SRJ×Lepton 合同セミナー キムタツ式! 将来につながる英語指導法
あのキムタツ先生が、塾関係者に向けに今求められる英語の指導法を熱く語る
株式会社SRJ(堀川直人代表取締役、東京都中央区)と、個別指導型 子ども英語教室Lepton(レプトン)などを運営する株式会社FREEMIND(北田秀司代表取締役、京都市中京区)は4月8日(水)、合同セミナーをオンラインで開催した。演題は「キムタツ式! 将来につながる英語指導法」。
講師は「キムタツ先生」の愛称で知られる、新潟大学客員教授・作家の木村達哉氏だ。木村氏は西大和学園中学校・高等学校で10年間、灘中学校・灘高等学校で23年間、英語科教員として教鞭をとったベテラン教員。現在は執筆活動や講演活動にも積極的に取り組み、著作は86冊に上る。
「英語力」「情報処理能力」「学習体質」の3つが重要
木村達哉氏は英語を教える上で最も大切にしてきたことが3つあると述べた。生徒に「英語力」「情報処理能力」「学習体質」を身につけさせることだ。「例えば、自分が教える生徒が英検準1級に合格したとします。これは『英語力』がついた結果です。しかし、その生徒が途中で英語の勉強をやめたら、当然『英語力』は落ちていくわけです。医学部に入れば、英語の医学書を読まねばなりません。工学部や法学部も同様です。英検には出題されない専門用語が無尽蔵にあります。生徒を、それらを学び続けられる『学習体質』にしてあげないと大学での勉強についていけなくなるのです」
そして、木村氏は「英語力」をつけるために重要な要素のひとつがシラバスであると語った。
「塾の先生方が『私の授業を受けていれば、中2で英検3級に、中3では英検準2級に合格できる力がつきます』というような目標を生徒や保護者に明言できる指導計画が必要です。これがシラバスです。このシラバスによって『この先生についていけば、これくらい英語力が確実につくんだ』という講師への信頼感を生徒や保護者に与えることが大切です」
続いて「学習体質」について述べた。「自学自習の習慣がついている体質を私は『学習体質』と呼んでいます。これを生徒に定着させることができれば、生徒のご両親は喜びます。塾から帰宅すれば必ず机に向かって勉強するわけですから。
昨今、手取り足取り教える塾が良い塾であると思われている傾向があります。しかし、これでは『学習体質』にはならず、塾内のテストで高得点を取れても、模擬試験では取れにくくなくなります。では、具体的にどのようにすればよいのかをお話をさせていただきます」
あまり手取り足取りをしないその姿勢が「学習体質」を生む
ここから木村氏の模擬授業が始まった。
「多くの学校では英単語を覚えさせるために英単語のテストをしています。そのわりにあまり効果はありません。覚え方を教えないケースが多いからです。まず、英語で大事なのは発音です。漢字も読めない限り、書けるようになりません。それと同じです」
そう語ると木村氏は、配信したレジュメをもとにセミナーの参加者を中1の生徒に見立て、10個の英単語を覚えさせる模擬授業を行った。
木村氏はレジュメにある英単語を発音しながら「日本語の部分を隠して、意味が言えるように、そして、意味が言えるようになったら、今度は英単語を隠して英語で発音してください」と指示。例えば「駐車場」という日本語の部分を自分で隠し、「parking lot」と木村氏が英語で発音したら「駐車場」と意味をいい、この意味を覚えたら、英単語を隠して「parking lot」と言えるようにする。これを繰り返すのだ。
「このように英語から日本語に、日本語から英語にするトレーニングをして、クイックレスポンスができるようにするのです。
ここで大切なことは、生徒に覚え方を教えたあと、ある程度のところでやめて『1週間後にテストをするから残りを覚えておいてください』といい、自学自習を促すことです。あまり手取り足取りをせず、余地を残すことが『学習体質』を生み出します」
次に木村氏は文法の覚え方についてアドバイス。その一例として冠詞の「the」と「a」との使い分けについて述べた。
「『僕は校長室に呼び出された』という和文を英訳する場合、『校長室』にはどちらを使うでしょうか? 『北海道を旅行した時に入った駅前のラーメン屋』のラーメン屋さんにはどちらを使うでしょうか? 両方とも『the』です。どちらも唯一のものだからです。みなさん、太陽を指さしてください。全員がさせるでしょう。太陽はひとつしかありません。だから『the sun』なのです。
反対に数多くあるもののうちの1つには『a』を使います。私はここに来る前にコンビニに立ち寄ってきました。みなさん、そのコンビニを指させますか? させるわけがありません。コンビニはたくさんあるからです。この場合は『a』を使います。
こうしてわかりやすく英文法を説明できれば生徒からも保護者からも信頼されます。ですから、塾の先生方には英文法についてもこれまで以上に研究することをお勧めします」
英語の語彙力を高めるには日本語の力も必要
続いて英語の「読む」「聞く」に関して。これらには、木村氏が大切にしてきた3つの中の「情報処理能力」が必要であると力説した。そして昭和の時代の長文読解について言及。当時はどれがS(主語)で、どれがV(動詞)かをじっくりと読み解く構造分析が求められていたと振り返った。
「下線部を和訳しなさいという問題には構造分析は非常に大切です。しかし、長文読解をする時に、構造分析に気を取られると文章の大意をつかみにくくなります。長文読解で最も重要なことは〝読む〟ことだからです。では〝読む〟とはどんな行為なのでしょうか?それは書かれている内容を誰かに説明できるようになることです。東京大学教授の故・立花隆先生も、インプットはアウトプットで完結すると述べておられました」
木村氏はそう語るとレジュメに書かれた英語の長文を読み上げた。その大意は「英語に『カワイイ』という新しい日本語が入ってきたが、他の英語に置き換えることができないため、『カワイイ』がそのまま英単語になったらしい」というものだ。
「みなさんの中にこれをお聞きになってご存知ない単語や文法があったかもしれません。しかし、それらが気になりましたか? あるいは関係代名詞のところで返り読みをしましたか? 少々意味がわからない箇所があっても理解できたはずです。スピーディーに目を動かして読み進め、内容を理解して人に説明できるようにする。これが情報処理能力を高める指導法なのです」
最後に木村氏は「語彙力を高めるためにも日本語の力をつけることも重要」と力説。灘高教員時代、中学生に日本の小説や評論を読むことを勧めたと振り返った。そして次のような言葉で講演を締めくくった。
「私は英語力を高めて東大に合格させた教え子の人数を誇るような教員でありたくはありません。それよりも、1人でも多くの教え子たちに世界を舞台に活躍してほしいと願っています。ですから、比較的に脳がやわらかい小中学生の頃にしっかりと日本の小説や評論を読む機会も与えてあげたかったのです」
次に(株)FREEMINDが同社のサービスなどを紹介した。
「弊社は次世代型のEdTech企業です。木村先生のご講演のテーマでもある英語指導に関連するサービスとしては、学習塾や英語教室などを対象とした子ども英語教室Leptonがあります。LeptonではTOEIC600点、英検のレベルでいいますと2級レベルの力を身につけるためのシラバスを用意し、現在、全国で1250教室を展開しています」
続いて(株)SRJが次回の予告をし、セミナーは幕を閉じた。