教育コーチングをベースとしたアクティブラーニング実践フォーラム2017 -主体的・対話的で深い学びのために何を手放し、何を大事にするか-
11月4日(土)、5日(日)の2日間にわたって、一般社団法人日本青少年育成協会(増澤空会長、東京都新宿区)主催「教育コーチングをベースとしたアクティブラーニング実践フォーラム2017」が京都大学にて開催された。1日目は「第7回日本教育コーチング大賞」の実践成果発表と審査、表彰式などが開催され、2日目は全体ワークや分科会ワークなどが行われ、参加者たちはアクティブラーニング(AL)について実践的に学んだ。
[1日目11月4日]
第7回日本教育コーチング大賞(敬称略)
日本教育コーチング大賞:三木慎也(木村塾 甲東園校/(株)ヒューマレッジ)
審査員長特別賞:高野貴亜紀(栃木県日光市立 落合中学校)
優秀賞:飯田千晴(ゴールフリー 草津教室/(株)成基)
優秀賞:松田直己(東進衛星予備校 旭川駅前校/(株)れんせい)
金賞:髙山彩子(山形県) 田中由紀子(千葉県) 宇野水樹(兵庫県)
山内一明(兵庫県) 三好寿賀子(広島県)
日本教育コーチング大賞に輝いたのは、木村塾甲東園校の三木慎也先生
1日目(11月4日)は、(一社)日本青少年育成協会(日青協)の増澤空会長の開会挨拶から始まった。「コーチングとは、教えるのではなく引き出すこと。コーチングとアクティブラーニングが今後の教師のあり方なのではないかと最近特に感じております。今日と明日、深く学んで現場で活かしていただきたい」と語った。
教育コーチングA級トレーナーの峯下隆志氏がルール説明をし、第7回日本教育コーチング大賞の優秀賞4名による実践成果発表と審査、そして金賞受賞者が紹介された。
三木慎也コーチ(木村塾 甲東園校)は、勉強することが嫌いで楽な方に逃げ続けていたクライアントが、自分と向き合い、人生を貫く本気のBeing(あり方)を明確にし、Beingから生まれるDoingの連続が、クラスの全体の姿勢を変え、クラスの平均点(5科目)113点アップを引き出した経緯をプレゼンした。
飯田千晴コーチ(ゴールフリー草津教室)は、中3の最初の模試で英語が16点だったクライアントが、飯田コーチの関わりにより「英語が好きだからもっと学びたい」と言うようになり、志望校を自ら設定し、今は高校の英語の専門学科で学んでいる。クライアントの心に火を灯した飯田コーチの関わりを伝えた。
高野貴亜紀コーチ(栃木県日光市立落合中学校)は、教育コーチングを活用し、学級のリーダーが「執者」として育つために支援し、学級全体に「執」の認識が高まっていったその具体的実践とその成果を伝えた。
松田直己コーチ(東進衛星予備校旭川校)は、当日参加できなかったため、映像でのプレゼン発表となった。教育コーチングを家庭で実践した結果、娘さんたちの行動が変わり、奥様の表情も変わったとのことで、その実践と成果を伝えた。
その後、特別ゲストである青沼敦子さんが登壇し、20分ほど話をした。青沼さんは「助けて! きわめびと」(NHK総合)に出演。番組内で教育コーチングを知ることにより親子関係がよりよいものとなられた話があった。
続いて、日青協主席研究員で(株)対話教育研究所代表の小山英樹氏による「〝主体性を持たせる〟が主体性を奪う」と題する特別講演が行われた。「主体性」をキーワードに講演と熱いディスカッションが繰り広げられた。
この日の最後は、日本教育コーチング大賞表彰式。日本教育コーチング大賞には三木慎也コーチが輝き、高野貴亜紀コーチは審査員長特別賞を受賞した。日青協副会長・教育コーチング認定協議会の木村吉宏議長は総評として、「我々のスタッフながら、三木コーチのプレゼンには感動しました。一人の女の子の変化がクラス全体に波及したことがよかったと思います。また、高野コーチが審査員長特別賞に輝いたのも、同じくクラス全体が変わったことです。最初は一人でも、それが何千人、何万人の変化につながるかもしれないと、職場に帰ってお伝えいただきたいと思います」と締めくくった。
[2日目11月5日]
Googleフォームで参加者の意見を可視化して深い学びの場に
2日目(11月5日)はオープニングアクティビティで幕を開けた。京都大学の溝上慎一教授が、AL型授業の実践について2つの問題提起を場に投げかけた。それを受けて参加者はグループワークで自分の意見を深めた後、「Googleフォーム」を使って入力し、前方のスクリーンに映し出して共有を行った。入力画面にアクセスするためのQRコードや、自分が入力した言葉がスクリーンに大きく映し出される様子は、多くの参加者にとって印象的だったようだ。
溝上教授からの問題提起は、「AL型授業の前提」についてと、「グループワークに参加しない生徒がいたらどうするか」というものだった。
教員がワークの指示を出している間に後ろを向いている生徒。発表が聞き取れないほど声の小さい生徒。こういった課題をクリアした上で学習活動が展開していくと、もっと深い学びにつながっていく。
参加者からは、座席配置の工夫や、活動目的の共有といった意見が書き込まれ、溝上教授がそれを受けてコメントを返していくことでさらに議論が深まった。
また、溝上教授から重要な指摘があった。「こういう生徒は個性であり、テストでは点数が取れているので、無理させないであげたい」と言われたことがあるが、社会に出てから苦労することは目に見えている。何のために教育や授業が存在するのかを踏まえた対応をする必要がある。
AL実践者の映像 ニーズに合わせた4つの分科会
続く全体ワークでは、同協会・主席研究員の小山英樹氏のリードで、前日の日本教育コーチング大賞を振り返る動画や、全国のAL実践者8名を取材した授業風景やインタビューの動画を用いて学びを共有し合った。AL授業実践の動画は、同協会ホームページにアップロードされており、授業改善に役立つ。関係する方は必ず見ておきたい(欄外QRコードからアクセス可)。
昼食を挟んだ後は、4つの分科会。「ALの基礎」「ALの応用」「ALを支える教育コーチング」「ALとカリキュラムマネジメントの連動」と、参加者が自らの立場や実践の度合いにマッチした内容を選べるようになっていた。いずれの分科会も同協会の教育コーチング認定トレーナーが講師を担当し、まさに主体的・対話的で深い学びの場となった。
鈴木建生氏グループワーク、千々布敏弥氏からの総括
そして、最後は同協会のアクティブラーニング実践講座でもメイントレーナーを務めるユマニテク短期大学の鈴木建生副学長による話題提供を受けてのグループワーク。
次期学習指導要領のポイントや、AL技法だけでなくそれを支える教員のあり方の重要性などが、鈴木氏の高校での教員生活・組織改革の経験をふんだんに交えながら語られた。日常的キャリア教育としてのALや、カリキュラムマネジメント、内省力といった、ALに関連する様々なキーワードが扱われ、参加者はグループワークを通して理解を深めていった。
最後には、国立教育政策研究所の千々布敏弥総括研究官から、本フォーラム全体の振り返り。フォーラム自体が、アクティブラーニング的であったことや、各教育機関や教育界の変革リーダーの重要性が述べられた。
本フォーラムに参加した全国の教育関係者が、自らのフィールドで変革を担っていくことが期待される。来年度も秋に開催が予定されているという。
教育コーチングのスキルとセンスを磨きたい人には同協会の認定講座「教育コーチ養成講座・検定」、より確かなAL実践力を身につけたい人には、「アクティブラーニング実践講座」がお勧め。本フォーラムでも登壇したトレーナーのもと、少人数で密に学べる講座として全国で開講している。
●お問い合わせ先
TEL.075-258-8828 または「教育コーチング」で検索