(公社)全国学習塾協会設立35周年
塾の日シンポジウム 2023東京大会「今こそ、民間教育力」
10月9日(月・祝)の「塾の日」、公益社団法人 全国学習塾協会設立35周年を記念した「塾の日シンポジウム2023東京大会~今こそ、民間教育力~」が開催された。第一部の記念式典では同協会副会長 山下典男氏が開会の辞を、会長 安藤大作氏が会長式辞を、衆議院議員の上野通子氏、経済産業省の太田三音子氏、文部科学省の西明夫氏、全国学習塾協働組合理事長の森貞孝氏が来賓祝辞を述べた後、自主基準遵守塾と読書作文コンクール優秀作品の表彰式へ。
最後に同協会副会長の今村明広氏が閉会の辞を述べた。
第二部の記念講演は、厚切りジェイソン氏が「なんでやりたいことをやらないの?~幸せをつかみとるためには~(48のWHYに基づいて)」をテーマに講演を行った。
塾は現在もこれからも日本に必要な教育資源
「全国学習塾協会が設立されたのは、1988年のことです。当時の中3生の数は210万人でした。一方、今の中3生の数はその半分の109万人です。そして本協会が設立50周年を迎える15年後には中3生が70万人に減ってしまうといわれています。大変な時代を迎えるのです。
今日は協会の発足からこれまでを振り返りながら、将来をどうすべきかをともに考える一日にしたいと思います」
このように同協会副会長の山下氏が語った後、安藤氏が会長式辞を述べた。
「本協会は2013年、公益社団法人になりました。その意味では、今日の35周年は公益社団法人となってから10周年の節目でもあります。本協会はこの10年間、学習塾業界の中で唯一の公益社団法人として、各方面で塾の存在価値を高めることができたのではないかと感じています。
今後、私たちが選んだ行動によって、この国の民間教育の未来、そして子どもたちの未来が大きく変わっていくと思っています。教育の正解はひとつではありません。あとになって後悔がないよう、まずは動いて声を出し、多くの方々と心をひとつにして、選んだ道を正解にしていくしかないと考えております」
そして安藤氏は、昨今、報道で取り上げられることが多くなった日本版DBS(※参照)制度の創設に関して言及した。
「今年の8月、学習塾業界を代表して、私はこども家庭庁様の有識者会議に招集され、塾における日本版DBS制度の方向性についてプレゼンをしてきました。学習塾業界を守ることのみならず、子どもたちを守りたいと心から願う皆様の思いを背負って発言しました。
現在もこれからも私が確信してやまないのは、塾がこの国にとって必要な教育資源であることです。この確信を胸に強く刻み、これからも言葉を広く発信していけるように尽力してまいります」
塾を「チーム学校」や「学びのサードプレイス」へ
次に来賓祝辞へ。衆議院議員であり、自民党政調副会長と日本well-being計画推進特命委員長を務める上野氏が述べた。
「デジタル化やグローバル化が進み、プログラミング教育も始まりました。学校だけでは行き届いた教育ができません。そこで塾の皆様のお力をお借りして、子どもたちを育てていきたいと思っています。そのひとつが『チーム学校』としての取り組みです。この法律をつくるために議員の方々とともに力を注いでいるところです。私たちが目指すのは新しい日本型の教育です。これによって明るい未来が待っているはずです」
上野氏が祝辞の途中、臨席している読書作文コンクール受賞者の小学生に言葉をかけるというほほえましい一幕もあった。
その後、経済産業省 商務・サービスグループ政策課長の太田氏の祝辞へ。
「国の成長を支えるのは人です。人を育てることに直接的に関与して、日本の未来を支える塾は、非常に重要な産業であると捉えております。ぜひとも塾業界の皆様には大いにご活躍いただいて、私ども経済産業省を助けていただければと思っています。
ここで、政府の動きについてご紹介させていだきます。先ほど、安藤様のお話にあったように、教育や保育の現場で子供に接する従業者を雇用する際に性犯罪歴の有無を確認する日本版DBS制度を含めて、子どもの安全を確保するための新しい法律をつくるために検討しているところです。
また、家庭あるいは学校教育だけでは、子どもたちが持つ多様な探求心を引き出すくことが非常に難しくなっていると考えています。そこで、民間教育の場である『学びのサードプレイス』を全国的に展開していくことが重要だと捉え、昨年から実証事業などに取り組んでいます。塾業界の皆様にぜひとも、その一端を担っていただければと期待しております」
日本の教育のはるかな高みをさらに目指して
続いて文部科学省 総合教育政策局リカレント教育・民間教育振興室長の西氏の祝辞へ。
「私をはじめ、文部科学省で働いている職員は、先生方や子どもたちの力になるために自分の人生を捧げようと思い、この仕事を選びました。そんな私たちは公教育、民間教育の分け隔てなく、子どもたちの未来にとって何がベストであるかを常に虚心坦懐に模索しています。
塾と学校がそれぞれの強みを活かして、我が国の社会全体における教育力を高めていけるように尽力していきたいと考えています」
最後に全国学習塾協働組合理事長の森氏が全国の学習塾を代表して次のように祝辞を述べた。
「従来の学びに、様々な業界の最先端の技術革新が混じり合って、先が見えない状態になりつつあります。日本は世界でも教育立国として長い歴史がありました。日本人は規律正しい生活習慣や深い洞察力を持ち、世界でも優秀であるという定評があります。そうした人材を育ててきた自負が学習塾にはあります。
このような時代に即応して、我々は20年先、30年先の未来に世界で大きく飛躍できる人材の育成を目指し、ともに新しいことにチャレンジし、常に人々の先頭に立って未来を背負って立つ子どもたちを導いていく努力を続けたいと思います。
創立40周年、50周年に向けて、さらに日本の教育のはるかな高みを目指し、皆様が力を合わせて進んでいくことを、心から祈念してお祝辞の言葉といたします」
高い志と感謝の気持ちを忘れずに日々努力する姿を
来賓祝辞のあとは、表彰式へ。まず、自主基準遵守塾の表彰から。自主基準とは「学習塾における事業活動の適正化に関する」ものだ。今年度、この遵守が最も顕著であり、学習塾発展に寄与したと認められた塾に贈られる。この日、臨席して安藤氏から表彰状を授与されたのは「アイ・アカデミー」「(株)アイキューブ」「英進館㈱」「オンフット進学会」「(株)四季青舎柏」「(株)駿英」「地域密着 進学塾MAC」「スタディー」「(株)SmartWorx城南コベッツ池尻大橋教室」「特進館学院」「(株)ビーシー・イングス」「ホリエグループ」の代表者だ。
続いて第33回全国読書作文コンクール優秀作品の表彰。同協会では、明日を担う児童生徒に良い本の出会いに感動する機会を与え、その感動を文章に表現することによって、読書力、文章力、想像力の向上を図ることを目的に、毎年このコンクールを開催している。
今年、全国から募集した作品の中から大賞に選ばれたのは小学生1名と中学生1名。最優秀賞に選ばれたのは小学生4名と中学生3名だ。受賞者が登壇して、安藤氏から賞状と盾と記念品が手渡された。
次に衆議院議員の鈴木英敬氏、逢沢一郎氏から送られた祝電が読み上げられたあと、同協会副会長の今村明広氏が次のように挨拶した。
「高い志と感謝の気持ちを忘れずに日々努力する姿を、子どもたちとともに、そしてここにお集まりの皆様とともにつくっていきたい。そんな思いを共有させていただき、第一部閉会の辞とさせていただきます。本日は誠にありがとうございました」
※子どもに接する仕事に就く人に性犯罪歴がないことを確認する制度「日本版DBS」を導入する法案について10月16日、加藤こども政策担当大臣は10月20日に名集される臨時国会への提出を見送る考えを示した。しかし「通常国会以降のできるだけ早いタイミングで提出していく」と述べた。