リード進学塾がAI教材「すらら」の活用を
アップデートし続けたDX改革
10月22日(土)に行われたすらら&英進館セミナー「導入7年目で集団授業を更に進化させるICTIの活用法」に続き、(株)すららネット(湯野川孝彦代表、東京都千代田区)主催のオンラインセミナーが10月29日(土)に開催された。今回は「リード進学塾がアップデートし続けた5年間のDX改革」。
リード進学塾は、(株)プロジェクトリーズ(水野叡伺代表、岐阜県多治見市)が展開する総合進学塾。岐阜県を中心に50以上の教場を持ち、幼・小・中・高一貫指導を基本方針に多種多様なコースを用意。この日のセミナーでは、同社専務取締役の石田栄治氏と、音羽校舎長の古里直嗣氏が登壇。同塾がAIを活用したICT教材「すらら」を導入した背景や活用法などを語った。
ICTの活用によって高いサービスと低価格の両立を
まず、(株)すららネット マーケティング部門執行役員の松本梢氏が「すらら」の特色を紹介。続いて(株)プロジェクトリーズ専務取締役の石田氏が登壇した。創業時から主要なプロジェクトに携わってきた石田氏は「すらら」を含む各種ICTを積極的に導入。新時代における塾教育のスタンダードモデルの構築と改良を続けてきた。
同塾では、2018年「すらら」を導入。早期から塾内や家庭内のインフラが整い、ICT活用が進んでいたため、コロナ禍でもオンライン指導が滞りなく進められたという。ICT活用を始めた背景には、集団授業塾の限界を見越し、そしてその先の進化を考え、現在では21世紀型スキル養成、個別最適化を目指した指導、アクティブラーニングの推進のため、積極的に様々なICTコンテンツを取り入れ先進的な教育に注力している。
「すらら」の導入から5年経ち、メリットと成果について石田氏が解説。「すらら」のわかりやすいアニメーションレクチャーで事前の予習を宿題でやった後、集団授業を受ける反転授業に変更。これにより集団授業で見落としがちな生徒も拾い上げることができるようになったという。「少子化に向け、いかに学力層のマスを取っていくかが重要になってきます。そこで学校の勉強についていけない生徒も含めて、低価格の集団授業によって高品質のサービスを提供し、学力の向上を目指す仕組みを作りました」
「すらら」で反転学習を実現したことで、塾が家庭学習も含めて指導する、週3の授業時間が2時間にできたことで残りの1時間を英語4技能指導にするなど、サービスの強化につながったという。
さらに無学年式の「すらら」により、中学生が高校生分野への先取りも、小学生にさかのぼって学習することも可能なため、個別対応を「すらら」に任せ、その先の個々人への対応に人が介入することで放置しない、置き去りにしない学習体制が可能になった。そのほか、発達障がいや不登校生など、新しい関わりができるようになるなど集団塾として新しいカタチを生み出している。「教えるだけでなく子どもたちに関わりながら成長を促進する、一人では学習管理が難しいところを我々が常に見守っていけるシステムが『すらら』だと思っています」
校舎間のサービス格差を是正し 生徒の成績と業績向上
続いて音羽校舎長の古里氏が「すららの活用成果と課題」をテーマに講演した。古里氏は各種ICT分野に明るく、「すらら」の社内統括責任者なども兼任。徹底したデータ分析をもとに各校舎へのアドバイスや講師の意識改革も行っている。まず、古里氏は反転授業での効果的な活用法について1週間のスケジュールを例に出して紹介した。
「すらら」導入前は週に3日の通塾の場合、講師が月・水・金に授業を行い、生徒は火・木に宿題をするため、講師、生徒共にスケジュール拘束されてしまう。宿題をやらなかったり1日休んだりすれば、すぐに生徒はおいて行かれる。また復習・反復は宿題のみで、各講師の授業力、管理力によって校舎間での学力差がでてしまうという課題があった。
「すらら」導入後は、授業の1週間前に予習としてレクチャーを見ることを宿題とする反転学習にした。これにより生徒はほかの習い事などスケジュールに合わせて調整できる。また、週3回の授業は「すらら」に導入部分を任せることで週1回に圧縮し、残りの2回を単元の演習や小テストにあてられるようになり、講師側も時間の確保ができた。
「すらら」導入後の変化について古里氏は「生徒たちは各個人に合わせたタイミングでの宿題への取り組みが可能になりました。さらに復習・反復を塾でやることで学習内容の安定した定着も見られるようになりました。一方講師は、業務の効率化によりできた時間的余裕を使って個別対応や面談、普段の授業の強化が可能となり、生徒の成績、塾の業績ともに向上する結果につながりました」と解説。管理画面を紹介しながら、学習中の声掛け、質問対応、校舎ごとに反転学習の定着度合いを確認できると有用性を紹介した。
続いて古里氏は「DXを推進するための運営課題と解決策」をテーマにした講演に移った。
「すらら」導入初年度と2、3年目の反応を講師と生徒・保護者に分けて分析。そこから3つの課題に着目した。1つ目は、導入初年度の講師、生徒・保護者それぞれの疑問に対する対応。2つ目に、講師のコンテンツ活用における校舎・講師間の使用率の格差、3つ目はコンテンツ使用状況、保護者の理解・協力状況が、講師・校舎のモチベーションやコンテンツ活用量と比例していることだった。
これに対して3つの解決策をとった。まず課題達成率の確認・検証と情報共有のために、毎月1回すらら運営会議を設けた。すららネット担当者、リード進学塾の運営責任者、教科担当者の選抜メンバーで校舎ごとの課題を洗い出し、対策検討をし、各校舎に問題点共有と指導を行う。さらに年1回の全体会議でも状況を発表した。特に大きな課題のある校舎に対しては、外部からの指導として、すららネット担当者が直接校舎訪問を実施した。「すらら」活用の課題達成率の情報共有と呼びかけによる意識づけは、校舎間のICT活用格差解消に効果的だったという。
次に講師、生徒・保護者それぞれの疑問に迅速に対応する仕組みの構築だ。「講師も生徒・保護者も『わからない』が続くとストレスがかかってしまいます。それが少しずつ続くと『使いづらい』と感じることがあります。迅速な対応を根気よく行うことを心掛けました」と古里氏は解説する。
最も重要なこととして、導入教材のメリット、目的意識、機能アップデートの共有を挙げた。「トップや運営メンバーからの組織全体、保護者への根気強いICT化に関する情報発信が大切だと思います」
同塾のDX推進の理由は、公教育のDX移行に備えるためだという。「公教育にプラスアルファで通う学習塾が学校に遅れることはできません。保護者にも不安を抱かせてしまいます」。また、「すらら」はブラウザを使用する教材のため、学校で支給された端末を利用しての学習も可能となるメリットもあると説明した。
生徒の自発的な学習が定着 保護者の評判も高まった
最後に古里氏は「すらら」の効果的な活用法について語った。導入2年目では、英検対策や数検対策、無学年型の体系学習など多様なニーズに応えられるようになったという。
3年目はコロナ禍の休校期間中の家庭学習管理に注力。「すらら」により塾に来なくても家庭学習が可能だったため、宿題のわからないところ、質問への対応を行った。こうして、休校期間中でも個別最適化したサービスの提供を実現できたという。
4、5年目にはオンライン通塾や宿題管理に強い個別指導を設置、成績下位層の生徒に向けたサービスの充実が図れるようになった。不登校の生徒や集団授業についていくのが困難になった生徒にもオンラインで対応できるようになったのだ。また、オリジナルの問題を作問・出題できる「E-teエディター機能」によって月1回の英進館オリジナルの塾内テストの作成と実施、採点が「すらら」上できるようになった。これにより採点人員分の人件費や印刷費が年間約70万円削減の見込みだ。
すらら導入の成果について古里氏は「成績向上は成果の一つです。成績上位者にも満足してもらえています。また、テスト作成業務が減少、採点の時間が不要になったことなどで講師の負担が減少。そこで個別質問の対応や個人面談の実施、保護者への連絡など細やかな対応ができるようになりました。生徒の自発的な学習の定着も図れ、保護者の評判も高まり、口コミによる宣伝効果も得られています。さらに学習時間の可視化により、データを示しながら保護者と面談できるので説得力のあるアドバイスができます。これにより退塾も防げています」
そして古里氏はこう力説した。
「現在ではICTコンテンツがあるからこそ、入塾を決めるご家庭が少しずつ増えてきています。どの塾にどのようなコンテンツが入っていて、どう活用をしているのか。それが塾の評判につながると思いますので、これからも当塾は『すらら』を最大限に活用してまいります」