開倫塾 主催 第16回 全国模擬授業大会
チョーク1本で教育改革を
日本最古の学校である足利学校が史跡として残る栃木県足利市。この街で「第16回全国模擬授業大会」が「チョーク一本で教育改革を」をスローガンに5月28日(日)、4年ぶりに開催された。コロナ禍によって2回休止となり、昨年は会場を同県佐野市に移して行われたが、今年は同大会を主催する開倫塾(林明夫塾長、栃木県足利市)のある足利市で再開できた。会場は例年通り、白鷗大学足利高等学校だ。エントリーしたのは13団体で、先生は41名。審査員は学校長や塾の代表を始めとする26名と学生ボランティア29名だ。
第16回 全国模擬授業大会(主催・開倫塾)
<各賞受賞者(敬称略)>
■個人賞
【最優秀賞】
洛西進学教室 戸田 有香 (国語)
【部門別優勝】
野田塾 田島 康平(理科)
開倫塾 関口 雅子(英語)
洛西進学教室 荻野 晃平(算数)
創学舎 髙寺 大介(社会)
【私の教わりたい先生 特別賞】
洛西進学教室 戸田 有香 (国語)
【みらい教育総研特別賞】
創学舎 髙寺 大介(社会)
■団体賞
1位 開倫塾(栃木県)
2位 創学舎(千葉県)
3位 洛西進学教室(京都府)
毎日の授業は先生と生徒の心を結ぶ大切な絆
「この大会は、全国の先生方が自分なりの〝教え方・日本一〟を目指す研鑽の場です。昨年に名古屋で行われた大会では、野田塾の奥村孝司先生が優勝を果たしました。ベテランである奥村先生が成し遂げたこの快挙は、多くの先生方に刺激を与えました。若い先生方だけでなく、『青春をもう一度』という気持ちでこの大会に挑戦する経験豊かな先生方が増えたのです」。開倫塾の林明夫塾長が主催者を代表し、開会式でこのように挨拶した。続いて来賓挨拶。
一般社団法人 みらい教育総研代表理事の小川英範氏が次のように述べた。「学習塾を取り巻く環境は、皆様がご存知のように厳しくなっています。経営が困難になり、新しい方法を模索している塾も数多くあります。しかし、忘れないでいただきたいのは、塾の基本はあくまでも授業だということです。塾にとって毎日の授業は、先生の心と生徒の心を結ぶ大切な絆となります。
そして質の高い授業は、先生と保護者の方々との絆も強めます。こうした点も今日の模擬授業でその点をしっかりと拝見させていただきたいと思います」と述べた。
開会式終了後は、部門別予選へ。英語・数学(算数)・国語・理科・社会の部門ごとに教室に分かれて模擬授業が繰り広げられた。授業時間は15分間である。どれも先生の熱意が感じられる、わかりやすい授業だ。声の抑揚やリズミカルな進行が心地よい。大人が聴いていても、知識や教養が身につく。どれも質の高い授業を審査員が厳しい目で採点し、各部門の頂点を極めた本戦決勝進出者が決定するのだ。
本戦決勝進出者5名がさらに力を込めた授業を
講堂のマルベリーホールに会場を移して、本戦決勝進出者の発表と本戦決勝が行われた。決勝進出者が発表されるたびに、会場に歓声が響きわたる。そして本戦決勝へ。進出者5名は部門別決勝以上に力をこめて模擬授業を展開した。
まず、理科部門(中3)の野田塾・田島康平先生から。ボルタ電池の問題点をわかりやすく説明し、どのようにダニエル電池が改良されたのかを伝えた。
次は英語部門(中2)の開倫塾・関口雅子先生。MLBの愛唱歌「Take MeOut to the BallGame」を冒頭で歌い上げ、大谷翔平選手が好かれていることを表した英文などを用いて受け身がどのような場面で使われるかを教えた。
続いて国語部門(中3)の洛西進学教室・戸田有香先生。「奥の細道」に込められた松尾芭蕉の心について語り、AI社会を生き抜く力について語った。
その後は算数部門(小4)の洛西進学教室・荻野晃平先生。三角形の内角と外角について「なるほど」と思わせる授業により、基本と応用の理解を促した。
最後に社会部門(中2)の創学舎・髙寺大介先生。奴隷制度など18世紀の半ばにおけるアメリカの社会背景をわかりやすく伝え、南北戦争の戦いの原因と結果を生徒が説明できるようにした。
古典への深い愛情が授業から伝わってきた
本戦決勝の後は、みなぎる緊張感の中で最優秀賞や団体賞、特別賞の発表が行われた。最優秀賞の栄冠を手にしたのは、洛西進学教室の戸田先生だ。戸田先生は「私の教わりたい先生 特別賞」も受賞した。これは学生ボランティア審査員の投票によって決まる賞だ。また、今回新設された「みらい教育総研特別賞」を創学舎の髙寺先生が受賞した。これは全国模擬授業大会において長年にわたり審査員長を務めた小川氏が、本戦決勝に進出した5名の中から1名を選んで授与する賞である。団体戦での優勝は開倫塾が果たした。
表彰式の後、審査員長を務めた全日本私塾教育ネットワーク理事長の田中宏道氏(株式会社SONRISA LAPIS鎌ヶ谷代表)が次のように大会を総評した。
「野田塾の田島先生は、ボルタ電池の欠点が改良されていった過程を理路整然と解説していました。開倫塾の関口先生の歌を交えたエネルギッシュな授業は、楽しい雰囲気が満ちあふれていました。洛西進学教室の戸田先生の授業からは、先生ご自身が古典を心から愛していることが伝わってきました。戸田先生のその気持ちが今日の優勝につながったのだと思います。洛西進学教室の荻野先生の授業は優しさと丁寧さにあふれていて、小学生の笑顔が目に浮かぶようでした。創学舎の髙寺先生の授業は声にも姿勢にも生徒に伝えたいという気持ちが込められていました。この会場においでの先生方もぜひ、今日の模擬授業を参考にしていただきたいと思います」
こうして「第16回全国模擬授業大会」は多くの教育関係者の胸に感動を残して幕を閉じた。
なお、次回の大会は野田塾の主催により、10月22日(日)に愛知県の名古屋中学・高等学校で開催される予定だ。