野田塾 主催 全国模擬授業大会in 名古屋
生徒の心に炎を灯す授業のために指導技術力を競う
「チョーク一本で教育改革を」。この言葉に教育と子どもたちへの愛情と熱意を託して「全国模擬授業大会in名古屋―教育の力 2024―」が今年も10月27日(日)に行われた。全国の塾や学校の教壇に立つ教師たちが授業での「話法表現力」「板書」「指導内容」「論理展開」「工夫」「納得感」を競い合うイベントである。会場は例年通り、学校法人 名古屋学院 名古屋中学校・高等学校だ。
今回で12回目となる大会に参加した団体は45で、出場者は52名。このプロ教師たちが全国の塾の代表を始めとする審査員を前に、約15分の模擬授業で指導技術力を競い合った。
人間だからこそできる、やる気を引き出す授業を
「公平で質の高い教育を提供できる先生を育成するための場を提供する」「教育関係者が協力し合い、教師の指導技術を高めることにより、教育業界全体の発展をめざす」。この2つが本大会の目的だ。名古屋中学校・高等学校のチャペルで行われた開会式で、主催者である野田塾の取締役塾長 三輪宏氏は次のように挨拶した。
「ここ最近、オンライン授業やAI教材が普及し、子どもたちへの指導が大幅に効率化されました。こうした中で、やはり人が行う授業の大切さを改めて認識できたと思います。今日は、人間だからこそできる、生徒のやる気を引き出す熱い授業を見せてください」
続いて、名古屋中学校・高等学校学校長の永田久喜氏が挨拶。ロサンゼルスオリンピックで水球の日本代表を務めた永田氏は「本校のチャペルが、先生方が今後さらに活躍できる、模擬授業オリンピックの会場のような場所になればよいと思っています」とエールを送った。
続いて、来賓や審査員の紹介、審査方法などの説明が行われた。その後、才徳学院・北風翔一朗先生が、登壇した出場者全員を背にして選手宣誓。「私たち一同は本日、授業を全力で行うことをここに誓います」と力強く述べた。
審査を勝ち抜いた5名が持てる力の限りを尽くす
開会式終了後、会場を校舎に移し、部門別予選と部門別チャンピオン決定戦へ。英語・国語・数学・理科・社会・ルーキー(新人)の部門ごとに教室に分かれ、熱戦が繰り広げられた。
午後2時からは、再び会場をチャペルに移して、グランドチャンピオン決定戦が開幕。まず、各部門のチャンピオンが発表される。その1人に選ばれた野田塾・山岡元先生(社会)は名前を呼ばれた瞬間、嬉しさのあまり泣き崩れてしばらく立ち上がれないほどだった。
こうした喜びの余韻が冷めぬまま、受賞者5名が登壇。持てる力の限りを尽くして模擬授業を堂々と披露した。
数学部門のチャンピオンは、野田塾・松下佳史先生。扱った単元は「三平方の定理」(中3)である。松下先生はピタゴラスの定理を使って富士山の山頂から水平線までの距離の求め方を説明。GPSにも、この定理が使用されていることを解き明かした。
国語部門はアガトス 創学舎・村田寛之先生。単元は「接続語の応用」(小5)だ。「しかし」「たとえば」「つまり」「だから」といった接続語の使い方を、例文を用いて親しみやすく説明。「接続語を制する者は、国語を制する」と力強く語った。
社会部門は野田塾・山岡元先生。単元は「裁判員制度」(中3)である。裁判員裁判の仕組みを、桃太郎の鬼退治を例に出して楽しく解説。ステージから降り、他の出場者や見学者のもとに歩み寄り、「無罪か?有罪か?」を聞くなど会場を巻き込んだ授業を展開した。
英語部門はeisu津駅前校・国武明宏先生。単元は「助動詞(発展)」(中2)だ。「can」の過去形である「could」を使うと英語が敬語になること、また、その理由を英語の世界観と日本語のそれとの違いにあると述べ、最後にリズムをつけて例文を覚える方法を伝えた。
理科部門は野田塾・田島康平先生。単元は「生態系」(中3)である。石垣島でマングースが絶滅したニュースを例に挙げ、人間と生物の関わり方について説明。私たち人間が環境や理科を積極的に学ぶことが、生態系を守ることにつながると力説した。
この経験を自信に変え、研鑽を続けていきたい
結果発表を待つ間、ルーキー部門チャンピオンに輝いた野田塾・杉山綾梨先生が理科の模擬授業を行った。単元は「状態変化」(中1)。
そして、いよいよ結果発表へ。グランドチャンピオンの栄光を手にしたのは、部門別チャンピオン発表の際に涙を見せた野田塾・山岡元先生だ。表彰のために登壇した山岡先生は感極まって、再び、その場で号泣した。
なお、準グランドチャンピオンを獲得したのは、アガトス 創学舎・村田先生。司会を務めた野田塾千種校校長の鈴木智規氏が2人にコメントを求めると次のように答えた。「気持ちよく授業ができました。山岡先生のことは昔からよく知っているので、自分のことのようにグランドチャンピオン受賞を嬉しく思います」(村田先生)。「今回の授業は多くの先輩方の意見を取り入れて完成させました。この経験を自信に変え、研鑽を続けていきたいと思います」(山岡先生)。
続いてエース教育総合研究所のエース特別賞が発表された。この賞に輝いたのは、才徳学院・増田智久先生。教科は社会で、単元は「世界の宗教」(中1)だ。エース教育グループ理事長の青木清氏は、増田先生の授業を「わかりやすく、楽しく、大人にも役立つ」と高く評価した。
次に団体戦の結果発表へ。1位は野田塾、2位はeisu津駅前校、3位は開成教育グループだ。表彰式に続く閉会式では、野田塾の三輪氏による主催者挨拶のあと、愛知県私塾協同組合理事長の山田真司氏が次のように総評を語った。
「ルーキー部門チャンピオンの杉山先生は、新人とは思えない素晴らしい授業を見せてくださいました。グランドチャンピオンの山岡先生の授業は、歯切れのよさ、声の通りのよさ、かっこよさにあふれていました。一方、村田先生は第1回の模擬授業大会から出場されており、準グランドチャンピオンを受賞されて、私の念願がかないました」
最後に司会の鈴木氏が閉会の言葉を述べた。その中で語った「教師が涙を流すほど力を込めた授業が、子どもたちの心に炎を灯さないわけがありません」のひと言に模擬授業大会のすべてが集約されていた。
全国模擬授業大会in 名古屋 教育の力2024(主催・野田塾)
各賞受賞者(敬称略)
■ 個人賞
【グランドチャンピオン】
野田塾 山岡 元(社会)
【準グランドチャンピオン】
アガトス 創学舎 村田 寛之(国語)
【部門別チャンピオン】
野田塾 田島 康平(理科)
eisu 津駅前校 国武 明宏(英語)
野田塾 松下 佳史(数学)
【ルーキー部門チャンピオン】
野田塾 杉山 綾梨(理科)
【エース特別賞】
才徳学院 増田 智久(社会)
■ 団体賞
1位 野田塾(愛知県)
2位 eisu津駅前校(三重県)
3位 開成教育グループ(大阪府)