「駒込中学・高等学校」躍進の原風景
「心ある私学」は「私塾精神」を手放さない!
校門を一歩入ると驚かされる。『ワー、キレイ!』と思わずため息が漏れる。満開の花一色の8メートル道路が迎えてくれるからである。花の季節はもちろん真冬にしてもそうなのである。「私どものおもてなしです」と職員の方がにこやかに応対してくれる。受付におもてなしのある学校なのである。まさに「私塾精神」が息づく学校である。
外壁には音美書体の全国大会や都大会での優勝・入賞の垂れ幕が下がり、道行く人々に学校の活躍状況を鮮やかに告知している。校内に一歩踏み込むと、優勝トロフィーや賞状や作品群が所狭しと飾られ、応接室への廊下に入ると掲示板に東大理Ⅰ合格を始め躍進著しい進路実績がきちんと表示されている。心憎いばかりの演出である。
受験生親子が駒込に行って来ると必ず「受験します」と塾に報告すると云う謎が解ける。すれ違う生徒はもちろん、気付いた生徒は廊下の向こう側からでも皆気持ちよく挨拶をしてくれる。普段着のままのにこやかな挨拶である。挨拶があたりまえ感覚でできる人間関係が成立している学校なのである。イジメの無い学校という「安心安全を保護者に届ける」という窓際サービスを生徒自身が証明している学校である。何よりも生徒の瞳が輝いているのが良い。管理主義とは正反対の心の開かれた教育指導が垣間見える瞬間である。
駒込人気の原点を取材した。
東大合格! しかし目立たぬように!
駒込学園は今年「東大大学院」や「東大理Ⅰ」や「国際教養大」や「東工大」始め早慶上理・GMARCHに三桁の進学実績を出している。数年前までは専門学校と中堅私大の定番校であった駒込がどのような改革手法で一気に伸びたのか河合孝允校長に尋ねた。しかし、返って来た回答は以下のごとく意外なものであった。
河合校長談:「本校は目立たぬようにしています。日本社会はアメリカンドリームの世界とは正反対です。日本では隣人の成功は賞賛のマトではなくジェラシーの対象となる社会です。したがって、成功の秘訣は目立たないように謙虚に過ごすことだと理解しています。
学校改革は氷山と同じで水面下8割の見えないところの改革です。目立つ2割の宣伝競争に明け暮れる前に、目に見えない8割の本質改革に全力投球すべきです。「鉄は熱いうちに打て!」と言われます。生徒も同じです。夜間30キロ回峰行という比叡山研修を高1入学直後に導入しているのも柔軟性のあるうちに行う自身への「気づき教育」です。生徒が変われば教員は変わります。変われない教員は生徒に見捨てられます。それは本校が実施している全生徒による「授業評価アンケート」に顕著に出て来ます。満足度を縦軸に、達成度を横軸にして両者8割を得ることのできない授業は失格となります。教員室の机配置は教科型にしています。毎時間リアルタイムで、教科主任がシラバスに基づく授業進度の点検を行っています。
教員集団はある種の職人集団です。自己責任に基づく自己決定権を大幅に付与した方がその才能意欲を大きく引き出せるものです。併せて、受益者側である生徒による授業評価をきちんと加味して、両者を円滑にマネジメントして行ける中間管理職者の養成を図ることが喫緊の課題です。
改革が氷山の上に現れビジュアル化した時、生徒の瞳の輝きとなり花畑となります。本校教員は夜間コースがあるかのごとく、夜の九時・十時まで生徒指導を「1人塾長気分」で無償でやっています。高3担当ともなれば夏休み四十五日無報酬で受験指導をしています。ご褒美に自習室を新築してプレゼントしてあげました。「蛍の光窓の雪」の自習室です。「勉学の意欲」という本質は眼には見えません。しかし、それを校風にまで作り上げること、それが、本校の学校改革の本姿なのです。
― 駒込の学校改革は生徒集めの単なる手法論議の改革ではなく、学校創りという本質論議の学校改革であることが見て取れた取材であった。塾も学ぶべき視点である。 ―
- 駒込中学・高等学校
- 所在地:東京都文京区千駄木5-6-25
Tel:03-3828-4141
交通:東京メトロ南北線「本駒込駅」から徒歩5分
東京メトロ千代田線「千駄木駅」から徒歩7分
都営三田線 「白山駅」から徒歩7分
都バス(草63)「駒込千駄木町」下車(正門前)