AJC(全国学習塾協同組合)森貞孝理事長の最新教育情報第17回
外国人のための日本語教育を
外国人の人材拡大が大きな話題になっている。今求人難で会社の経営に支障をきたしているところが多い。2018年9月の求人倍率は、なんと東京都では2.18倍となった。これでは中小企業では仕事にならない。学習塾でも講師募集にほとんど応募がない。金額を上げても反応がない。パートという面では、コンビニ・ファストフード・居酒屋・スーパーなどと競合し、人集めに必死だ。私の家の近くでもバスの車内吊りでパートを募集しているスーパーの広告あり、隣のスーパーでは入口のチラシが商品を押しのけてパート募集が半分以上を占めている。
先日KOTRA(韓国の対外貿易公社)の方が、「韓国で若者が職探しに懸命です。日本の学習塾で採用する可能性はないですか」と尋ねられた。教えられるとしたら英語かなと思ったが、正式に社員として雇用されるつもりで来られるにはハードルが高い。
また、国語や社会のような科目は、外国から来てもすぐに教えられるものではない。
今回の外国人人材の問題で分かるように、業種、枠を決めて自由に採用できるわけではない。保険や年金の問題も絡んで、それなりに法律の改正が行われることになる。
ところで、外国人の児童数はここ数年7万人前後で推移している。一方で日本語指導が必要な児童生徒数は年々増加し、この10年間でほぼ2倍近くの4万人弱に増えてきている。海外では、例えばアメリカやカナダなどでは、ESL(第二外国語としての英語)を指導するところが地域ごとに完備していて、無料で指導を受けられる。もちろん成人も対象だ。
今回の外国人材拡大に際して、日本語学校とは別に、そのようなシステムが日本にも必要ではないのか。外国人の研修生を受け入れている企業の経営者が、給与の問題よりも日本語での意思疎通が十分でなく、ノイローゼになって辞めていくケースもあると悩んでいる。
学習塾は今少子化で生徒減に悩んでいる。全国にしっかりした組織を持つ塾団体が一定のカリキュラムや指導方針を立てて、傘下の学習塾を組織化し、国が一定の費用を負担して無料で外国と同じようなJSL(第二外国語としての日本語)の指導をすることは出来ないだろうか。
せっかく優秀な人材が入ってきても、日本語の習得が十分でなく、孤独感を覚え、希望を失って帰国していくようなことになってはならない。
日本に来る外国人の総数は、平成30年には3000万人を超えたようだ。政府の目標は、当初オリンピックまでに2000万人ということだったが、あっという間に超えて、今目標を4000万人に変更しているが、十分達成しそうだ。フランスのパリの8000万人にはほど遠いものの、観光客や働く人材の増加により日本で急激に国際化が進んでいる。
日本語は難しい。しかし学習塾の教師の力で打開していくことは、夢ではないと思うのだが。