(株)すららネットセミナー
(株)英進館の「成果を出す」ICT活用法
10月22日(土)、(株)すららネット(湯野川孝彦代表取締役、東京都千代田区)主催のセミナーがすららネット本社にてオンラインと同時開催された。同社は、小・中・高12学年の5教科に対応するAIを活用したICT教材「すらら」の開発・提供を行う、EdTech企業のリーディングカンパニーだ。
このセミナーでは、まず、同社代表取締役の湯野川孝彦氏が「データで見る『学習塾業界の現状』」を講演。その後、2016年に「すらら」を導入して成果を生み出し続ける九州屈指大手塾・英進館(株)(筒井俊英代表取締役、福岡県福岡市)佐賀校教室長の松尾新司氏が「導入7年目で集団授業を更に進化させるICTの活用法」と題したセミナーを行った。
(株)すららネット代表取締役 湯野川孝彦氏は、経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」をもとに、2022年は回復基調で塾業界の売上は増えているが少子化により生徒数は減っていること、その半面、従業員数は増加しているため、収益性が上がらないことを指摘。月謝も高止まりだという。そこで、湯野川氏はオンラインなどを使いながら収益性を上げつつ単価を上げて、時代に対応していくべきではないかと述べ、次のように続けた。
「2020年から教育業界は変革の年です。たとえば、総合型選抜を導入する大学が急増し、学校推薦型と合わせると約50%の大学が一般選抜を行わなくなっています。この動きに対応するため、塾にもアクティブラーニングや、問題解決型のPBLが求められています。一方、基礎力を育む授業も行われなければなりません。
さらに少子化により、これまで塾に通っていなかった学力の低い生徒のニーズにも応えていかなければならず、個別対応力の強化も必要になります。これでは、人件費が増えて収益性が上がらなくなります。
そこで、オンラインやEdTechを活用し、個別対応しながら集団授業の効率化を図ることがこれからの学習塾には必須になってくるものと思われます」
さらに湯野川氏はGIGAスクール構想によって、生徒一人につき一台のタブレットを持つようになった結果、講師の役割も変化しつつあると語った。「塾の先生にはオンラインで塾や家庭での学習を見守るファシリテーターとしての役割が求められてきています。そのため、塾では新しいタイプの講師の発掘や育成が急務とされています。
また、オンラインの普及によって、塾の概念も大きく変わっています。塾のない島嶼部などでは生徒が遠隔地にある塾に通わず、リモートで授業を受けるというケースも増えるなど、商圏内人口に左右されない経営が実現する日が来るでしょう」
最後に湯野川氏は「公立学校と塾と保護者がデータを共有し、学習者である子どもたちをしっかりと見守ることが、あるべき未来の塾の姿だと考えています」と述べた。
その後、同社の松本梢氏が「すらら」の特長を改めて紹介。PCやタブレットでいつでもどこでも学習できること、20万問以上の圧倒的な問題量を誇ること、AIにより理解度に合わせて出題されること、管理学習システムによって目標達成率や弱点箇所が確認できることなどを語った。
続いて、英進館(株)佐賀校責任者 英語科の松尾新司氏による講演「導入7年目で集団授業を更に進化させる英進館のICT活用法」へ。松尾氏はまず、同社について紹介。2004年に筒井俊英氏が代表取締役に就任してから企業改革に着手し、生徒数も売上も右肩上がりの状況であることを語った。その改革のひとつが2016年の「すらら」導入である。
同館はこれまで灘やラ・サールをはじめとする名門中学や高校に多くの生徒を送り出してきた。こうした実績がありながら、なぜ「すらら」導入の必要性があったのかを松尾氏は語った。
「背景にあったのは、大学入試制度の変化です。その大学入試を見据えて高校入試も変化しています。基礎的な知識の習得に加え、思考力、表現力、判断力を身に着けることが必要となりました。当塾では、もともとアクティブラーニング(以下AL)に力を入れていましたが、学ぶ内容が増え授業と深い学びの両立が課題でした。今では効率の良い学びにも活用しています」
導入の決め手は「誰にでも理解できるレクチャー」、「生徒を個で把握できる管理画面」「紙教材よりも伝わりやすいアニメーション」や、生徒の親しみやすさという点だという。
導入初期には、独自の反転授業システムを構築。「すらら」で簡単な導入授業を宿題にし、授業では知識を深めるALを実施、そしてすららで宿題を行うことでより深い学びへとつなげる。しかしコロナ禍で対面でのALが難しくなった。併せて、教場間での受講管理に格差が生じていたこともあり、新しい授業システムの構築に至ったという。
「毎月1回すらら担当者と英進館担当者で『すらら会議』を実施しました。様々な課題解決に対応していただきながら、すららネットさんと改変してきたのがこの7年間です」
現在の新システムは、導入授業を「すらら」で行い、管理ツールを使いながら一同の理解度を深めた状態にする。その後「すらら」の自塾課題をデジタルに変換する「E-teエディター機能」を活用し、英進館のテキスト課題を自宅で宿題として行い、管理画面から個々の学習状況を把握している。「ALを実施する時間を確保するとともに、個々の理解度の把握、受講管理が確実にできるようになった」と解説した。
このようにICTを活用した学習システムの運用においては、ここに至るまでの経緯を含め、「全社での意思統一」が重要だと松尾氏は語る。英進館では、社の方針を浸透させる機会として、年2回全体会議を行っている。
次に松尾氏は、反転授業以外の「すらら」の活用事例について解説した。英国数同様、理社でも入試においても記述に重点が置かれ、学習量も増加している。一方で理社の授業コマ数は限られている。そこで「すらら」の理社に着目したという。社会のレクチャー画面を例にその有用性について「『すらら』の社会では図や写真の詳細、説明もかなり丁寧に説明されます。そのため私は生徒に『レクチャー動画を飛ばすな。耳で聞いて、写真を目で見て理解しなさい』と伝えます。ただ単語を暗記するのではなく図や表、写真をしっかり頭に入れ、自分の言葉で説明できるようにするためです」と松尾氏は語る。「すらら」の理社は、丁寧なレクチャーで理解が深まること、図、表、実験をアニメーションによってイメージでつかめることは紙テキストにはできない深い理解につながるという。
また、ICT教材に対して不安を感じている保護者への丁寧な説明の必要性について松尾氏は、入試制度改革の説明、ICT教材の操作方法の実演、さらに管理画面を紹介することで塾の管理に対する安心感を持たせることが重要という。コロナ後は、対面からYouTubuでの動画配信に変更。ポイントは、「曜日を指定して保護者・生徒で見てください」と必ず行うことだ。この方法であれば、指定日に見ることができなくてもほかの日に見ることができるので非常に有効だ。
さらに、退塾防止策や動員ツールとしての「すらら」の活用事例を紹介。面談時に成績面に加え「すらら」での学習履歴を使いながら頑張っている様子を伝えたり、「すらら」の無料体験ID発行を活用し、公開テストや講習申込者に対してテストや講習の前に「すらら」が利用できる仕組みは、他塾との差別化にもなり効果的だという。
最後に松尾氏は次のように述べた。
「今回のセミナーが少しでも多くの方のお役に立つことができたら、子どもたちの明るい未来に直結すると思います。ともに頑張っていきましょう」