私学の挑戦
東京都市大学塩尻高等学校
21世紀を担う子どもたちに「創造」と「品格」を育みたい
21 世紀を担う今の子どもたちに必要なものは何か? 多くの塾と同様に、私学もその答えを模索している。長野県 で半世紀以上の歴史を歩んできた東京都市大学塩尻高校が 提言するのは「Creation&Dignity(創造と品格)」 だ。同校は新たな教育理念・教育目標・教育システムのもと、 来春「 21 世紀型の全く新しい高校」へと生まれ変わろうとし ている。同校の赤羽利文校長に話を聞いた。
【学習塾対象 学校改革コンセプト説明会の様子】
新しい時代を切り拓く若者としての「品格」を
「Creation&Dignity―創造と品格―グローバルリーダーの育成」。これが同校の新しい教育理念である。
「本校では、21世紀型の学校づくりに向けて、新しい文化の創造や社会の変革を担える人材、国際社会に貢献できる人材の育成をめざします。
これからの子どもたちには、自らすすんで何かを創造していく力や姿勢が必要だと思います。
その源となるのが品格や、明るさや希望に満ちた心の豊かさではないでしょうか。
本校では新しい時代を切り拓く若者としての誇りを持ち、その責務を果たそうとする努力の中で品格を養いたいと考えています。
たとえば、世界中を見渡せば、貧困や紛争などで苦しんでいる人たちがたくさんいます。その人たちを助けたいという強い気持ちが芽生えれば、今の自分に何が必要かを思い巡らすようになるでしょう。
まず、国際語である英語の力が要求されることに気づくはずです。世界の歴史や政治や経済のしくみの知識も同じです。優秀な教授陣が揃った大学で学ぶことが得策であることも分かってくるでしょう」
周囲の大人たちに「勉強しなさい」「勉強するのは自分のためだ」と強制されても学ぶ意欲は湧きにくい。しかし、気高い目標や使命感を抱いていれば、自ずと勉強しようという気概が満ちてくるはずだと赤羽校長は力説する。
【中庭から新校舎を望むイメージ図】
キャリア教育に力を注ぎ、「創造」できる人材を育成
「他にも新しい社会に向け、研究や開発、教育、芸術、スポーツを始めとする分野で、今の若者が果たせる責務はたくさんあります。
こうした夢に向かって、『一生懸命に取り組んでいるんだ』と胸を張っていえるような高校生を育てることが今後の本校の目標です。本校から未来のグローバルリーダーが次々と生まれることを願っています」
そのための教育として、同校では「10年後の自分を考えるキャリア教育」に力を注ごうとしている。社会の中で「品格」を保ちながら積極的に世の中に働きかけ、あらゆる場面で「創造」できる人材の育成をめざすのだ。
キャリア教育を支える3つの観点は「人間力の育成」「キャリア理解とキャリア設計」「キャリア形成を支える学力の獲得」。ここから生徒一人ひとりが自己実現できるように3年間のプログラムが組まれているという。
1年次の目標は「社会のしくみを理解し、主体的な学びの動機づけをする」。フレッシュマンキャンプや適性検査、社会のしくみ調べなどが用意されている。
2年次の目標は「キャリアを理解し、将来に向けた学びを積む」。大学模擬授業やキャリア研修旅行などが行われる予定だ。
3年次の目標は「生徒一人ひとりの進路実現へのきめ細かな支援」。講座別学習や志望理由書対策講座を実施していく。この体系的なプログラムによって「品格」と「創造」を兼ね備えた人材を育成していきたいと意気込みを語る。
コミュニケーション能力や最後までやり抜く精神力も
核家族化が進み、人間関係が希薄になっている今だからこそ、子どもたちには他の仲間たちと協力して何かを創造する力も必要だと赤羽校長は指摘する。そこで、同校は行事や部活動を始めとする特別活動を今まで以上に大切にしようとしている。
「チームワークで困難を乗り越えて成功した時の充実感や達成感は格別です。それらを分かち合って初めて仲間の大切さを知ることができるのです。
濃密な人間関係の中でコミュニケーション能力を身につけ、何があっても最後までやり抜く強靭な精神力を培いたいと考えています」
全員が一人一役で取り組む中で同校の一員であることを自覚する「文化祭」、生徒が一丸となって運営することで企画力と創造力を養う「体育祭」、スピーチやディベートなどで知を競い合う「文化系コンクール」や「テーマ研究発表会」…。
新たな友を得、支え合い協力し合うことの大切さを実感できる多彩な行事を用意していくという。同校で学ぶ喜びを味わい、誇りを持って学校生活を送れる生徒を育成することがねらいだ。
他のクラブの部員たちも『僕たちも力と心をひとつにすれば、絶対に勝てる!』という気持ちで一人ひとりが具体的な目標を持ち、気力・体力・積極性を養いながら活動に励んでほしいと考えています。こうした姿勢が『創造』や『品格』を必ず生み出すはずです」
(次号に続く)