NEA主催 英語教育はどこへ向かおうとしているのか!? 塾の答えは!
第2回 学習塾の英語シンポジウム
2021年3月8日に開催した第1回英語シンポジウムでは、「学習塾のグレートリセット」をテーマに、これからの集客と実績を出す英語指導についての対話セッションを行った。7月1日(木)に行われた第2回目では、英語スクールや塾を経営し、新しい英語指導で成功している2社の代表にご登壇いただき、これからの社会で通用する英語力育成について考察した。
英語改革が加速する中、学習塾の英語指導の方向性を探り、そこに向かうための道筋を見極めていくヒントになる活発な意見交換が展開された。
■登壇者■
中澤 理 氏 ANNIE.. GLOBAL EDUCATION 代表
木村 剛 氏 KEC教育グループ 代表
■司会■
江藤 真規 氏 教育コーチングオフィス サイタコーディネーション 代表
※以下敬称略
学校における英語教育の変化
江藤 学習指導要領が見直され、英語教育が2020年度から大きく変わりました。学校の英語教育では、どのような変化が見られますか?
中澤 アニーグローバルエデュケーションは愛知県で30年以上にわたって学習塾「なかざわ・塾」や「英語スクールアニー」などを展開。地域の小学校などに英語講師を派遣し実践的な英語指導に取り組んでいます。関わりのある公立の小学校では、先生方が英語教育についてよく理解し取り組んでいらっしゃる先生方も増えてはいますが、一方で変わらなければいけないがどうしていいかわからないという先生方も多いようです。
江藤 〝生涯実践教育〟を使命に、受験進学指導をはじめ有能な職業人・企業人・社会人・国際人を育成する「KEC教育グループ」の代表であり、講師として教壇にも立っておられる木村さん、中学生はどうでしょうか。
木村 弊校の生徒(大阪、滋賀)に学校の授業が変わったかアンケートをとった結果、半数の生徒が変わったと答えており、定期テストについても、70%の生徒が変わったと感じています。授業内容ではスピークアウトする機会が増え、教科書の音声(QRコード)を聞いてくる宿題が増えました。定期テストでは、リスニング問題が増え、自分のことを英作文で書く問題が増えています。学校の先生方は、授業で試行錯誤を重ねる中、定期テストはすでに変化しているため、学習塾は対応が求められています。
民間の学習塾だからできる強み
江藤 小学生では英語改革に取り組む学校にバラつきが見られ、中学生では定期テストに変化が起きている地域もある。学習塾としては、どこをゴールに見据えて取り組まれていますか。
中澤 弊社は学習塾と英語スクールを運営しています。年齢層も3歳から小、中、高と様々であり、いろいろな場面で指導していますが、特に英語の指導ではタブレットを使用しいつでもどこでも、子どもたちが聞いてリピーティングするスタイルで、ネイティブの講師が指導を行うのが基本。他にもいろいろな学びのコンテンツを用意し、整えていますので、選択肢が豊富です。利用される方が今までのやり方にプラスオンしていただけるよう工夫しています。
英語教育に関しては、皆さんそれぞれイメージが異なります。何をやらなければならないとか、どうやってやるかなど意識の共有化が大切です。私どもにはベースになる英語スクールの授業があるため、ある程度の決まりの中で、どの先生がどう関わっても、タブレットなども有効に活用し、最低限、授業クオリティーのアベレージは担保できる仕組みづくりを心掛けています。学習塾としていろいろな取り組みをやりやすいベースがあれば、あとは現場の先生が授業の質を上げていけると思います。
木村 中学校の先生は、混乱されています。小学校でどの程度英語を習得して中学校へ進級してきたのか習熟度を把握しなければなりませんし、中2、3では新教科書になったことによる積み残しを解決しなければなりません。
学習塾は、ブレない理念・方針が8割、残り2割は目の前にいる生徒への対応力を持たなければなりません。もちろん定期テストでは点をとらせないといけない。こうした対応力が学習塾の宿命であり使命です。
中学校ではスピークアウトする機会が増えており、公立高校入試でも今後ますますスピーキングは求められますから、弊校では中学生には、日本語で考えたことを英語で話す指導に力を入れています。〝学びのコンシェルジュ〟とも言えますが、生徒一人ひとりに何が必要なのかを見極め、保護者の思いにも寄り添いながら、適切なアドバイスのもと、カリキュラムや教材を自在に使いこなしていくことが重要です。
中澤 英語を学ぶための十分な時間がとれないなどの問題がある中で、英語に触れさせるにはどうやったらいいのか、どういう方法が一番シンプルで無駄なく学べるのか。英語とひとくくりにするのではなく、リスニング、読解、文法など、それぞれに対して、学びの柱を増やしていくことが大事。一つの学び方で集約してもオールOKとはなりません。学校でも塾でも、そこに差はありません。英語に触れるきっかけがどこにあるのかだと思います。
英語教育はどこに向かっていくのか
江藤 学習塾の強みはトータルで子どもをサポートすること。そこに英語がオンされていくことですね。高校入試が変わってきている中、緊急性の高い話題として、大阪府の高校入試C問題があります。
木村 英語のC問題では、民間試験による見なし点(読み替え得点)が導入されていることがポイント。例えば英検の場合、2級を取得していれば入試当日の点数の80%、準1級で100%になります。
弊校では、C問題対策を前提に、中1はオンライン英会話必修、中2は英検取得を目指し、中3は速読英語を夏休みから必修化しています。
中澤 どんな入試になろうと、小学生から英語に触れる機会、ある程度量を与えることを目的にする必要性を感じます。子どもが成長するに伴い、いろいろな知識や力がつくことで、総合力が身に付き、英語の力も成長していきます。
江藤 英語指導に関する考えをリセットする必要もありますね。英語に触れることに意味があり、教科を越えてイメージさせていくことが大切です。最後に、学習塾の英語教育はどこに向かおうとしているのか、ひと言ずつお願いします。
中澤 英語が好きでも嫌いでも、英語力を上げていかないといけない時代です。学習塾の強みをきちんと明示して、最大限の提供をしていかなければならないと思います。
木村 これからは英語レベルの多様化が進んでいくので、オプション的に対応していかなければなりません。不安が高まるほど使命が果たせるチャンスです。変化の中で、いかに安心させていけるか、多様な選択肢を持つことが大切です。