著作権を考える
第2回 著作権に与えられた諸権利
事前の『利用許諾』がなければ使えない
みなさんこんにちは。株式会社ブルームーンの阿南です。著作権を考える連載の第2回です。前回は、塾・予備校で教材としてみなさんが他人の著作物を利用したいと思った場合に、どのような処理・手続を行わなければならないかの一端を一緒に考えました。結論としては、『他人の著作物(小説・論文・評論・詩など)は無断では使えない』ということでした。著作者本人はもちろんのこと、場合によってはその作品を出版している出版社の双方に利用許諾申請を行い、事前に『権利者』から『利用許諾』を得なければなりません。したがって、事前に『利用許諾』を得ることができなかった場合には、どんなに素晴らしい作品で、是非とも生徒に教材として学習させたいと熱望しても、その作品を利用することはできません。 なぜそのような手続きが必要となるのか。そこで、今回と次回の2回にわたり、財産権という 観点から『著作権』を考えてみたいと思います。
塾・予備校にとって、教材として他人の著作物を利用しようとする場合に、気をつけなければならないのは、『著作財産権』の中の複製権、出版権、公衆送信権(インターネット、LAN、放送など)でしょう。また、著作者の立場から見た場合には、『著作者人格権』も重要です。なぜなら、著作権法(以下、「法」)が求める手続きを経ずに、つまり著作者に無断で著作物を利用してしまった場合に、その著作者は『著作権』に基くづことは言うまでもなく『著作者人格権』を根拠に、みなさんに対しその教材の『利用差し止め』や、『損害賠償』を請求することができるからです。著作者人格権という権利を侵害された『著作者』が、その損害に対して金銭的な賠償請求を行なえることになります。著作権は著作物が流通することで発生する財産権に関する権利、また著作者人格権は著作者の名誉に関する権利と言えます。
『著作物』のいろいろ
そもそも法はどのようなものを『著作物』と規定しているのでしょうか。この点を明確に認識していないと、利用しようとしている対象が法の求める適切な手続きを経なければならないかどうかがわかりません。場合によっては、慎重になり過ぎて法が保護対象としている著作物でないにもかかわらず、利用を差し控えてしまうという結果を招きかねません。利用する側(塾・予備校)におけるそのような萎縮行為は、法を定めた趣旨である『文化の発展に寄与する』という目的に反することにもなってしまいます。法が保護対象としている著作物の中で、みなさんが利用する可能性が高いのが①言語(小説、論文など)、⑥地図又は図形、⑧写真ではないでしょうか。逆に、法令や判決などは法が保護対象としていない著作物であり、官庁が発行する「白書」もそのような著作物になります。
『古典作品』は法が保護対象とする著作物か(著作権存続期間)
法が保護対象とする著作物がどのようなものであるかがお分かりになったでしょう。それでは、『源氏物語』や『徒然草』のような『古典作品』は、法が保護対象とする著作物なのでしょうか。つまり、その様な作品を塾・予備校で教材として利用しようとした場合、事前に『利用許諾』を取らなければならないのでしょうか。結論からいえば、必要ありません。これは、「著作権の存続期間」と関係があります。法によれば、著作権の存続期間は著作物の創作のときから著作者の『死後50年間』となっています(映画については公表後70年)。したがって、数百年も前に書かれた『古典作品』は作者の死後50年以上経過しているので、法が定める手続は必要ありません。ただし、利用しようとする古典作品が掲載されている書籍の出版社との関係では、その出版社に対し事前に『利用許諾』を取らなければならないこともあります。また、現代語訳を掲載する場合にも、ご自身で現代語訳を考えた場合を除き、現代語訳者に対しても事前に『利用許諾』を取らなければなりません。なぜならば、現代語訳は翻訳者の著作物(翻訳者の思想又は感情を創作的に表現しているもの)だからです。今回は、法が保護している『著作物とは何か』、『著作者、著作権者に認められる権利とは何か』について、概観的に見てみました。いかがでしたか。次回は、『事前許諾』がなぜ必要であるかについて、『著作権者の権利』の観点から一緒に考えてみましょう。
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