SRJ×みんがく 共催セミナー
「AIと教育の近未来を考える」
生成AIが教育を変える
生成AIの発展に伴い、教育のあり方は大きく変化している。株式会社みんがく(佐藤雄太代表取締役、東京都目黒区)は、株式会社SRJ(柏木理 代表取締役、東京都中央区)と共催で9月29日、AP東京八重洲において「AIと教育の近未来を考える」をテーマにセミナーを開催した。AIと教育の近未来を考える本セミナーでは、2名の先生方にご登壇いただき、学校・学習塾などの教育事業関係者を対象に、教育分野における生成AIの活用とこれからの教育についての知見を共有した。
株式会社SRJは、時代の変化やICTの普及に機敏に対応し、全国の教育現場と共に、持続的な教育ネットワークを構築している。社員一人ひとりが、「教育の未来」を求めて変革し、日々の気づきを重んじ、主体的に行動し、商品やサービスの品質を高め、価値あるものを提供。教育業界の発展をリードする存在を目指している。
株式会社みんがくは、「次世代の教育のスタンダードを創る」をビジョンに掲げ、「教育×テクノロジー」をテーマに現場課題と向き合う会社である。もともと全国の教育者が協力して運営していた合同オンライン自習室から始まったプロジェクトが発展し会社となった。その後も、教育サービスの開発事業、教育機関へのコンサルティング・研修事業、教育メディア事業など「教育×テクノロジー」を軸に幅広く事業を展開中。現在、生成AI×教育のサービス開発プラットフォーム「スクールAI」の開発に注力している。
[セミナー1]
今までの価値観を問い直す時代へ
「近未来」とはいつ頃のことだと思われますか?ここ1~2年もかなり激動の時代でしたよね。10年後のAI像はまったく想像できないですよね。長いスパンで考えると、人類滅亡といった映画の世界みたいなことが起きるかもしれません。
今の時代は、『VUCAの時代』(*1)と言われます。予測困難な時代を子どもたちが生きていく。「今までの知識は通用しない」「どうする?」というときに生成AIを使うようになります。義理人情が発生する余地がなく、マニュアル通りにこなせばよい領域から生成AIに置き換わります。プログラミングできてしまうからです。
我が国の大量生産時代には「誰かの代わり」になることが良しとされてきました。しかしこれからはそれが生成AIに置き換わっていくため、みんな同じことができる力を付けなくてもいい。もちろん、当時はそれで成立していたわけで、それを否定するものではありまん。本当にその価値観でいいのか問い直す時代がきていると思います。
(*1)VUCAとは、変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)の頭文字を取ったもので、特にビジネスシーンにおいて、企業やリーダーが直面する課題を示している。
「なんのために?」と考えることの大切さ
つい最近、生成AIが「数学」の試験問題でも高得点を取れるようになりました。知識偏重型の教育は、これからの時代にはそぐわないです。AIは道具です。道具の使い方は、使う人の心次第。大切なのは「なんのために?」と考えることです。今の時代、日常の調理に火打石を使えと言われたらおかしいですよね。道具にもレベルがあり進化しています。ほうきから、掃除機、ルンバ、他には洗濯機や食洗器もこうした道具の利用の延長線上にAI活用もあります。価値観が多様化していくときに、時代によって求められる能力が変わってきます。AIに何を任せるのか。逆に心を込めて手描きをするのも素敵です。このような判断力がAI時代では重要です。
[セミナー2]
AI学習の未来とは?
AIと教育に関する最新取り組み事例
最新の事例をお話しますと、リアルタイムに会話をしながら図形の問題を教えてくれるAIが半年前くらいに誕生しました。他にも教材をもとに複数のAIとテーマに沿って対話ができ(まだ英語版のみ)、対話しながら教えてくれるものもあります。
私自身の取り組みとしては、複数講義の動画に質問をすると、解答に加え、動画の説明該当箇所も教えてくれるAIを中部大学の藤吉先生と連携して開発しました。また東京学芸大学や文部科学省といろいろな取り組みをしていますが、ルーブリックに基づく記述問題の自動採点や採点理由、フィードバックまで作成されます。使用用途は、先生の採点の補助という位置づけです。解答に対して、「これは15点満点で理由は~」「これは8点で理由は~」というように理由やフィードバックを作成してくれるため、大量に解答が来たときに効率的です。別のプロジェクトでは、教員向けに、研修の振り返りに対して、AIがさらにフィードバックを入れてくれます。学びの履歴は本人のものという考え方のもと、ブロックチェーンに記録して個人で保持できるような仕組みとなっています。
「超知能」が登場する!?
2027年から2030年にかけて「超知能」が出てくる可能性があります。「超知能」とは、あらゆる分野で専門家を超えるAIのことです。2026年くらいには、人型ロボットが販売されるのではないかと言われています。販売価格は2万ドル程度を予想。「頭がよくて」「役に立つ」ことはAIがやるようになり、従来、価値があるとされていた領域がどんどんAIに置き換わる可能性があります。VUCAの時代の中でどんどんわからなくなって、特にAGI(※2)が誕生した後、もうその先は全然予想がつかなくなります。
ちょっと先を考える時にAGI前と後で分けて考えるのがいいのではないかと思います。答えや正解がない時代、叶えたい未来を自分が創る、主体性を中心に伸ばしていくことの大切さが今、言われていることなのかなと思っております。
(*2)AGIとは、Artificial General Intelligence(人工汎用知能)の略であり、人間のような汎用的な知能を持つ人工知能を指します。AGIは、様々なタスクに対して人間と同様の知識や能力を持ち、独自の学習や問題解決ができる能力を持っています。
AIの活用をどうしたらいいか
AIの活用は、①個別最適な学び②フィードバックと振り返り(AIがフィードバックをすることを前提とした授業展開、AIを集団にいれることで異質な集団を意図的につくる)③コンピテンシーの見取りなどが挙げられます。しかしAGI浸透後はどうなるのか、有名な未来学者も「わからない」と言っています。
ここからは私の想像です。知能爆発とは、AIが賢くなることでAIがAIを進化させ、爆発的に技術革新が起きる状態のことです。すでに「AIが自分で論文を書く」ということが行われています。そうなると「役に立つ」人材はいつまで「社会から求められる」のでしょうか、AIが「役に立つ」仕事を人間より上手にやってくれるとしたら、外側の価値に合わせて自分を変え、「何かができるようにする」ということに意味がなくなってくる可能性があります。
つまり、自分以外の誰かにならなくてもよい時代になるかもしれません。社会的な期待やあるべき姿ということから、自分自身であることへの価値、本当に自分が価値を感じるような生き方に移っていくのかなと。そうすると、自分が本当に好きなことや、情熱を感じることに時間を使えるようになるかもしれません。
みんなが「自分として」生きるためには、お互いを尊重し協力し合う社会の実現が必要で、それは大変かもしれません。ただ、「何かができるようになることが、あまり意味がなくなった時」、教育としては「自分を生きる力」・「皆が自分を生きられるよう協力しあう力」が後押しになる可能性があります。
最後までAIに奪われないものは何か、それは「この世界を堪能すること」「誰かの役に立ちたい気持ち(広い意味での愛)」、「愛とワクワクに生きる!」がポイントです。
最後にこの言葉を贈ります。
「未来を予測する最良の方法は、それを発明してしまうことだ」