東大生講師が語る 遠隔双方向ライブ授業「東大NETアカデミー」の魅力とは
教育の地域格差解消を目指し、全国の学習塾や学校法人、自治体が抱える小中高校生を対象に、東大生講師による双方向ライブ授業を提供する「東大NETアカデミー」。
2011年、学習塾がない地方で学習環境を作るサービスとして自治体向けにスタートした。
サービスを運営する株式会社フィオレ・コネクション(東京都文京区)の松川來仁代表とともに東大生講師4名にお集まりいただき、同サービスの魅力や今後の可能性を語っていただいた。
ペーパー試験はいっさい行わず人柄を重視して講師を採用
――まずは、自己紹介をお願いします。
高瀬 専門は生命科学で水産系食品の解析・研究に取り組み、将来は世界に出ていきたいと考えています。北海道出身の私は、東大を目指す仲間もいませんでした。高校時代は運動部に所属し、東大は無理だと言われながらも持前の負けず嫌いを発揮して、テストで結果を出すと褒められたり、周囲に認められることが自信になっていきました。北大医学部を志望していましたが、高2の夏に北海道から出てみたいと思い、東大を目指しました。
水島 比較教育社会学を専攻し、国内外の教育格差と社会との関係性を勉強しています。経済・地域格差によって、教育のチャンスが得られないアンフェアな状況を是正するために、途上国の教育開発に携わりたいと考えています。家族が「東大に行ける!」と持ち上げてくれて、昔から東大を意識していました。入試問題が一番面白かったですし、国内最高の大学で面白い人たちと出会いたいと思って、高2の夏に東大受験を決意しました。
小田切 法律の面白さに目覚め、弁護士を目指して勉強中です。中学受験で都内の私立中高一貫校に進学しました。東大進学者も多い進学校で、東大に入る環境を整えてくれた両親には感謝の気持ちでいっぱいです。以前、生徒に「わからない言葉は辞書で調べましょう」と話したところ、辞書がない家庭もあることに驚きました。改めて教育格差を痛感しています。
大島 私は、生徒の8割が東大を目指す進学校の出身です。美術史学を専攻し、将来は学芸員など美術関係で教育の普及に携わりたいと考えています。
――講師の採用にあたって、何を重視されていますか。
松川代表 創業当初から変わらず、ひと言でチャーミングな方です。授業が上手な人でも、オンラインだからこそ〝愛嬌〟がなければ心のつながりが生まれず、生徒は聞く耳を持ってくれません。先輩講師からの紹介も多く、現在も10名が厳しい研修に取り組んでいます。
成功体験から自信をもって生きた勉強メソッドを直伝
――指導方法の工夫や生徒とのエピソードをお聞かせください。
水島 離島の自治体に集まる小6生と中1生に、算数と数学を基礎から教えています。「ここまでは解けるけど、その先が解けない」というポイントをその場で把握できるのが、双方向ライブ授業のメリットです。生徒自身の中にある知識を拡張する形で知識を積み上げていくと、学ぶ喜びを感じてもらえると同時に記憶にも残りやすいと思っています。
高瀬 高1生の英語を担当しています。当初は勉強習慣もなく学年で成績最下位だった生徒が、1年間で偏差値が12アップしました。毎日厳しい宿題に食らいつく頑張りはすさまじく、今では東大を目指したいと言って、私も「絶対に連れていく!」と熱い気持ちになっています。私たちのメソッドは東大合格という成功体験があるからこそ、自信をもって指導ができます。勉強以外のメンタル面のケアもできるので、とてもやりがいを感じています。
小田切 高2・3生の共通テスト英語対策では、帰国子女も多い進学校でリスニングが学年3位になった生徒もいました。「末端のミスを抽象化して、一段上のステージでミスの原因を見つけよう」と生徒に声をかけます。例えばリスニングなら、単語を知らないのか、スピードが早くて追いつけないのか、具体的な解決策に絞り込むためです。またスピーキングの練習法として、ネットフリックスで英語字幕を見るとか、独り言を英語にするなど日常生活でのアドバイスもしています。
大島 東大NETアカデミーの魅力は〝追いかけたくなる背中が見つかること〟です。具体的なテクニックだけでなく「勉強は楽しい」と理解してもらえるように、私自身がこれまで面白いと感じたことを中心に伝えるように心がけています。
松川代表 他塾との最大の差別化ポイントは、東大生講師が成功体験に基づく〝生きた勉強メソッド〟です。また、生徒の〝視座を上げる〟マインドセットも狙いです。海外で働くことを視野に入れている東大生も多く、そんな彼らの存在を身近に感じてもらうことで、子どもたちの〝当たり前〟のレベルを引き上げる契機になると確信しています。
〝努力の仕方〟を伝えるキャリア教育の展開も期待
――東大NETアカデミーの強みと今後の可能性についてお伺いします。
水島 強みは、東大生が身近なロールモデルになることです。講師はみな小さなトライ&エラーを繰り返して、東大合格を勝ち取っています。弱点を克服する努力は汎用性のある体験談であり、成功体験に至るまでの工夫は価値のあることだと思っています。
松川代表 「東大生はわからない子どもの気持ちが理解できないのでは?」と不安視される声もありましたが、実は〝日本一わからない経験〟をして、何度もそれを乗り越えていますから、わからない子どもの気持ちは痛いほど理解できます。
小田切 授業と同時に、学習習慣や生活面のアドバイスも重視しています。模試の結果だけなく、普段の授業態度や感触などを踏まえてアドバイスします。
高瀬 年齢が近いからこその新鮮な知識も強みです。私が受験対策で使ったテキストを授業で使う場合には、得られる情報はやり方次第ですから〝使い方の工夫〟を伝えています。
大島 講師同士の横のつながりも強く、生徒に関する情報共有も頻繁に行います。勉強方法も個人の経験にもとづくものだけでなく、多角的に生徒に伝えられるのが良さです。OBも含めて講師の層が年々分厚くなっているので、多様性を活かして受験勉強だけに留まらず、アート教育やキャリア教育も展開できると期待しています。
松川代表 総勢50名のOBの縦のつながりを活かした、キャリア教育の拡充を構想中です。現役講師たちの専攻をオムニバス形式で研究発表したり、複数の学習塾から生徒を東大に招くツアーもいいと思います。
――人材不足に苦しむ学習塾からの期待も大きいと思います。今後はどんな塾とタッグを組みたいとお考えですか。
松川代表 例えば、高校受験のあとに大学受験まで継続して見届けたいとか、自塾に足りない部分を補充したいという小・中学生対象の学習塾のサポートをしていきたいと考えています。塾のニーズに合わせて授業をカスタマイズすることも可能です。
――本日は貴重なお話をありがとうございました。
お問い合わせ
(株)フィオレ・コネクション/東大NETアカデミー
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