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AJC(全国学習塾協同組合)森貞孝理事長の最新教育情報 第28回

2019-12-02

生徒たちに不安を抱かせる大学入試にならないように

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11月号で大学入試の共通テストについて、問題が山積していることを述べたが、なんと11月1日、民間試験の申込開始日に荻生田文科大臣がテストの延期を発表した。5年も6年もかけて議論して、準備も進めていよいよ受付開始当日に2024年まで延期すると発表されて、大学も高校も生徒も教師もそれぞれに混乱している。

前号で私学の対応がバラバラになっていたり、TOEICが離脱したりなどということを書いたものの、本来最も基本になるポイントは、全国すべての地域の受験生が受験の機会均等であること、試験問題が量や難しさに当たりはずれがなく受験生の学力が公平に測れるテストであることだ。先日まで報道されてきた内容では、大都会に住んでいる生徒は受験の機会が多く試験を選びやすいことに対して、地域によっては機会が大変少なく、またそのために高額の交通費・宿泊費が必要になる。
さらに従来の各テストが量や時間もバラつきがあり出題傾向も違っていたのが実際どのように調整されたのかどうかも不安が残っていた。

今回の英語教育改革は、2020年から小学校高学年の教科化から大学入試の共通テストまですべてにスピーキングが入る、つまり4技能のバランスをとる、英語の話す・聞く力が足りなかったところを一気に是正する方向に舵を取ったことだ。極論を言えば、十年先には大学入試にスピーキングは必要なくなることは目に見えている。
小学校5年生から英語の授業があり、小学校の修了時点で英語での基本的会話力とコミュニケーションがとれることを国は目指している。その生徒が中学でも英語の時間は英語だけでやるとか、高校入試のテストに英語のスピーキングのテストが組み入れられていくと、果たして大学入試で英語のスピーキングテストなどは必要があるのか。

今回の民間試験を取り入れることにした背景は、スピーキングのテストは1対1で一人ひとり人違う設問に対して答え方もバラバラ、かかる時間も多い。そのようなテストを共通テストに取り入れて一律の評価をすることは不可能だということから始まっている。

海外の例でみると、中学生で日常の会話力に事欠かない生徒が多数いる。
日本も新しい改革の結果が出始めると大学入試でスピーキングのテストは必要なくなるのではないか。また、先日令和2年度の都立高校の入試要項の説明を受けた。その中で英語のスピーキングのテストについて、それだけを単独で別に行う方向で検討しているとのことだった。膨大な時間がかかることからそのように決めているようだった。大学入試での民間試験の延期が決まった結果、高校入試ではどのように対処するのか。さらに私立中学の入試にスピーキングが取り入れられるようになった場合に、中学入試、高校入試、大学入試のスピーキングのテストにそれぞれどの程度の学力差のある出題がされるのか。生徒たちに不安を抱かせる大学入試にならないよう、関係各位のしっかりした検討を期待したい。


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