教育資源としての民間教育 第35回
公益社団法人 全国学習塾協会 安藤 大作 会長
民間教育の活用推進にご理解とご協力を
この原稿を執筆している現在、新型コロナウイルス感染症は拡大し、医療崩壊寸前の危機にあります。
新型コロナウイルス感染症対策のための学校の臨時休業により、子どもたちの学力低下も危機的な状況にあります。臨時休業前後での勉強時間の前年比を学校での成績別で比較してみますと、成績下位層では前年の半分に減少しています。
また、通塾生のみの成績と通塾生以外の塾に行っていない生徒も含む成績を比較すると、前年比でのダメージは前者が少なく限定的であり、後者は全体的に低下していました。
子どもの意識として、最も困ったことは「学業」37.4%。また、休校措置により教育格差を感じる「はい」58.6%。保護者の意識として、「自発的に勉強してくれない」が最多で52.7%。次いで「やる気がない。」47.9%。
臨時休校等がもたらす学力や学歴、そして逸失生涯所得への影響は小さくありません。高卒者と大卒者の生涯所得は約6,000 万円の差が生じるという調査結果もあります。ゆゆしき状況です。
学校教育が抱える課題について、教員採用試験倍率の低下にみる人材不足、指導要領による教員の負担増、不登校児童生徒の増加、部活動ガイドラインがあるにもかかわらず過度な部活動の現状があり、子どもたちの学びは学校教育だけでは太刀打ちできない様相です。
学校教育の民間活用が十分進んでいないのは、水泳授業・学校プール問題も同様です。老朽化する学校プールの改修費に比べ、民間のスイミング施設への業務委託の方が圧倒的にコスト削減でき、安全面や専門技術の面でもメリットがあります。
他の民間教育業界もそれぞれ問題を抱えています。現在、コロナ禍において不登校児童生徒が増加傾向にありながら、現状打破が期待できる教育機会確保均等法の運用の成果が見られていません。
学校以外で学習活動を行って出席扱いになった児童生徒数は2万5,866 人であるのに対して、自宅にいて IT 等を活用した学習活動を行って出席扱いの児童生徒数はわずか608 人です。ひきこもりなど自宅を出ることができない子どもたちに救いの手が十分差し伸べられておりません。
民間教育の活用推進は、子どもたちの学びを取り巻く危機的状況に必須不可欠です。子どもたちの学びの危機を超克することは、すなわち子どもたちの福利そのものです。
いま現在、当協会では学習塾団体の連絡会や語学・音楽・スポーツ・不登校対応などの民間教育業界の協議会において、意見をとりまとめて国会議員や省庁、自治体などあらゆるチャンネルへアプローチしています。
引き続き皆様のご理解とご協力をお願いいたします。