スタディラボ オンラインセミナー
時代の変化に対応!塾の存在価値を高める方法
世の中が急速に変化するなか、少子化による市場縮小や保護者・生徒の多様化など、塾を取り巻く環境も大きく変わりつつある。厳しい状況を生き抜くために不可欠なのが、塾としていかにして存在価値を高めるかという視点だ。そのヒントを探るべく、(株)スタディラボが開催したオンラインセミナー「時代の変化に対応! 塾の存在価値を高める方法」の様子をレポートする。
[登壇者]
eisu 最高執行責任者 伊藤奈緒 氏
(株)サイタコーディネーション代表取締役 江藤真規 氏
[第1部]
大学入試の変化から読み解く、これからの学習について
第1部では、eisu最高執行責任者の伊藤奈緒氏が「大学入試の変化から読み解く、これからの学習について〜親世代と子世代の比較による考察〜」と題して講演を行なった。
冒頭で伊藤氏は、「塾の保護者会などで使っていただけるような話をしたい」としたうえで、この20年あまりの社会や経済の変化を挙げつつ、親世代と子世代の間に意識や価値観のズレが生じていることを指摘。少子化による大学の定員割れなどから大学の二極化が進んでいる現状を伝え、「中下位の大学には入りやすくなっている一方で、国公立大学や上位の私立大学に入るためにかかる金銭的・時間的なコストは、むしろ親世代の頃よりも上がっている」と訴えた。負担増の具体例として、共通テストの教科・科目数や入試問題における情報処理量(読むべき字数)が親世代の頃よりいかに増加しているかを挙げ、「読解力と知識・技能を両輪とする学力を早期から育成する必要があり、塾でも早い段階から生徒の志望校にフォーカスした個別最適な学習へと先導していく必要がある」と述べた。
続いて、読解力と知識・技能の双方を伸ばすための具体的な方法として、①(難関大学の現代文の入試問題など)難度の高い文章を読む、②紙ベースで読む、③手書きで書く、の3点を提示。特に②③については、「デジタルではなく、ペンと紙を使ったアナログな学習を行うべきである」と主張した。その理由として伊藤氏は、アメリカの教育学者による研究や日本に先駆けてデジタル学習に取り組んできた北欧諸国がアナログ学習に回帰している事例などを挙げ、「デジタルでは深い理解や記憶につながりにくく、学力を高める学習にはアナログのほうが適している」というエビデンスが次々と出てきていることを強調。国によるGIGAスクール構想が進むなか、「塾の人間が信念をもって生徒に取り組ませていかないとならない」と呼びかけ、講演を締めくくった。
[第2部]
塾が今求められる、家庭学習への関わり方とは
第2部では、(株)サイタコーディネーション代表取締役の江藤真規氏が「塾が今求められる、家庭学習への関わり方とは」と題して講演を行なった。
冒頭で江藤氏は、家庭に起きている変化に言及。子どもと過ごす時間が減っている、自分の人生を大事にする、学びの多様化・複雑化への不安を抱えている、といった最近の保護者の傾向を述べたうえで、インターネット社会が進むことで親が子を管理することが難しくなっている点や、さまざまな情報や価値観に触れることで保護者の軸が定まりづらくなっている点を指摘。保護者の抱える不安を理解したうえで、「世の中は多様性に満ち溢れており、私たちも子ども保護者も一人ひとりが違うということを、塾の先生方にはぜひ意識してほしい。思い込みで決めつけず、生徒や保護者一人ひとりに目を向けてほしい」と訴えた。
続いて話題は本題の家庭学習へ。
「家庭学習が大切なのは理解できるが、家庭はすでにパンパン。家庭学習は家庭だけでは成り立たない」と江藤氏。「ぜひ塾に家庭学習をサポートしてほしい」と訴え、それが民間教育の伸びしろになり得ると述べた。
塾の家庭学習への関与の具体的な方法として江藤氏が挙げたのは、①保護者への言葉かけを工夫する、②専門家としてサポートする、③教育の価値を保護者に伝える、の3点。①については、「〝出来事〟の〝捉え方〟が変わると〝結果〟が変わる」というABC理論を紹介し、「努力していました・諦めずにやっていました・やった分は必ず成長しています」など、子どもの成長を支えるポジティブな言葉を保護者にかけることが大切だと伝えた。また、②については、「塾は教育の専門家であり、プロとして学習の見通しを伝えたり情報を提供したりすることを意識してほしい」と訴えた。さらに③については、「教育は成果が見えづらいものだが、保護者に向けて教育の重要性や学びに向かう大切さを伝え続けてほしい」とし、そのためには保護者との信頼関係が不可欠であることを強調した。
最後は、「かつてはレールを走る汽車のように決まった道を決まったゴールに向けて走れば良かったが、今は馬車(コーチ)の時代。家庭に決定権を与えつつ、伴走者として保護者に寄り添ってほしい。保護者は、我が子のことについて話せる人、一緒に考えてくれる人を求めている」と締めくくった。
[第3部]
「Study One」の紹介〜セッション
第3部では、(株)スタディラボが提供するサービス「StudyOne」の紹介ののち、伊藤氏、江藤氏にスタディラボ上席執行役員の峰嶋聡子氏を交えて、セッションが行われた。
「Study One」は、「学習塾と子ども部屋を紙とデジタルでつなぐ」をコンセプトとしたサービス。塾から生徒宅のプリンターに向けて課題を配信し、生徒はプリンターで紙に印刷された問題を解き、スキャンして塾に返送する…という流れでやり取りをする。まさに「紙とデジタルの良いとこどり」をした商品だ。「Study One」について、「当初は家庭まで管理・監督が入るのではないかとやや懸念したが、時間設定や適量化の仕組みなどを知り、家庭学習のサポートになると捉え方が変わった」と江藤氏、「伊藤氏から、サービスリリース後に紙での学習の価値についてエビデンスがあることを教えてもらった」と峰嶋氏。伊藤氏は「デジタルでは拾い読みをしがちで、読解力を鍛えるには紙のほうが有効。国の施策はどうするのか、塾はどうすべきかなど、教育に関わる方々と話してみたい」とした。
最後は峰嶋氏から、「塾の存在価値を高めるためには?」という本セミナーの本質的な問いがあらためて投げかけられた。江藤氏は「かかわるすべての人が、一歩踏み出す勇気をもらえる、可能性を広げられる、そんなきっかけづくりの場であることが塾の価値なのではないか」と回答。伊藤氏は「世の中はものすごいスピードで変化しており、保護者の経験や常識は一部では通用しなくなっている。そうしたなか塾には、エビデンスに基づく正しい情報を提供し、信念をもって指導にあたることが、これからの時代はより求められるだろう」と締めくくり、セミナーは幕を閉じた。なお、視聴者アンケートの満足度は非常に高く、「生徒・保護者にも伝えていきたい」「家庭の変化に伴い塾も変化をしなければならないことがよくわかった」といった声が多く寄せられた。