る「自分だけの新聞」だ。記事を集め、分類・整理し、コメントやまとめを書くことで深い思考力が養われ、切り抜いた記事をわかりやすく配置し、的確な見出しを付けることで表現力も培われる。新聞を毎日読むことで社会の様々な情報に関心も広がり、知らず知らずのうちに「読解力」「語彙力」「文章力」も向上する。中日新聞が独自に開発した学習方法で、四半世紀以上の伝統があるという。小学生、中学生、高校生とファミリーの部があり、応募数は18年連続で6000点を超えている。
新聞という道具を使ってコミュニケーションをいかに広げるか
令和元年度「第十七回 新聞切り抜き作品コンクール」の高校生の部最優秀賞は、千葉県立四街道特別支援学校高等部3年、山口七生(ななお)さんの「核廃絶~私達から~」。核廃絶という重厚なテーマを主張に合わせた記事を集め、分類整理し、素晴らしい作品にまとめ上げた。中学生の部最優秀賞は、東京都世田谷区立玉川中学校1年、日野琴音さんの「生き方で決める働き方」。2020年2月16日に開催された表彰式で日野さんは、「自分とは違った生き方や考え方を認め合うことが、より良い職場環境につながると思います」と話した。(東京新聞2月17日付)
5月6日付の東京新聞では、公民館活動としてNIEの実践教育を行っている「体験・表現教室」主宰の間宮功氏がその活動内容を報告。各家庭で新聞を読んで、特に興味関心をいだいた記事について教室で発表し、質疑応答を行ってきた。やがて教室のみんなで「切り抜き作品をつくってみたい」と、全員で東京新聞の本社へ学びに出向いたのがきっかけに、子どもが切り抜いた新聞記事への感想を伝え合う内容の「時事サロン七七字旬報」ミニ新聞を10日に1回当番制で作成し、子ども同士はもちろん、父母や一般の市民有志が紙上での意見交換会をしているという。
令和2年度「新聞切り抜き作品コンクール」は中止となったが、東京新聞は次回へ向けた取り組みとして、新聞切り抜き作品づくりを授業に取り入れている学校などを紙面やウェブで紹介したり、従来から行ってきた出前授業をオンラインでやってみたところ、十分な感触を得ることができたという。
また、10月4日付の東京新聞朝刊によると、紙面の発言欄で8月12日から5回にわたって掲載した「戦後75年」のテーマ投稿を読んだ高校1年生が、投稿を書いた人々に感想の手紙を書くという、こんな授業が東京都品川区の品川翔英高校で行われた。投稿者の住所は市区町村までしか書かれていないため、授業を担当した先生が投稿者に手紙を届けてもらえないかと、読者部に問い合わせてくれたという。投稿者に手紙を届けるとともに、同校を取材。授業での取り組みといくつかの手紙を9月16日メトロポリタン面の「学校と新聞」で紹介した。さらに、4人の生徒から受け取った投稿者からも話を聞き、生徒たちの手紙と合わせて9月29日朝刊4面に掲載した。
同じく10月4日付の東京新聞朝刊「読者部だより」では、稲垣太郎氏が「品川翔英高校の授業は、まさに新聞を教育に生かしてくれた実践だとうれしくなりました」と書き、生徒と先生の意欲や熱意に感心している文章が綴られた。「まさに世代を超えた、教育現場とこのお年寄りとのコミュニケーションが新聞を通じて行えるということです。新聞に書いてあるということよりも、新聞という道具を使ってコミュニケーションをいかに広げるかがカギだと考えております。皆様からも、こんなことをしたら面白いんじゃないかとか、様々なご提案をいただき、情報のキャッチボールの中で新たな取り組みが生まれることを願っています」と鈴木氏は語った。
開倫塾の林塾長は「今日学んだことをぜひとも各教室で発揮していただきたいと思います」と述べ、教育経営品質研究会を締め括った。