公益社団法人 全国学習塾協会からの発信 第6回 安心塾バイト認証の近況と労働環境の変化
現在50社712事業所が認証を取得
当協会の公益目的事業(不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与する事業)である安心塾バイト認証制度は、その名の通り「安心してアルバイトできる学習塾を認証する制度」です。
昨年3月の認証塾の誕生から1年4か月が経過し、個人塾から大規模塾まで幅広く導入され、現在50社712事業所が認証塾となっています。
認証を取得した学習塾では、人材獲得に効果があり、採用コストの減少などの経営的メリットがあったことや教室管理者を含め、従業員の労務に対する意思統一を全社的に図ることができたといったお声をいただいています。
先般、一部の関係省庁に先述の好事例や近況のご報告を行い、他の業界にはない継続した労働環境改善の取り組みとして高い評価を得ました。またアルバイト講師の多くが大学生であることから、大学方面にも広報活動を行い、制度にご賛同いただき、普及にご協力いただいています。
学習塾が教育産業として、これまで我が国の経済発展を支えてきたというのは紛れもない事実ですが、制約のない代わりに保護もないという経営環境の下での学習塾には、改善の余地も多く、社会的に適切な評価を得ているとは言い切れない側面を有することも確かです。
アルバイト講師の労働環境においても、厚労省の調査結果によると、学習塾では、授業の準備や片付け時間に対する賃金の未払い等、法令に違反している恐れが高いことも指摘されております。
さらに、労働基準監督署から指導を受けるまでは改善が図られないケースもあり、業界として潜在的なリスクと並走している状態であることも事実です。
学習塾の継続と発展に寄与する「安心塾バイト認証」
大前提として、学習塾に限らず、コンプライアンスに議論の余地はありません。
法令は遵守するしかないのです。適正な労働環境で労務管理を行っている学習塾もありますが、そうでない学習塾が蔓延すると、「学習塾業界」は法令が遵守されていないと見られてしまい、当然のように人材不足に陥ります。
学習塾における従業者のうち、非正規労働者は68・2%もおり、対個人サービスとしては3番目に多い業種です。
アルバイト講師が確保できないということは業界の衰退を意味することになります。さらに労働環境の良し悪しは、アルバイトだけでなく正社員の獲得にも影響を及ぼすことは言うまでもありません。
アルバイト講師が「ここで長く働きたい」と思える学習塾では勤務期間が長い傾向があり、いわゆるアルバイトが定着しづらい学習塾とでは、採用コストという経営面でも大きな差が生じます。
普遍的な解決策としてすぐできることのひとつは、労働環境の確認と見直しです。改善項目がある場合は、整備に取り組むことが必要です。当協会には厚労省と文科省が連携して要請した21の自主点検項目について、適切に整備するための参考様式や現状の確認から整備に至るまでのご相談にも対応しておりますのでぜひご活用ください。
また、労働環境については、実際に働いてみなければわからないというアルバイト講師からの意もあるので、適法性の証明や目印として「安心塾バイト認証マーク」を掲げていただくことも有用だと考えます。大学が学生にアルバイトを紹介する際に、「安心塾バイト認証」の有無を判断基準にしているというケースも増えつつあります。
今後も多くの学習塾が認証を掲げることで、「学習塾業界」としての取り組みを世の中にアピールし、業界のイメージ回復
につなげたいと考えています。
労基署業務の民間委託と最低賃金改定
昨今、働き方改革と叫ばれて久しいですが、私たち学習塾に関係する動きとして、7月には労働基準監督署の業務の一部が弁護士、社会保険労務士等の民間に委託されたことや、10月の最低賃金の改定が挙げられます。最低賃金については、政府は全国平均で時給1000円を目標としており、現在の年3%の引き上げペースですと、2023年に到達する見込みです。
かつて、塾講師アルバイトは比較的時給の高いアルバイトというイメージがありましたが、最低賃金の引き上げと共に、時
給額では他業種と差別化を図ることができない状況になりつつあります。
このように学習塾を取り巻く環境はつねに変化し続けており、時代の要請に適切に対処していくことが求められています。
お問い合わせ
公益社団法人 全国学習塾協会
http://www.jja.or.jp TEL.03-6915-2293