(一社)日本青少年育成協会
教育コーチングをベースとした「アクティブラーニング実践フォーラム2018」
〜より以上を目指す学びのポータルサイトとして〜
10月7日(日)・8日(月・祝)の2日間にわたって、一般社団法人日本青少年育成協会(日青協)による「アクティブラーニング実践フォーラム2018」が京都大学の芝蘭会館稲盛ホール等で盛大に開催された。2日間の延べ参加者は485名。1日目は「より以上の組織づくりのために」、2日目は「より以上の教育実践のために」がコンセプト。
第8回日本教育コーチング大賞の優秀賞受賞者4組による実践成果プレゼンテーション、その大賞の発表と表彰式のほか、基調講演や特別講演、リフレクションワークなどが行われた。
■1日目 10月7日(日)
真剣に取り組む必要がある「アクティブラーニング」
7日(日)の冒頭、小山英樹氏(日青協主席研究員)による開会宣言でフォーラムは幕を開け、増澤空氏(日青協会長)が開会の挨拶。
「弊社でもアクティブラーニングをやっていますが、つくづく思うことは、教師たちがどこまでその本質を理解しているのかということです。昨年溝上先生がおっしゃったことで印象的だったのは〝アクティブラーニングごっこをやってはいけない〟という言葉です。〝ごっこ〟にならないよう、私も真剣に取り組む所存です」。
続いて、「アクティブラーニングと対話的な学び〜フレームの発展を目指して〜」と題する基調講演を溝上慎一氏(学校法人桐蔭学園 理事長代理・桐蔭学園 トランジションセンター所長・教授)が行った。
アクティブラーニングとは、講義一辺倒の授業を脱却するという文脈の中で、「聴く」という受動的な学習を乗り越えて、学習者自身の活動(書く・話す・発表するなど)を創り出す学習のことをいう。そのアクティブラーニングや主体的協同的深い学びにおいて、「内化」あるいは「外化」は極めて重要とのこと。
「内化・外化は、一般的にはインプット・アウトプットとほぼ同じ意味で用いられています。外化というのは、書く・話す・発表するなどの活動を通して、知識の理解や頭の中で思考したことなど(認知プロセス)を表現することです。可視化(見える化)とも呼ばれています。言い換えると外化とは、頭の中にあるものを出して、自分で筋をつくることです」
さらに対話を通して自己と他者のズレを認識し、その差異を自分の中で整理し、構造化し、秩序をつくっていく必要があると溝上氏は述べる。そしてそのプロセスを外化する行為が、書く・話す・発表するなどの活動だという。ちなみに他者とは、必ずしも他人ではなく自分の中にあるAとBの差異でも構わないとのことだ。
第8回日本教育コーチング大賞、
今年も木村塾の古川晃嗣氏が受賞
基調講演のあとは、第8回日本教育コーチング大賞の優秀賞受賞者4組による実践成果プレゼンテーションが行われた。優秀賞の高野貴亜紀氏(栃木県日光市立中学校教諭)、古川晃嗣氏(㈱ヒューマレッジ 木村塾・小・中学部 本部長)、鶴岡靖子氏(100(まんてん)トラスト越谷本部校 塾長)、直江鉄平氏(長野県私立小学校教諭)がそれぞれプレゼンテーションを行い、来場者は隣席者と学びを分かち合い、投票を行った。
来場者全員による審査によって「大賞」が選ばれることになっている。
その後は「学校&塾経営シンポジウム」。教育コーチングをベースとした先進実践校5校の実践発表が行われた。清教学園中・高等学校(大阪府 私立学校)の慎繁範 教諭、広島城北中・高等学校(広島県 私立学校)の中川耕治 教頭、ナカジュク(埼玉県ほか 塾・通信制サポート校)の小野田光伸 副塾長、まなび舎(長崎県 塾・サポート校・発達支援)の梶原恵 代表、高崎健康福祉大学スケート部(群馬県 私立大学)の小林佳乃子コーチが先進的な取り組みを発表し、来場者からの質問にも丁寧に応えてくれた。
1日目の最後は、第8回日本教育コーチング大賞の表彰式。栄えある大賞に選ばれたのは、二度目となる古川晃嗣氏だ。日青協副会長で教育コーチング認定協議会議長の木村吉宏氏は、「高野先生は〝背中で語る人になろう〟というフレーズがすばらしく、鶴岡先生は〝『情熱大陸』に出る生徒をたくさん育成したい〟という夢がすばらしい。直江先生は淡々と物静かに語るその様子がかえって胸に響きました。大賞を獲得した古川は弊社のスタッフなので言いにくいのですが、斜めに構えていた生徒が変わり、クラス全体にいい影響を与え、クラス全体が変わったこと。さらにトップ校に合格するという見事な結果につながったこともよかったのだと思います」と総評を述べた。
■2日目 10月8日(月・祝)
2日目のオープニングは特別講演。
講師は香里ヌヴェール学院学院長の石川一郎氏だ。前職かえつ有明中・高等学校校長としての実績や著書『2020年の大学入試問題』等のインパクトから、参加者は期待に胸を膨らませたが、その期待を大きく上回る内容だった。
「予測不能な21世紀社会に対応した教育」…その難題に確かな指針が示された。
続いての全体会は、『日テレEdu.みんなのドラマ』の紹介。日本テレビが21世紀を見据えて開発した、学校授業用アクティブラーニング教材である。ドラマを視聴した子どもたちが対話を繰り返して納得解・最適解にたどり着くという基本構造。その先進性やコンセプトに、参加者も興味津々で聴き入っていた。
続いて行われたのは分科会。1日目、2日目午前の全体会で習得した知識に基づき、リアルにアクティブラーニングを体験し、学びを深める人気のプログラムだ。
今年度の分科会は次の6講座がラインナップされ、「あっという間に時間が過ぎた」「脳が汗をかいた」「明日からの授業に活かせるヒントにあふれていた」という受講者コメントに象徴されるような濃密な学びが行われた。
①知る・分かる・覚える力を育む…習得型授業・スタッフ育成(福本佳之氏・小澤珠美氏)
②使う・深める・生み出す力を育む…活用・探究型授業・プロジェクト活動(峯下隆志氏・梅本昌登氏)
③認めあう・高めあう・支えあう力を育む…クラス運営・組織運営(内藤睦夫氏・高野貴亜紀氏)
④挑む・繋がる・引っ張る力を育む…部活運営・リーダー育成(石田正寿氏・小林佳乃子氏)
⑤見据える・認める・切り拓く力を育む…キャリア教育・社会教育(鈴木建生氏・田畑和輝氏)
⑥やる気と能力を引き出し自立を支援する…教育相談・面談・対人支援(増田乃美氏・大澤一通氏)
締めくくりの特別講演は、国立教育政策研究所 総括研究官の千々布敏弥氏による「対話的な学びをつくるコーチング」。二日間、主体的・対話的な学びを重ねた参加者が、「対話」の重要性と方法を再認識するとともに、自信と勇気を高めることのできる愛に満ちた講演であった。
本フォーラムに参加した教育関係者が、2020年を見据え、より豊かな授業の開発・実践のリーダーとして活躍していくことが望まれる。当団体が年間8コース前後開催している「アクティブラーニング実践講座」も、その確かな一助となるであろう。
日本教育コーチング大賞(敬称略)
■大賞
古川晃嗣 ㈱ヒューマレッジ 木村塾・小・中学部 本部長
■審査員特別賞
橋本龍一 100(まんてん)トラスト越谷本部校 塾生
■優秀賞
高野貴亜紀 栃木県日光市立中学校教諭
鶴岡靖子 100(まんてん)トラスト越谷本部校 塾長
直江鉄平 長野県私立小学校教諭
教育コーチングのスキルとセンスを磨きたい人には同協会の認定講座「教育コーチ養成講座・検定」、より確かなAL実践力を身につけたい人には、「アクティブラーニング実践講座」がお勧め。本フォーラムでも登壇したトレーナーのもと、少人数で密に学べる講座として全国で開講している。
●お問い合わせ先
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