株式会社 興学社 第27回 興学社大学 開催
君よ、今こそ民間教育の底力を発揮せよ!
9月6日(金)7日(土)8日(日)の3日間、多摩永山情報教育センター(東京都多摩市)において(株)興学社が「第27 回興学社大学」を開催した。今回のテーマは「君よ、今こそ民間教育の底力を発揮せよ!」。
ここでは、初日の9月6日に行われた興学社大学の講座を主にお伝えする。
「100年企業」へあと64年!今、解決すべき課題とは?
池田 晃 氏(学園長・代表取締役社長)
昨年の35周年で初めて「100年企業」という言葉を使った池田社長は、100年企業を目指すにあたって興学社の歴史を振り返りながら「解決できない課題はない」と力強く語る。
「成功する秘訣は何だろう? それは課題を解決できるまで、成功するまでやり続けることだ」と述べた上で、自分たちが現在抱えている課題を10項目挙げ、それぞれ説明していった。
一番は、すべての教室を黒字にすること。そうすれば絶対倒産することはないが、しかしその達成は難しい。
「興学社の歴史は、赤字もしくは業績の悪い教室に全力投球して解決する歴史である。問題が発生したらすぐに対応していこうという精神だ」
二番目は、イベントの拡大、質の向上。
「入社式・年次総会、合格出陣式、興学社大学、進学フェアの四大イベントを中心に、多くのイベントを開催していく。今後はイベント力が民間教育のエネルギーになっていくだろう」
三番目は、人財育成。
「私は仕事の6、7割は人財育成に尽くしている。当然のことだと言えるし、もっとやろうと思っている。以前ある講演会で、人が会社を辞める理由は、その組織に成長が見えないとき、良い先輩がいないとき、仕事にプライドが持てないときだと聴いた。なるほど、と納得した。逆に言えば、反対のことをどう進められるかがカギである」
四番目は、組織力の強化。
「私たちには90近い教室があるが、残念ながら優秀な教室もあればそうでない教室もある。だからこそ、質を決定する組織力の強化が必要なのである」
五番目は、近づくスタッフ1000名体制への対応。
「おそらく来年か再来年にはスタッフは1000名を超えると思われる。1000名の組織がきちんと機能するようにすることが大きな課題となってくる」
六番目は、承継問題。
「私は36年興学社を経営してきたが、次の世代にどうやって移行するかという大きな課題を抱えている。皆さんには大きな組織で執行できる、運営できる、指揮をとれる人財になっていただきたい」
七番目は、新規事業部への挑戦をやり続けること。
「失敗を恐れず挑戦し続けようということである。目標は20事業部体制」
八番目は、理念の共有のために各事業部で勉強をすること。
「我々にとって最も重要なことの一つは、理念である。これは36年経った今もいささかもぶれない。だから『興学思想』をつくった。昨年、一昨年と一年半かけて撮影した、興学思想全ページを解説した研修会のブルーレイ・ボックスを制作中である。個人でビデオを視聴して勉強できるようなシステムをつくり上げようとしている」
九番目は、一人ひとりの教育力の向上。
「年々子どもたちの教育が難しくなってきていると痛感しているが、私たちは〝子どもたちの人生の応援団〟としてこれからやるべきことがあるはずだ」
十番目は、職場としての民間教育現場をつくること。
「若いスタッフが安心して働ける職場をつくるのが我々の仕事だと思っている。良い職場の条件、良い仕事の条件とは何だろう? とつねに考えているが、答えは簡単だ。やり甲斐働き甲斐があることだ。しかし、これを実現し続けることは非常に難しい。それでもこれは我々の大きな責任、課題だと捉えている」
池田社長は講演の最後にこう語った。
「これらの課題の解決策が、今回の大きなテーマとなっている。興学社大学の各講座のタイトルが問題提起であり、講演内容が解決策である。先ほど言ったように、解決できない課題はない。この三日間、課題の解決策をどうか真摯に学んでもらいたい」
国語力革命の旗手たれ!全ての基本は読書にあり
鈴木 実 氏(PRI事業部 瑞穂校 塾長)
東京でのオリンピック開催を控え、海外との交流が話題になる昨今、なぜ、国語教育の講座が初日の最初にあるのかというと、「すべての基本が国語力だから」と鈴木氏は述べる。そして「国語力とは、私が携わってきた教科としての国語力ではなく、人格形成の土台となる力のことを言います。この時代に、今後を見据えるからこそ、国語力向上に意識を向けていかなければなりません」と語る。
大学入試改革や新学習指導要領にも触れながら、国語力を高めるには読書が一番だと鈴木氏は言う。
「名作とはどういうものでしょうか? それは、世の中が進化しても、時代が変わっても、年齢を重ねても色褪せないものだと思います。そしてそれが文化と呼ばれるものになるのだと思います。読書をすることによって、私たちは様々な角度の様々な話を聴くことができます。そしてたくさんの感動があります。その感動を体感、共感し、考えることによって自分を深めることができます。そしてその感動を自分の言葉や様々な方法を使って生徒に還元する発信力をも養えます。そのすべてが国語力なのです」
現場教育力を高めよ!
(1)保護者対応力を磨け! (2)生徒の悩みを解決せよ!
浅香 光利 氏(PRI事業部 副部長)
教育業界では今、EdTechやICT教育などの言葉が飛び交っているが、いずれにも共通することは、今までの価値観では塾や民間教育はつぶれるということを表していると浅香氏は述べる。
「しかしすべての民間教育が不要になることを意味するのではなく、私個人としては、AIや機械が代替できないところにこそ、生き残るヒントがあると考えています。教育産業においては、生徒・保護者から信頼を得られる塾であり、教育機関であるということです」
保護者対応も、生徒対応も、先天的なセンスではなく、後天的な努力やテクニックで決まるという。「何より私は不器用でした。だから努力するしか方法はなかったのです。時間を費やすことしか当時の私にはできなかったのです」
保護者の本当の思いとは、我が子の成績が上がることやグローバルに活躍できる人間に育つことではなく、「健康で笑顔で暮らしてほしい」とか「人の気持ちがわかる人間になってほしい」ということ。
「我々はプロとして、保護者が持ち合わせていない専門知識と経験で、求められた技能を習得させる中で、保護者と共に生徒の人間的成長を手助けしていくこと。この使命をひと言で表すと、〝協育〟です」
生徒の悩みを聴き、解決するためには、あくまで大人の代表という自覚が必要だ。大人の立ち位置でなければ、悩みの共有はできても解決には至らないからだという。
保護者対応も生徒対応についても、そのテクニックについて浅香氏は詳細に語ってくれたが、その大前提は生徒への愛情であり、「全ては生徒の為に」という熱い思いだ。
CYT戦略が人財を育てる
来たれ! 優秀な人財たち
北原 侑樹 氏(PRI事業部 高尾校 塾長代理)
大谷 亮次 氏(PRI事業部 副部長)
「CYT興学社」とは、興学社独自の財採用システム。学習塾部門(PRI・PKG事業部)の卒業生のうち、選抜された学力上位の卒業生(時間講師候補の高校1~3年生)を倶楽部興学社とし、塾長が推薦する時間講師2~3年目の将来有望な講師(大学生)をYouth興学社、さらにYouth興学社から選抜された時間講師3~4年目の入社資格を有する優秀な講師をTeam興学社とし、彼らを正社員として採用するシステムだ。
北原氏は「教室で塾長や生徒に育ててもらい、CYTの仕組みでさらに教室だけでは得られないスキルを与えてもらったからこそ、今、私はこうしてこの場に立たせていただいているのだと思います」と語る。
実はそのCYTの仕組みがあまりうまくいっていないと述べるのは、大谷氏。
「Youth、Teamに所属している先生の中で、この先生はすごいと思う人をイメージしてみてください。これがおそらく完全には一致していないことがうまくいっていない要因だと思います。ですから来期から大きくCYTの仕組みを変えていきます」
CYTを具体的にどう変えていくかを大谷氏は詳しく説明した上で、「ぜひ、優秀な時間講師の皆さんは、まず来年YouthまたはTeamに所属したいと立候補して、我々と一緒に研修を経て、この仕事の真髄というものをきちんと見た上で入社していただきたいと思います」と熱く語った。
シリーズ「興学思想」に学ぶ
保木 彩美 氏(WWK関西事業部 マネージャー)
保木氏は、WWK関西事業部(放課後等デイサービス部門)の新規事業の立ち上げにおいて、不安と孤独を抱えながらもリーダーの役割を果たそうと、興学思想を指針にしながら努力し続けた軌跡を涙ながらに語った。
ある時期、スタッフの退社が続出する中で、つらくて自分自身も辞めたいと思ったとき、生徒や他のスタッフに支えられながら、事業を成功へと導くことができたのだ。
「人の覚悟は伝染する。」「組織は人に始まり人に終わる。」「困難は、生命力を与える刺激である。」などの興学思想の言葉を引用しながら、保木氏は「教育に携わる限り、興学思想の言葉は私たちを立ち止まらせ、正しい方向へと導いてくれます」と語った。
シンポジウム 「コラボ」こそ成長の秘訣
多田誠 氏・平田雄治 氏/PRI(小・中学生学習塾)&PKG(個別指導塾)
醍醐秀和 氏・加藤大輔 氏/PRI&PHS(大学受験予備校)
松岡秀行 氏・黒須祐輝 氏/PRI&PEG(英会話スクール)
進行は、第一統括本部長の髙野典英氏。コラボした部門同士はどちらも生徒数を伸ばし、大きな成果をあげているという。
コラボのメリットとしては、「部活の関係で中1から個別のPKGに通っていた生徒が中3になって部活を引退後、集団のPRIに通ったり、PRIの授業についていけない子がPKGに移るなど、生徒のニーズに対応しながら退塾防止にもつながっています」「PRIはPHSとコラボすることによって大学受験までを視野に入れた指導ができ、視野が広がります。PHSは、保護会を開くときなどPRIのノウハウを教えてもらっています」「PRIの生徒がPEGにも通ったり、逆にPEGの生徒がPRIに通うケースも徐々に多くなり、今は全体の7%が両方通ったり、あるいは通っていました」などの意見が出された。
逆に難しい点は、「教室長が2人いることになりますから、2人の意見が合わないと教室運営がスムーズにいきません。お互いの性格や考え方を知った上で尊重し合うことが大切です」などの意見があった。
今後のコラボとして、PRI&PKG&PHS、PRI&TPA(パソコン教室)など様々な提案が出され、大きなヒントを与えてくれた。
プレゼンバトル(PHS)
吉村 昂也 氏(古淵駅前校)
角永 穏文 氏(柏駅西口校)
富沢 太一 氏(聖蹟桜ヶ丘駅前校)
「説得力こそ動機付けの源泉である」という考えから、3名の挑戦者のうち誰が最も説得力をもってプレゼンを行うことができるのか、それを競うバトルが行われた。「高校受験を終えたばかりの中3に、なぜ高1から大学受験勉強を始める必要があるのかを指導する」という設定でのプレゼンだ。
吉村氏、角永氏、富沢氏の3名が各10分ずつ、独自に集めて分析したデータを駆使しながら、自らの大学受験の経験談をも披露しながらプレゼンを行った。三者三様、まさに説得力ある内容だったが、審査員は会場に集まった方々。結果は後日公表とのこと。
2日目の興学社大学は、シリーズ「最優秀校に学ぶ」、「読み・書き・そろばん 小学部改革に挑む」、「AIはどこまで教育を変えるか 教育者としての『あるべき姿』」、シンポジウム「生徒を集められない教室は滅びる」、Q&A「興学思想の本質に迫るプロとアマの違い」など、3日目はシリーズ「第36期生の主張」、シリーズ「教育者の魅力と責任」、PRI事業部によるプレゼンバトル、「興学社学園の新たな挑戦」など、興学社大学の冒頭で池田社長が挙げた10の課題の解決策のヒントを与えてくれる講座ばかりだった。
池田社長による、Q&A「興学思想の本質に迫る プロとアマの違い」では、あらかじめ寄せられた現場からの質問に池田社長が答える形で進められ、アマチュアの習慣が現状に甘んずることだとすると、プロフェッショナルの習慣は人間的成長を求め続けるなど、多くの示唆に富んだ講座となった。