私教育を一つの力に
「数字で見る日本の教育」「いじめ」
そして、「私教育の未来と希望」作家 高嶋哲夫
三つについて述べたい
一つは「数字で見る日本の教育」「いじめ」の実態
そして、「私教育の未来と希望」について
「文部科学省」の令和5年10月4日公表の資料
▼小・中・高等学校及び特別支援学校におけるいじめの認知件数は68万1948件(前年度61万5351件)であり、前年度に比べ66万597件(10.8%)増加。児童生徒1000人当たりの認知件数は53.3件(前年度47.7件)。
▼小・中学校における長期欠席者数は46万648人(前年度41万3750人)、高等学校における長期欠席者数は12万2771人(前年度11万8232人)となった。
▼小・中学校における不登校児童生徒数は29万9048人(前年度24万4940人)であり、前年度から5万4108人(22.1%)増加し、過去最多となった。在籍児童生徒に占める不登校児童生徒の割合は3.2%(前年度2.6%)。
▼過去5年間の傾向として、小学校・中学校ともに不登校児童生徒数及びその割合は増加している(小学校H3:0.7%→R04:1.7%、中学校H30:3.7%→R04:6.0%)。
▼高等学校における中途退学者数は4万3401人(前年度3万8928人)であり、中途退学率は1.4%(前年度1.2%)。
▼小・中・高等学校から報告のあった自殺した児童生徒数は411人(前年度368人)。
▼調査開始以来過去最多であった令和2年度.9和4年度は増加となった。令和4年度調査より、「自殺した児童生徒が置かれていた状況」について、新たに「教職員による体罰、不適切指導」の項目を追加した(2人が計上)。
「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」(いじめ関連部分抜粋版)から抜き出した。
とらえ方はいろいろあるだろうが、今後も増え続けるということは確からしい。
「いじめ」の現実
■「変態」「きもい」「死ね」清掃の時間に羽交い絞めにされ、首を締められる。
■教室でズボンをずらされそうになる。
■部活の後輩にラケットで殴られる。首をつかまれ、教室の窓から落とされそうになる。
■寝姿を撮影され、「変態」の文字とともにSNSに投稿される。
2023年、兵庫県の市立中学二年生、当時十三歳の男子生徒が自殺したときの、第三者委員会が「認定したいじめの主な行為」36件の一部だ。
「予想をはるかに超えたいじめが行われ、放置されていた。驚きと悲しみに打ちのめされた」
「少しでも真相を知りたいという差し迫った気持ちと息子を守れなかったとの後悔に苦しみ、地獄のようだった」
「休まずに通学していたが、休ませれば良かった。わずかながら学校を信頼していたが、今は一切信用していない」
これは調査報告書を読んだ、自殺した男子生徒の両親の心情だ。
「教員がいじめ事案への認識を高め、子供たちにしっかり寄り添い、組織的、継続的な対応をしたい」
こちらは報告書の公表に対しての教育長の言葉。
先に書いた行為は、人を殴れば「暴行罪」、脅して金銭を要求すれば「恐喝罪」、公然と悪口を言われ、SNSに投稿すれば「名誉棄損」、首を絞める、窓から落としそうになるは「殺人未遂」が成り立つ。自殺に追い込んだのであれば、殺人と同様だ。どこかでより積極的な方法が取られていれば。しかし子供は自ら命を絶った。いじめた側も、その重荷を一生背負って生きなければならない。
国も学校も、いじめの行為の定義、早期発見など様々な手を使って努力はしている。だが根本的な対策は、いじめる側の子供の心の改革ではないだろうか。「人の嫌がることをしない」「もっと優しい心を持つ」「相手の身になって考える」人間としての基本的な部分の欠如ではないか。
最近は、大人の世界でも、「セクハラ」「パワハラ」「カスハラ」など、強い立場にある者が弱い立場にある者に対する行為が問題になっている。人の心の痛みを知らないで大人になった人が、当事者になっていないか。そうであれば、辛く悲しいことだ。「いじめ」は、子供だからと言って許されることではない。
学習塾、私立学校、教育関係企業など私教育がまとまれば
文部科学省は2023年12月22日、2024年度文部科学省予算案を公表した。文部科学関係予算額は、前年度比443億円(0.8%)増の5兆3384億円。小学校高学年の教科担任教師の増員、副校長・教頭マネジメント支援員の配置、教師人材の確保強化などを盛り込んでいる。
日本の教育は公的な学校ばかりではなく、私立学校、学習塾、教材会社、テスト会社、様々な学習補助機器を生み出している企業が支えています。また、日本社会で活躍している人たちの多くは、学生時代学習塾で学び、学習参考書や機器を使用したに違いありません。しかし、「私教育」の存在が表面に出ることはあまりないような気がします。それはやはり、私教育のまとまりのなさに原因があるのではないでしょうか。
これらの私教育が一つになれば、教育を変える大きな力になることは間違いありません。教育現場を知らない政治家や官僚、学者に任せるのではなく、もっと現実に沿った提案ができるのではないでしょうか。そして子供にとって、もっと生きやすい、学びやすい環境をつくることができるのではないでしょうか。
さあ、ここからは「夢の話」をします。
2000年、『ダーティ・ユー』という小説を書きました。現在は二次文庫として、『いじめへの反旗』として出版されています。子供が自ら命を絶つようなことは絶対にあってはならないという思いから書いたものです。ユーという名前は、主人公雄一郎のユーと共に、「あなた」のユーの意味も込めています。25年余り前の本ですが相変わらずいじめは存在し、ひどく、陰湿になっているのが残念です。現在、映画化に動いてくれている人がいます。実現して、子供たちの心をより優しく、強く変えてくれるとありがたいと思っています。
制作にあたり、私教育が一つになればと思っています。公教育がもたもたしている間にもいじめは起こり、子供たちは死んでいきます。それを防ぐために、私教育が力を合わせるということは大きな意味があると思います。今後の教育界に大きな力となると信じます。限られた紙面では、かなり舌足らずになっていると思います。勝手なことを言ってゴメンなさいネ。
作家 高嶋哲夫 氏
教育関係の著作 「いじめへの反旗」(集英社文庫)「アメリカの学校生活」「カリフォルニアのあかねちゃん」「風をつかまえて」「神童」「塾を学校に」「公立学校がなくなる」など多数。
https://takashimatetsuo.jimdofree.com/