教育資源としての民間教育 第43回
公益社団法人 全国学習塾協会 安藤 大作 会長
公教育と民間教育の連携
先日、経済産業省が、公教育と民間教育の連携について、スポーツ分野からの着眼で提言を発表しました。まずは部活動の業務委託から始まり、さらには学校をはじめとする多くの公共施設を民間に広く開放し、市場原理も利用しながら複合施設としていくビジョンも盛り込まれています。
言うまでもなく長きにわたり、教育というフィールドは「公と民は別物。営利と非営利は別物」という風潮が強く存在していました。しかし現在、それでは教育環境として立ち行かないばかりでなく、公共資産の有効活用、あるいは企業の固定費を圧縮して、より一層のサービス向上や経営の健全性などを実現するためにも大きな構造改革に踏み込む必要性に迫られており、その一歩となる提言にもなっています。
実は当たり前のように日本の学校には、運動場、体育館、プールは必ずあります。これは世界的には珍しいことです。良し悪しは別として、今の問題点は学校のスポーツ施設が広く利活用されていないということです。
部活に関して言えば、部活の顧問の半分以上がその競技の未経験者であり、安心安全上も好ましくないといった見方もできます。民間教育の専門家が学校分野のスポーツ業に入っていくことは、児童生徒の安心安全のみならず、教員の働きかた改革の一助にもなります。また民間に委託し始めることは学校施設の有効活用にもつながります。つながります。
ただそこには長年にわたり「非営利には貸すが営利には貸さない」といった地元の慣習が横たわっているのも事実です。社会教育推進、生涯学習推進の観点に立てば本来は営利も非営利も差別はあってはいけないのです。しかしそこには上位法と条例との間にねじれが存在しているのも事実で、結果として「営利企業はいまだ蚊帳の外」といった現状が地方の風景になっています。このことが子どもたちのより良い学習機会の喪失ばかりか、公共施設の無駄を生んでいる側面もあり、もはやこれ以上無視できないレベルにあることを、今回の経済産業省の提言は示しているとも言えます。
全国学習塾協会もこの件については何度も経済産業省と意見交換をしてきました。今回はスポーツのこと、部活動についてですが、もはや教育は学校の中だけで閉じられるものではなく、非営利だけの閉じたコミュニティで行われるものでもなく、この国のためにダイナミックに大きな枠組みを変えていかねばならない時を迎えていると言えるわけであり、英語の4技能やプログラミング、探求学習や基礎学力の定着においても、公教育も民間教育もしかるべき形で手を取り合い協力し合う時であるということでもあります。もちろんすべての塾がそうであらねばならないわけではありません。塾は自由であり多様であるべきという原則は存在するわけです。その上で社会を下支えするための新たな役割も求められ始めてきたのではないかということになります。