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個学舎 創立25周年記念式典
「子どもたちの未来のために」講演&謝恩パーティー

2024-08-01

去る6月9日、市進教育グループの(株)個学舎(金澤匠時代表取締役社長)が創立25周年を記念して、講演および謝恩パーティを開催。会場の東京ガーデンパレス(東京都文京区)には、全国から加盟校オーナーや学習塾関係者が参集した。
冒頭、(株)個学舎 代表取締役社長 金澤匠時氏が参加者に感謝の意を示した。
「4半世紀にわたる個学舎の運営は、ひとえに皆さまの支えがあってのことと感謝申し上げます。AIや地球温暖化、複雑な国際情勢などさまざまな課題がある未来に向けて、子どもたちがどんな力をつけていかなければならないか、本日はそのヒントとなるご講演をいただきます。また、後半にはささやかな謝恩の会を催し、皆さまの明日への活力にしていただければと思っております」
「子どもたちの未来のために」をテーマに掲げた講演は、(株)タマイインベストメントエデュケーションズ代表・玉井満代氏と立命館アジア太平洋大学東京オフィスPRマネージャー 伊藤健志氏が登壇。
世界と日本の教育のギャップ、日本型教育の課題、グローバルな学び、教育の担う使命など考えるヒントが満載の講演をリポートする。保護者に伝えたいメッセージなど示唆に富んだ提言の数々をぜひ参考にしていただきたい。

「世界から見た日本型教育の課題と低学年教育における使命とは」
(株)タマイインベストメントエデュケーションズ 代表 玉井満代 氏

人口減の日本は絶滅危惧種
日本型教育の問題点とは

(株)個学舎 金澤匠時 代表取締役社長

(株)個学舎 金澤匠時 代表取締役社長

ICT教材クリエイターであり、脚本・演出家でもある玉井氏。20年にわたる指導経験を活かし、「玉井式国語的算数教室」「図形の極み」などの教材を展開している。全国約2万4000人が学習し、日本の教材会社で初となるインド政府立小学校の教材としても採用されている。
2060年には総人口約8600万人、労働人口は国民の5割で65歳以上が4割占めると予想される日本。これまでと大きく異なる世界を生きる子どもたちの教育が、これまでと同じであるはずがない。しかし、教育が変わっていないのが日本の現状だと玉井氏は指摘する。
「世界から見ると、日本はまさに絶滅危惧種です。シュリンクしていく国だと認識されており、『日本の教材を勉強して何になるのか、日本の何を学ぶべきか』と問われます。言葉を選ばずに言えば、小学2年生が九九を唱える教育でゆったり構えている場合ではないのです」
日本型教育の問題点について、玉井氏は警鐘を鳴らす。
「教科書準拠の算数において、割り算で〝あまり〟を出す教え方はカリキュラムエラーです。〝あまり〟というひらがなを含む数式は、世界中どこにもありません。また、学校でかけ算を習えば、ドリルはかけ算ばかり。しかも、例えば5の段のドリルは計算問題に加えて、文章題も5の段の式になるようにわざわざ作問されています。この焦点型学習も問題です」
また、英語教育で最も重要なのは、〝英語を話すメンタリティ〟だと話す。
「私たちは英語のネイティブではありませんから、英語ができないことで自信をなくさせ過ぎないようにしなければなりません。英語はあくまでも世界中の人とのコミュニケーションするための便利なツールであり、英語ができるから思考力があるとか仕事ができるわけではありません。日本語の読解力こそが必須です。母語に英語を加えるとき、母語が理解できなければどうやって英語に変換して相手に伝えられるか、という話です」

『今はできなかっただけ』
必要なのは自己肯定感

(株)タマイインベストメントエデュケーションズ 玉井満代 代表

(株)タマイインベストメントエデュケーションズ 玉井満代 代表

これから先、答えのない未来を歩んでいくために、子どもたちは『きっとできる!』という自信を持たなければならないと玉井氏は強調する。
「低学年生が答えを間違えたとき、先生がかけるべき言葉は『惜しい!』だけです。『間違っている』と指摘されると、『もう自分には無理』とやる気メーターが下がってしまいます。たとえ、正解が100で答えが3でも、私は『惜しい!』しか言いません。間違えてもテンションを上げ直して、自分で考えてみようという気持ちにさせるのが最初のステップです」
それでもわからなかった場合、伝えるべき言葉は「今はできなかっただけ」だという。
「その問題を解かせることだけにフォーカスするのではなく、『今わからなくても必ずわかるようになるから心配しなくていい』『こんなに一生懸命勉強しているのだから、絶対できるようになる』と繰り返し伝えてほしいと思います。
95点のテストを見た保護者のアクションは『どこを間違えたの? よく読んだ? 見直した?』と言ってしまいがちですが、子どもが自信を失ってしまうだけですからすぐに止めさせてください。
小学生に必要な力は『自己肯定感』、つまり自信です。ただ算数の文章題ができるといったあいまいなことではありません。『自分は影響力がある人間なんだ。この世に生まれて存在していいものなんだ』という自己肯定感を育まなくてはなりません」

グローバルスタンダード
「トゥエルブ」の取り組み

(株)タマイインベストメントエデュケーションズ  久保 氏

(株)タマイインベストメントエデュケーションズ 久保 氏

続いて、海外の数学を研究し、そのエッセンスを元に玉井式教材をグローバルスタンダードなものにするというコンセプトの教育コンソーシアム「トゥエルブ」を久保氏が紹介した。
「主な活動は、世界最大15カ国の学生や大学の教授が自国の数学の考え方や向き合い方を発表し合うオンラインのディスカッションイベントです。
日本では高校数学は役に立たないと考える学生が多い中で、大学入学共通テストは読解力だけでなく〝数学と日常を結び付ける〟ことが明記されています。『トゥエルブ』はこの課題に対する答えをアフリカに見つけました。アンゴラで最大の石油企業が実際に抱える課題を入試問題として提供しています。社会の現場で数学を使う場面にフォーカスして教えるのがアンゴラの数学です。
〝日常に役に立つ〟レベルではなく、例えばベクトルを学べばAIプログラマーになれる、三角関数でイヤホンが作れるように、いかに社会に貢献できるかが本当の価値です。こうした発見を玉井式教材が高校数学に落とし込み、グローバルスタンダードにするべく研究・開発しています」
玉井氏は最後に、「何のために勉強するのか」という問いに対する答えを次のように力強く述べた。
「『君たちには絶対に強みがある。それを見つけ出すために勉強する。だから今はできなくていい。一緒に勉強しよう。わからないことやできないことは、決して恥ずかしいことじゃない』と、私は子どもたちに伝えています。
教育から情熱を除いたら何も残りません。1人の人生の始まりの部分を預かることは生半可なことではありません。教育は未来を担う〝とんでもない仕事〟です。教育の最終目的はあくまでも『子どもの人生が幸せなものになること』であると、ぜひ保護者にお伝えください」

「なぜ学ぶのか?保護者にも伝えたいこれからの社会で活躍する人材とは」
立命館アジア太平洋大学(APU)東京オフィスPRマネージャー 伊藤健志 氏

APU東京オフィスPRマネージャー 伊藤健志 氏

APU東京オフィスPRマネージャー 伊藤健志 氏

伊藤氏は2002年に大分県別府市のAPUに入職。若者のエンパワーメントをライフワークとしつつ、グローバル人材を受け入れる側の意識改革をどう促すかをテーマに活動している。
「京都の立命館大学が100周年を迎えた2000年に、APUが誕生しました。海外の学生は18歳になると世界中の大学にアプリケーションを出します。しかし、日本には1年間日本語学校に通ったあとに大学に入学する仕組みがあるため、アプリケーションが出せないのが現状です。また、従来のような知識注入型の授業をすれば学生の暴動が起きるでしょう。日本人にしか最適化されていない大学のシステムを刷新するために、新しい大学APUを創立しました」

世界中の学生と面接して
日本と世界の差を痛感

「先日面接したインドネシアの学生はボタン1つで世界中に願書を送り、アメリカの大学4校、オーストラリアやイギリスの大学、インドネシアのトップ大学も合格しています。なぜ世界中の子どもたちができることが、日本の子どもたちにできないのか。留学生たちと話すほど、世界との学力・意欲・考える力・世界を見る視点のギャップに気づかされ、私自身フラストレーションを感じる日々です。
また、世界中で各大学が入試を作問するのは日本の大学だけです。世界のスタンダードは統一試験です。ほぼ全員が化学や物理など理系の科目を履修し、基本的には英語で各科目の試験をクリアしないと大学に進学できません。〝すべての言語を日本語で勉強できる日本〟の方が珍しく、リテラシーの部分で世界との大きなズレが生じています」
APUと他大学との違いは、決定的だ。他大学では海外からの留学生のほとんど全員が大学院生で研究室の中にこもり、学部には留学生がいないと伊藤氏は指摘する。〝留学生が学部の正規学生〟であることが重要だとの認識を示した。
「日本の大学院はずいぶんと国際化が進み、東大大学院にも100カ国ぐらいの学生が在籍しています。しかし学部の方は、最も留学生の多い早稲田大学でも100人中6人もいないくらいです。
一方、APUは学部の半分を外国人が占めます。こんな〝クレイジー〟な大学は世界中でも珍しいと言えます。60か国の留学生が暮らす寮は日本で最も〝国際的な日常〟です。生徒同士がぶつかり合う4年間は密度が濃く、〝インターナショナルスクールの大学版〟と言った方が的確かもしれません」
学部は社会科学系(ソーシャルサイエンス)の3学部だ。110カ国の留学生に共通するモチベーションは、自分の両親・家族への感謝と自国を何とかしたいという思いだという。
「教育は未来への投資であり、自分に付加価値が身に付く大学を選びます。彼らは基本的に学歴と呼べるのは大学院だと捉えているため、APU卒業後に東京で数年間働き、その後ハーバードなど世界のトップランキングの大学院に進学します」

アジアの中で競い合うより
ともに新しい世の中を創造

[左] (株)学研塾ホールディングス  勝野哲也 代表取締役社長 [右] (株)市進ホールディングス  下屋俊裕 代表取締役会長

[左] (株)学研塾ホールディングス 
勝野哲也 代表取締役社長
[右] (株)市進ホールディングス 
下屋俊裕 代表取締役会長

伊藤氏は「コミュニケーションのための言語が英語であるかどうかは重要ではない」と強調する。
「世界中の学生は英語ができれば間違いなく人生が変わります。これが日本の子どもたちは腑に落ちていません。しかし、世界中で英語は7%しか通じないとも言われています。共通語は数学です。英語ではありません。〝証明〟をしないと相手には伝わりません。どれだけ論理的に相手を説得させることができるかが、はるかに重要です。
対話を通していかに自分の枠を広げ、共感力を養うことができるか。世界中で『あなたは誰で他の人とどう違うのか』『何を考えていて将来何をしたいのか』が最も大切なポイントです」
そこでキーワードとなるのは、少数派・対話・多様な場所に身を置くことだという。
「宗教や民族、国境線の意識、経済格差、移民・難民に関して日本人にはわかりかねる部分が多く、〝必殺〟あ・うんの呼吸が通じる社会です。暗黙知は素晴らしいことですが、世界では通じません。日本の子どもたちが苦戦するのはここです」
厚生労働省のホームページによると、グローバル人材の定義は「語学力、コミュニケーション能力、主体性、積極性、チャレンジ精神、協調性、柔軟性、責任感、使命感、異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティ」だ。
「『この枠に入らないと大変だ』と子どもたちを脅すのは絶対に止めましょう。自分自身が何者で、自分に何ができるかをわかってそれをしっかり伸ばすことこそが世界で通じる人材です。
また、日本のGDPも脅し文句になっています。確かに2000年は日本のGDPは世界の14%でしたが、2030年の予想は4.5%です。でも、2000年はアジアの割合が7%、2030年は32%で日本を含めると36%です。インドネシアやインドに負けるとか競うという話ではなく、手を握り合って新しい世の中をつくろうと言わない限り、子どもたちに希望が生まれません。日本は世界中の若い人たちが集まって次の未来を創っていく場所として適しています。子どもたちが持つ〝世の中を変えるチャンス〟をつぶさないようにしなければなりません。
前さいたま市教育長の細田眞由美氏は著書『世界基準の英語力』の中で、英語力を『言葉として人々をつなぎ、地球上に山積しているさまざまな課題解決に向かっていける力』とし、前APU学長の出口治明氏は教養について『知識と考える力をかけ合わせたもの』と定義しています。まさしくその通りだと思います」

子どもたちの未来を願って
FCオーナーと決意を新たに

謝恩パーティーの冒頭には(株)市進ホールディングス会長 下屋俊裕氏が挨拶を述べた。
「個学舎の25周年はFCオーナーの先生方に支えられた歴史です。学校の成績を1点でも上げたい、志望校に合格したいという生徒さんたちに向き合う25年間でした。来年60周年を迎える市進グループにも共通する特徴は〝愚直に真面目にコツコツ〟です。FCオーナーの皆さまから厳しいご指摘も頂戴しながら、さらに〝愚直に真面目にコツコツ〟を追求していく所存です」
来賓を代表して(株)学研塾ホールディングス代表取締役社長 勝野哲也氏より、個学舎と各学習塾の大いなる成長、子どもたちの未来を願って乾杯が行われた。
「個別指導の業界はどの学習塾も苦戦しています。昨年より生徒数1~2割減の学習塾が多い中で、個学舎が生徒数を伸ばしてきたのは原点である『丁寧・熱心・親切』を貫いてきた結果だと思います。今後も継続することによって子どもたちの明日が見えてくるはずです」
最後に、個学舎の金澤氏は次のように締めくくった。
「学習塾業界における競争がより激化しているのは事実です。変わることができないものは滅びていきます。常に社会のニーズに応えつつ、さらにニーズを創り出すような動きで、変えるべきものはすぐに変える、変えてはいけないマインドは残していく運営が肝要だと思います。個別指導はまだまだ需要があります。個学舎は皆さまとともにますます発展していきたいと考えています」


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