ビットキャンパス 謝恩プレミアムセミナー
「部下にはどんどん仕事を任せ、社長は新たな仕事をつくる」
「塾経営をスマートに」をキャッチコピーに塾経営支援システム「ビットキャンパス」を展開する株式会社ティエラコム(増澤空代表、兵庫県神戸市)は5月12日、導入塾向けのプレミアムセミナーをANAクラウンプラザホテル神戸にて開催した。
このセミナーは導入塾同士の情報交換や交流を目的とし毎年秋に開催されているもの。昨秋は台風に見舞われ延期になっていたが、今回ようやく開催の運びとなった。ここでは増澤代表の基調講演やゲスト講師による講演をご紹介する。
[基調講演]
株式会社ティエラコム 増澤空 代表取締役
人材難時代の今、人財をどう育てるか
基調講演では「人材難時代の今、人財をどう育てるか」をテーマに人財育成の具体的な方法について社内での実施例とその効果を紹介した。増澤代表は「人件費はコストではなく資産!」と言い切り、即戦力を求めるのではなく、生徒同様に自社でスタッフを育てていく重要性を説いた。
特に学生講師を中心としたアルバイトの扱いについて、正社員やアルバイトという雇用形態だけをみて仕事を分けるべきではないと強調した。事実、同社で授業料の未収ゼロを達成した職員は女性アルバイトであったし、昨年は合宿期間中の教室運営を学生アルバイトだけに任せ、十分にやっていけることが証明されたとのことだ。
「講師の能力が低い!」と嘆くのはうまく仕事を任せられていないからであって、アルバイト講師がリーダーになれるかどうかは上司の手腕にかかっている。「自分でやる方が早い」と何でも抱え込み、いつまでも同じ仕事を続ける社員がいては組織は硬直化してしまう。アルバイトを含め、部下にはどんどん仕事を任せ、さらには社長が新たな仕事をつくってくことで組織の新陳代謝が促されるという。職員を育てるための研修には授業の仕方、個別面談や説明会の仕方、自塾をどのように語るかなど多岐にわたるが、外部の研修プログラムを取り入れることもかなり効果がある。固定概念を打ち砕き、新たなことに挑戦するきっかけになったとのことだった。
政府が進める働き方改革はいわば労働時間短縮だ。塾業界はマンパワーに頼るところが大きく生産性を上げるのが難しいと言われてきた。しかし、仕事に優先順位をつけ、自分で判断していく癖をつけると無駄な残業も意外と見つかるものだ。本来無駄であった残業を減らせば、それがそっくり利益として残るのだ。
ただ、結局は選ばれなければ絵に描いた餅。何より重要なのは「就職したくなるような組織作り」だ。人はお金のためだけには働かない。表彰制度や社長との飲み会など、スタッフが「会社に大切に扱われている」と感じられる給与以外のインセンティブが何かしら必要だ。学生は会社のスタッフへの対応を驚くほどよく見ている。
[ゲスト塾講演]
なるほどゼミナール 山中孝光 代表
成績を上げるには勉強の仕方がある
〜塾生全員の成績を上げる、学習・指導法とは〜
1999年、なるほどゼミナール(以下、なるゼミ)は専任講師だけが授業を受け持つ少人数の集団授業塾として開校。当時では珍しく講師の顔写真とプロフィールを前面に出し、他塾との差別化を図っていた。ずっと同じ講師の指導を受けられることが特長だったが、1人の講師の退職をきっかけにかねてからの疑問に徹底的に向き合うことになったという。それは「勉強の仕方」と「成績の上げ方」について。これらは保護者から度々受けていた質問だった。
学習計画を立てる、進捗を把握する、丁寧に教える、テスト対策をする等々。塾でよく聞かれる謳い文句は「勉強量を増やす」ためのことであり、成績の上げ方や勉強の仕方を説明しているわけではない。成績アップを約束する一方で成績を上げるための技術や仕組みを説明することができないのは致命的だと考えるようになった。では、成績を上げる仕組みとはどのようなものか? それは、楽器やスポーツの世界では当たり前とされている技量と課題難易度のマッチング。これが学習塾には欠けていたのだと気がついた。
問題集も大きな括りではレベル分けがなされているが、全てが同レベルというわけではなく、問題によってバラツキがある。
「問題1問1問に対して難易度を設定すべきだ」と考えた山中氏が作成した問題集が『プラス10』シリーズだ。6シリーズ41アイテムあり、総問題数は3万3966問。問題にはいっさい手を加えず、全国模試の正答率と偏差値を元に問題の難易度を10段階で表した(「正答率に基づき難易度を区分する」として特許取得済み)。
生徒の学力の位置から指導すべき問題を絞り込み、集中的に指導することで、なるゼミでは卒塾までの間に平均10.1ポイントも偏差値を上げることに成功している。他の出版社からもオファーがあり、今後もシリーズを増やしていくという。「日本全体の学力向上に貢献したい」とのことだ。
[ゲスト塾講演]
ケイシングループ代表 (株)明友社 代表取締役 原田真一 氏
あえて苦難の道を、楽しむ
四国に啓真館、理求館、 代ゼミサテライン予備校、パスカル数理ゼミ等を展開するケイシングループは昨年、岡山の明修塾を傘下に入れ、一気に生徒数を6000名にまで伸ばした。グループを束ねる原田氏は「会社は個人の所有物ではない」として、早期から幹部へ会社の株式を譲り渡し、社員による経営参画を進めてきた。創業から27年、原田氏の経営に対する思いはその時々で変遷してきた。「学校をつくりたい! 株式上場を目指したい!」と考えていた創業当初。その後は一定の生徒数確保、校舎展開(市内・近隣へ影響力を拡大する)、地域展開(地域になくてはならない塾となる)を目指してきた。現在は人を育て、企業を残す「事業承継」へ。
明修塾の経営を引き受けることになったのは啓真館を展開する(株)ケイシンの代表を無事、後進に譲り渡した頃のこと。後進をサポートしつつ、自分のやりたいこと=現場での仕事を考えていたとき、ひょんなことから「明修塾を引き受けて欲しい」と打診された。冗談だと思った原田氏はその場で快諾。あとから本気だと知った時は心底驚いたという。
手続きはスピーディーに終わり、原田氏は50代にして(株)明友社の新入社員兼代表取締役となった。20代の社員も先輩だからと“さん”付けで呼ぶ。
「最近になってようやく慣れてきました」という原田氏は「ケイシングループというけれど、資本支配を強めて市場を席巻する狙いはありません。企業グループというより『原田と一緒に仕事をしてくれた仲間たち』なのです。私の苦労が役立つ塾があるなら、どこへでもお手伝いにまいります」と笑顔を見せた。
最後は(株)ティエラコム取締役・ASP事業本部長の芦田泰啓氏によるビットキャンパスの活用法が紹介された。同社では長時間労働の是正、生産性の向上のため、「ビット会」と名付けられたミーティングをビットキャンパス上で定期的に開催しているという。「生産性向上委員会」「業務効率化委員会」などという堅苦しいものではなく、塾をもっと良くするための思いを持って気軽に参加してもらうお茶会のようなものだとか。批判は禁止だが、話の脱線も雑談もOK。すぐにアイデアが出るわけではないが、アイデアの素となるような問題提起が出てくることもあるという。経営への参画意識を持ってもらうこと、情報共有やチームで継続的に考えるということにも、ビットキャンパスをどんどん活用して欲しいと話した。