吉備学習システム販売(株)吉備勉強会2023開催
10月29日(日)、岡山の行楽ホテルにおいて吉備学習システム販売株式会社(川上真司代表取締役、岡山県岡山市)主催「吉備勉強会2023」が開催された。
「同社の学習システムメビウスZERO」の説明や新たなサービスのお知らせのあと、「今後求められる民間教育」をテーマとした株式会社市進ホールディングス 代表取締役会長 下屋俊裕氏による基調講演、メビウスZEROを上手に活用している個別指導レベルアップ 六本木椋氏、三重進学ゼミ梗桔が丘校 塾長 松田亮由氏が自塾の取り組みを紹介した。
[第1部]
テキスト、Web教材と連携したパックメビウスのサポートなど
冒頭、川上真二代表が挨拶。
「今日は8年ぶりの勉強会となりますが、岡山まで大勢の方にお越しいただき、本当に感謝しかございません。第1部ではメビウスZEROの進化についてお伝えできればと思います。第2部の事例紹介では、本当にびっくりするようなすごい塾に登場していただきますので、ぜひとも参考になさってください」
学習システム・メビウスZEROの説明と提案を行ったのは、近藤亘部長。
システムのコンセプトは、生徒一人ひとりで異なる「理解していない部分=弱点」を明確にし、その弱点のみを克服していくピンポイント学習法。すでに理解している問題を何度も復習する無駄を省き、集中力が続く短時間のうちに弱点のみを効率的に学習するというもの。現在のメビウスZEROは初代から数えて6世代目となるモデルで、小学・中学教科にオプションの高校教科を加えた40万台超を収録している。
プリント作成で選べる問題には「基本」「標準」「応用」「発展」4レベルを設けているので、個々の生徒の学力レベルなどに合わせて演習プリントを作成できる。さらに問題の選び方として「単元指定」「ページ指定」という機能がある。
「単元指定」は、各単元内容を大分類・中分類・小分類・細分類と分けてあり、使いたい問題をピンポイントで選択できるので、授業後の確認テストなどが簡単に作成できる。「ページ指定」は、教科書の種類・学年を選び指定したページ範囲に沿った問題を手軽に選ぶことができるので、定期テスト対策に最適だ。
そして、「パック問題から選択」というのもある。パックとは、予め問題を選んでパッケージ化したものだ。イメージとしては、テストの作り置きができるというもの。塾で使用しているテキストや映像教材に合わせたパックで独自カリキュラムを作成できるのも大きな魅力だ。
独自にパックを作る塾も多いが、特に最近は忙しくてなかなかパックを作る時間がないという塾も多く、そのニーズに応えるべく、2024年春から開始を計画している「プラスワンサポート」の1つとして、「パックデータの提供」を低価格で行う予定。塾で使っているテキストやWeb教材に連動した学習ができることがメビウスZEROの最大の強みなので、パック機能を活かして生産性を上げてほしいという。テキスト、通常用のプリント、講習用のプリント、受験対策特訓コース、確認テスト、演習問題などのパックを作成していく計画だ。
また、もう1つの「プラスワンサポート」は、教室運営と研修サポートだ。オンライン勉強会などを定期的に開催することも計画している。
[第2部]基調講演
(株)市進ホールディングス 代表取締役会長 下屋俊裕 氏
「今後求められる民間教育」
第2部の基調講演では、(株)市進ホールディングス 代表取締役会長 下屋俊裕氏が「今後求められる民間教育」をテーマに講演をした。
下屋氏が最初に提示したのは人口動態。2022年度の子どもの出生数を見ると、年間で初の80万人割れとなり、想定より約10年早く少子化が進行。8月30日の日経新聞朝刊によると、今年1~6月の出生数が37万人で、年間では76万2000人の予測。従来の予想では2043年に70万人割れとなるが、2026年に70万人割れになるという悲観的予測もあるという。
地方の過疎化は以前から大きな問題となっているが、日本総合研究所 藤原匠氏の研究によると、特にキャリア志向の強い女性は東京に出て、地元に戻って来ないという。今後ますます共働きが増え、女性のキャリア志向が高まるであろうことを考えると、収入、キャリア、周囲の理解などの女性が働きやすい環境をつくり、自治体の支援、インフラ整備などの子育てしやすい環境をつくる必要がある。従来の男性目線ではなく、女性目線で見たときに、学習塾が存続できるヒントがあるのではないかと下屋氏は述べる。
これだけ少子化が進み働き手が少なくなってくると、当然のことながら講師を募集してもなかなか採用できない。が、こういうときこそ塾の原点に帰るべきだと下屋氏は述べる。
「なぜ子どもたちが塾に来るのかというと、それはもう単純で、学校の成績を少しでも上げたいからです。先生方にぜひともお願いしたいのは、生徒全員の名前と成績は把握してほしいということです。〝期末テストで数学の点数が10点も伸びたんだってな、すごいな〟などという声がけをするだけでも、生徒は定着します。今、そのことが忘れられているわけではないのでしょうが、なかなか子どもたちのニーズが掴めなくなっているのではないかと危惧しております」
日本語をきちんと読めて書けるようになることも重要だと強調する。
「塾の形態が多様化するのは当然ですが、まずはきちんと日本語が読めて、書けて文章にできることが大切です。それは英語力の向上にもつながります。語学の専門家の間では〝母語以上に異国語の力が伸びることはない〟というのは常識です」
紙に書いて学習することも必要だ。
「私どものグループ塾の市進でも茨進でも個太郎塾でも、手元に紙を置いて、演習問題などの解答は必ず鉛筆で書くように指導しています。ペンタッチではありません。見るだけの目の記憶、聴くだけの耳の記憶だけではわかったつもりになるだけです。要するに、手で覚えないと覚えられないということです。学習システム・メビウスZEROは、きちんと印刷して紙として出してくれますし、パック機能を使って塾のテキストや私どものウイングネットにもピンポイントで適した問題を出してくれるので、本当に役に立っております」
講師が採用しづらい状況では、それを前提にオンライン学習も必要不可欠だと述べる下屋氏。
「複数の教室を展開している塾では、スモール化を図りながら、人口動態をよく見て、子どもが増えている地域の教室展開もいいのではないかと思います」
[第2部 ユーザーの取り組み紹介①]
個別指導レベルアップ 六本木椋 氏
1カ月で20名入塾!集客のために実践した10箇条
六本木氏は大学受験の指導を得意としていて、専門は英語。英語科指導の中で、言語力強化のため国語学習にも力を入れていて、SRJの速読なども取り入れている。高校時代は理系で、文転組。現在29歳だが、26歳のときに株式会社レベルアップを設立した。
周知の通り、生徒を集めにくくなっている昨今、なんと、1カ月で20名を入塾させるという実績を持つ。
集客のために実践した10箇条を大まかに書き出すと、次の通り。
【1】クオリティを追求
(問い)何をもってハイクオリティと考えるか?
【2】どこにコミットするか徹底的に考える
(問い)何に強いか?何が得意か?
【3】体験・授業を属人化しない
(問い)小面倒なことのシステム化を後回しにしていないか?
【4】相場<必要費用 高いことを恐れない
(問い)相場感に無理に合わせながら独自のサービスまでしていないか?
【5】先に買い手を見つける
(問い)いい商品を提供していたら、いつか誰かが買うと思っていないか?
【6】いいものは自分から伝える 本気で愛す
(問い)営業=悪いこと と思ってないか?
【7】他社の集客状況を研究
(問い)大手の動きに合わせないと、とどこかで考えてないか?
【8】技術に値段を付ける
(問い)5000円でできることは1万円でできることの半分なのか?
【9】塾は何を求められていて、私たちは何ができるのか?
(問い)信念・哲学?指導理念?ニーズは何だ?
【10】塾は聖域ではない
塾は何でもかんでも叶えられる場所ではないし、私たちは聖人ではない
「学習に関することなら何でもできますよ」というのでは、何が専門なのかわからないので、大学受験に強いことを前面に打ち出し、「成績アップ」を一番に考えたという。そして費用と効果がきちんと比例するような仕組みづくりを行った。
「体験・授業も、誰がやっても同じになるように均一化し、システム化しました。メビウスZEROを活用していますが、それも体験生の学年や学習時期に合わせて、塾生ができることは体験生も全部できるようにし、機能制限はありません。体験生の詳細が不明でも、使える教材出力システムは作っておきます。なぜなら、体験生はその日だけの塾生だと考えているからです」
メビウスZEROだけでなく、レベルアップが導入しているcomiru、速読・ウイングネットも同様だ。
校門前でのチラシ配布はレベルアップも行っているが、そのチラシは塾に通っていない子どもだけではなく、転塾を考えている子ども、あるいはダブルスクールを考えている子どもにも目を向け、買い手に刺さるコピーライトを意識したという。
「何となく大手塾がやっていること、例えば6月頃に夏期講習生を募集するなどしている塾は多いと思われますが、私たちは大手とタイマンは張りません。集客戦略が大手と違うことは戦術であり、決して負けではないからです」
レベルアップは10月に実施される定期テストを睨み、8月中旬から「3カ月授業料無料」のチラシを配布。「3カ月で12回の授業、自習室使いたい放題」などを謳い、「夏の乗り遅れ まだ間に合う!定期テスト対策!受験まだ間に合う!」と謳っている。「3カ月で12回の授業」というのがポイントで、1カ月に週に2回あるいは3回通えば、すぐに12回になってしまう。しかしレベルアップが気に入ってもらえれば、3カ月経たずに入塾してもらえるというわけだ。
「実際、20人からお問い合わせをいただき、20人全員が入塾してくれました」と、六本木氏は笑顔で語る。
メビウスZEROなどの教材は、指導のクオリティーを上げるためにあるので、アルバイト講師にも教材の使い方、教室運営のやり方やシステム、料金体系についても確実に理解してもらうことはつねに意識しているとのことだ。
[第2部 ユーザーの取り組み紹介②]
三重進学ゼミ梗桔が丘校 塾長 松田亮由 氏
自分で考えて行動できる子が育つ、先生と生徒が共に学ぶ「共育」
松田氏は現在42歳で、教育業界は7年目。三重進学ゼミ梗桔が丘校として独立開校した年の、冬からコロナ禍に突入。緊急事態宣言を乗り越え、コロナ禍にもかかわらず勉強を教えないのに毎年売上げが上がり続け、1、2カ月の間に定期テストの5教科合計が最大129点アップした生徒が現れるなどの成果をあげている。
入塾してくる生徒は「紹介」が71%で、平均単価は約3万円。授業はいっさい行わず、勉強を教えない塾として営業している。
「先生が汗をかくのではなく、子どもの脳に汗をかかせる指導を行っています。現在、日本の社会で求められている人材とは、何も教えなくてもできるようになる人だと考えているからです」
生徒層は小・中学生がメイン(高校生以上は場所の貸し出しのみ)で、偏差値でいえば30以下~75あたり。偏差値55を超える高校は電車で1時間程度かかるため、市内の偏差値40~55あたりの高校に行く生徒が半数以上を占めるという。
入塾の理由は、ひとことで言うと「勉強のやり方がわからないから」。小学生のうちからの入塾は「将来のため」、中学生の入塾は「弱点克服・高校受験」、偏差値70超えなど高学力の生徒は「自分のペースでもっと勉強を頑張りたいから」。
「勉強ができない子はなぜ家で勉強しないかというと、勉強をする意味や価値がわかっていない。勉強をする環境ではない。勉強のやり方がわからない。主にそれら3つの理由によって勉強ができないのです。しかし、やらされている間は人は成長しません。勉強しろと言われれば言われるほどパフォーマンスは落ちていきます」
吉備学習システム販売(株)の「学習システム・メビウスZERO」は、ザルの目を細かくするように学習をさせる、と松田氏は賞賛している。
「当塾では、メビウスZEROの〝過去の対策・復習問題〟のパック登録を生徒の名前で行っています。対策復習を保存しておけば、いつでも苦手問題から選出できます。間違えた問題を保存していくので、一番苦手な問題が砂金のように残ります」
苦手な問題を解き、弱点を克服して点数が爆上がりした生徒の事例をいくつか紹介したあと、逆に、得意を活かす勉強法も紹介された。
どちらにせよ、指導の特長は「コーチング」。
「コーチングとは、質問などをして問いかけることによって学びを得てもらうことです。当人に気づいてもらうことが必要なため、一方的な授業やアドバイスは行いません」と松田氏は語る。
コーチング手法による生徒の態度の変化、成績アップ、志望校合格、進路の決定などの事例を次々と挙げたあと、松田氏は「活用しているメビウスZEROの最大のメリットは、他のICT教材と相性抜群であることです」と語る。
「アクティメソッド タイピング英語」「TERRACE 速読解・思考力講座」「Monoxer」を使って、生徒が劇的に変化し、成長した事例を紹介した。
そして最後に、松田氏は以下のことを語った。
・人に言われるのが嫌なら自分で考えて行動すればいい
・自分で考えて行動するには思考力が必要
・思考力がなければ考える材料を与えても考えられない
・考えられない子は思考力を鍛えればいい
・思考力を鍛えられれば自分で考えて行動ができるようになる
・自分で考えて行動ができるようになれば、人に指図されなくても行動できる人になる
・人に指図されなくても行動できる人になれば今後の世の中が生きやすくなる