母親が知らないとツライ
「女の子」の育て方
江藤真規 著 秀和システム 刊 1,404円(税込)
このたび、株式会社秀和システムより、『母親が知らないとツライ「女の子」の育て方』を出版させていただきました。この書籍は、ベストセラーとなった『母親が知らないとヤバイ「男の子」の育て方』(柳沢幸雄著)に対する「娘育て」版として、執筆させていただいた書籍です。
家族構造が変化し、教育が急速な変容を遂げる中、今ドキの保護者の子育て観にも変化が表れてきています。子どもたちの将来の夢は変わり、学習スタイルや子どもと過ごす時間の長さ、中身も変わってきました。学校教育と民間教育という、当たり前とされていた役割分担にさえ、今後構造的な変化が起きる可能性もあるとされており、子どもを育む大人には、常に「何が子どもたちのために正しい選択なのか」、「どうすれば、より一層幸せな未来社会が構築できるのか」と考えていく姿勢が求められるようになりました。
教育をマクロで捉えると、このようなダイナミックな転換期にあることが見えてくるのですが、個々の家庭における日々の子育て、つまり教育をミクロの視点で捉えてみると、実はそこには「以前から何も変わらない子育ての難しさ」もあることが分かります。そして、その難しさ、特に精神的難しさは、子どもの思春期の頃ピークを迎えます。親は、夜更かしを重ねる子どもにイライラし、どれだけ言ってもゲームをし続ける子どもに大声を出して怒ってしまいます。外見を気にして過度なダイエットに走る娘とは、バトルを繰り返してしまいます。求めてもいないのに、「正しいとされる子育て論」が一方的にスマホに送られてくる時代ゆえ、親は怒ってしまう自分に対して自己嫌悪に陥ってしまいます。
本書では、大きな社会変容のうねりの中にある、思春期という難しい時期の子育てに着目し、さらには「母―娘」という同性同士の難しい関係性に焦点を当て、今どきの家庭教育論をまとめさせていただきました。
母親にとっての「男の子育て」には、「男の子は宇宙人、分からなくても当然」という前提があります。しかし、「女の子育て」には、むしろ「分かって当然」という前提があり、さらには、自分が通ってきた道ゆえに、「同じ失敗はさせたくない」、「私が叶えることができなかった夢を叶えさせたい」と、自分と同一視をしてしまいがちな傾向があります。一見仲良しに見える母娘関係にも、実は根深い難しさがあったりするものです。
また、思春期の女の子とは、子どもでありつつ、社会からは大人として見られる時期であり、周囲からのサポートを必要とします。地域社会の目がなくなった現在、我が娘は親が自分で守らなければならないことも事実です。
本書では、筆者が10 年にわたり主宰してきた、子育てコーチングスクール「マザーカレッジ」を通して見えてきた「母親にとっての娘育ての課題」を、学習面、生活面、異性との交際面というカテゴリーに分け、母親はどのように娘に関わったらよいのかの解説をいたしました。子育てには、「〇〇をすれば□□になる」という直線的なものの見方はできず、重層的な子どもとの関わりを通して、子どもは成長していきます。しかし、子育ての壁を超えるためには、他者からのヒンBookトやアドバイスが必要でもあり、本書では思春期の子育てにありがちな具体的な課題事例に対して、ヒントとなる考え方を述べさせていただきました。
家庭の中にある混沌とした親子関係に、もっとも近く、もっとも支援的な存在であるのが学習塾と感じます。拙書となりますが、ご一読をくださりご意見、今後の家庭教育に対するご要望等を伺えますと幸いに存じます。(江藤 真規)
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なお、『母親が知らないとヤバイ「男の子」の育て方』の著者は、開成中学校・高等学校校長の柳沢幸雄先生です。『塾と教育』5月号では、柳沢先生との筆者の対談記事を掲載いただく運びとなりました。「男の子育て×女の子育て」「学校教育×家庭教育」から何が生まれるか…、ご期待ください。