AJC(全国学習塾協同組合)森貞孝理事長の最新教育情報 第54回
教師の優れた指導力とICTの良い面での相乗効果を
コロナウイルスが拡大し始めて2年の歳月が経過した。にもかかわらず今先進国ではオミクロン株が猛威を振るっている。アメリカで100万人以上、イギリス・フランス・イタリアなど10万人以上の感染が毎日続いて、すでに世界で3億人を超えた。20世紀初頭のスペイン風邪の時も世界中にパンデミックを起こしたが、3年かかった。医療技術が進んでワクチンが開発され、経口薬が作られるようになっても3年の歳月は必要なのか。この手のウイルス性の感染症はどんどん広がりながら次々に変異を起こし、感染力を高めながら弱毒化し、最後は風邪と同じように周期的に感染を繰り返しているようだ。ペストやスペイン風邪の時にはなかったのは航空網の発達だ。今では世界中に網の目のように張り巡らされ、あっという間にウイルスは世界中に感染していく。5月にインドから広がったデルタ株は2カ月で世界各地に広がり、11月に南アフリカから始まったオミクロン株は次々に今までのコロナウイルスを置き換えて広がりつつある。各国が航空網を遮断して国と国との行き来を止めウイルスが入ってくるのを抑えようとしているため、航空業界、旅行業界は激しい業績の落ち込みになっている。
日本では第6波のコロナ感染が日増しに拡大している。重症者はほとんど出ないものの強い感染力で、全国に広がっている。
ところで先日産業統計で学習塾の分野が生徒増、授業料収入増のデータを見た。データそのものにミスはないのだが、実際とは異なる感じが強い。当組合は中小企業等協同組合法という法律で中小零細企業が参加している。学習塾業界は98%が中小企業で、その分野ではこのコロナ禍で多数の塾が廃業や規模の縮小に追い込まれている。先日の会議でもうちの駅の周辺は、個人塾はもう自分のところだけしか残っていないと言われた。大手塾は3駅や5駅ごとに教室展開していたものが、各駅に教室展開するような動きになり、生徒数は増加、売上高も増加しているものの経費増で収益力は落ちているのではないか。
ある私立学校の先生が、2年ぶりに塾を歩いてみて、あそこにもここにもあったはずの塾がなくなっている。そして今までなかった塾が新たに教室を出してきていると同じ会議で言われた。
塾業界もコロナの2年間で大きく変わりつつある。さらにコロナが完全に収束した後ではもっとその変化がはっきりしてくるのではないか。
1月に当組合は東京国際フォーラムで塾・教育総合展を開催した。そこではIT関連の業者の出展が目立ってきた。かって口で教えることと、ICTなど機械を使って行うこととは同じことを行っても全く同じ結果になることはない、対面で心が通う教え方が最高だと言われた先生もいた。
しかし今の時代はICT技術の急速な進歩がそういったことを凌駕し始めている。
ICT技術を活用することとは、教師の不足を補うことと考えている塾経営者はやがて淘汰されていくかもしれない。教師の優れた指導力とICTの良い面との相乗効果で、今までなかったような指導、新しくより高度な技術の開発が行えることになれば信じられない教育効果を発揮すると考えている。明日の教育とはそのようなところから大きなものが生み出されてくるのではないかとわくわくしながら見守っている。