知識・技能・教養を育む
リベラルアーツ
公立高校社会科入試問題から読み解く社会の姿
小宮山博仁 著 明石書店 刊
2,750円(税込)
現在の社会の姿を読み解こうとしている本で、読み解くための素材は公立高校社会科の入試問題となっています。はしがきの冒頭は、次のような文言になっています。
「世間で教養人と思われている市民が身につけているリベラルアーツを詳しく調べて解説している本ではありません。選挙権を持っているまじめな市民の方に読んでいただきたい本です。世の中の動きに関心を持っている高校生や、大学生も、もちろんウェルカムです。」
この本には、世の中のしくみを知るための78 のヒントが、「ぎゅっと」つまっています。
社会に出てからも役立つ能力とはどのようなものなのか、1章から6 章で具体的に示しています。身近な問題から歴史や文化、そしてグローバルなテーマまで、「教養」の基礎となる知識を、高校の社会科の入試問題を取り上げながら、ていねいに解説しています。庶民のための「世の中を知る学び」のあり方を模索している本と言ってもよいかもしれません。序章から終章まで全部で8 章で構成されています。次に各章の見出しと78 のヒントの内容を示しておきます。
<内容構成>
序章 世の中で求められている能力と知恵
日本の現状を考える/ 戦後の教育の成功と失敗/OECD のPISAって何? /2024 年以降の教育はどうなっていくのか/ 中学の主要教科と受験
第1章 日本の生活と文化
伝統工芸品/ 都市と農村の人口問題/ 食生活の変化/ 稲作を考える/ 日本の農業を考える/ 大都市の市街地化/ 地産地消のエコな社会/ 万葉集と日本の文化/ 都市の人口増加
第2章 日本の歴史を知り今を知る
江戸時代の蘭学とは? / 大正時代の日本経済/ 江戸時代は旅する人がふえた/ 日本の昭和初期の財政/ 鎌倉幕府と元軍/ 日清戦争/ 明治・大正の政治/ 朝鮮戦争と日本の復興/ 経済発展と都市と農村の格差
第3章 今の日本の経済を知る
〜もの作りと消費の関係〜
クレジットカードのしくみ/ 製造物責任法/ 金融政策/ 経済と環境/ 国債の問題点/ 国債と景気対策/ 出版・印刷業と文化の関係/ 日本の産業構造/ 日本の終身雇用を考える/ 価格と景気/ 経済発展と乗用車/ 食料生産とエネルギー問題/ 日本の農業の実態/ 株の公開とMBO/ 石油ショック時の日本経済/ バーコード・POS システム
第4章 日本の政治を知る
〜住みやすい社会をつくる〜
日本国憲法/ 民主主義を考える/ 三権分立/ 議院内閣制を考える/ 明治・大正時代の選挙制度/ 現在の選挙制度を考える/ 二院制の利点/ 選挙と政治参加の歴史/ 社会保障制度/ 消費者の保護/ 地域の政治/ 労働者の働き方改革/ 女性の労働力率/ 非正規労働者/ 日本の雇用の問題点
第5章 未来の社会を考える
〜持続可能な社会って何?〜
バイオ燃料/ 日本の貿易相手国の変化/ 世界の食料問題/世界のコメと小麦の生産/ 世界の大豆の生産/ 発展途上の国ブラジル/ 各国の気候/ 持続可能な社会/ 気候変動/フェアトレードのチョコレート
第6章 地球規模の話
〜グローバル化した社会を知ろう〜
アメリカ合衆国の農業/ アメリカ合衆国の酪農/ アメリカ合衆国の交通/ アメリカ合衆国の貿易/ アメリカ合衆国の外国人労働者/ 日本と欧米諸国の経済発展史/ 世界恐慌時のイギリス経済/ 世界の人口問題/ 国際社会/ 日本と中国の経済を比べる/ 各国のワーク・ライフ・バランス/ 為替と観光/ 観光とGDP/EU と関税/ オーストラリアの貿易/ インドの援助/APEC を知る/ ナイジェリアの原油/ 南アメリカの国を考える
終章 豊かな人生を育むリベラルアーツとは
従来のリベラルアーツを考える/ 今なぜ庶民のリベラルアーツなのか/ 何が庶民のリベラルアーツなのか/ 庶民のリベラルアーツのふやし方/ 庶民のリベラルアーツと学び方の関係/ 補論1:庶民のリベラルアーツと関連する情報収集の方法/ 補論2:紅茶と砂糖で社会を読み解く〜フカボリの一例〜/ 補論3:文化資本の相互提供とシェアリング
(小宮山博仁 記)