民間教育団体連絡協議会 令和元年度 第3回臨時総会 開催名称を「日本民間教育協議会」に変更
2月26日(水)東京都渋谷区のアイビーホール「アロン」において、民間教育団体連絡協議会(安藤大作幹事長)の「令和元年度 第3回臨時総会」が開催され、入会承認、役員会報告、規約改正、意見交換などが活発に行われた。
同会は、民間教育の各分野を代表する事業者団体等が集い、民間教育全般にかかわる事項に関して連絡・協議することを通じて、民間教育の各分野の垣根を越えて、未来をつくる子どもたちのために社会貢献を推進するとともに、民間教育の発展に寄与することを目的として2018年10月26日に設立された。
名称を「日本民間教育協議会」に変更し、人口減少社会を見据えた活動を
冒頭、安藤大作幹事長が挨拶。
「多くの教育上の課題が学校の中だけで解決できるかというと、そうではありません。民間教育が学校と連携することで大きな効果が得られると考えております。どのように学校と連携していくかについて、今日も話を進めていきたいと思います」
続いて1月9日(木)に開かれた役員会について安藤幹事長が報告。
それによると、団体名を「日本民間教育協議会」とし、英語名を「Japan Social EducationCouncil」とする。また、同会のwebサイトを作成して公開。
同会の活動については、①人口減少社会の日本の課題と対応策について ②民間教育振興法について ③学校教育の民間への業務委託について──の3つを行う。同会の正会員とすべき分野について、ダンス、書道、珠算、柔道、プログラミングなど、学習指導要領に含まれる分野内において社会的に認められた民間教育の団体とする。
その役員会の決定事項を今回の臨時総会で承認を得たが、「人口減少社会の日本の課題と対応策について」安藤幹事長はこう語る。
「人口減少に関しては、民間だけではどうにもなりません。政治で思いきった政策をとっていただけないかということで、大変おこがましいことではありますが、諸外国の成功事例に習った上で、ある程度の財政を投入していただく中で人口減少に歯止めをかけていただけないかと考えております。今後もこれに関しては勉強会を行っていこうと思っております」
「不登校児童生徒支援」「部活動指導支援」「プログラミング教育支援」の取り組み事例
次に、学校教育の民間への業務委託について、(一財)クラスジャパン教育機構の取り組み(不登校児童生徒支援)、リーフラス(株)の取り組み(部活動指導支援業務)、キラメックス(株)の取り組み(プログラミング教育)が紹介され、それぞれの報告後に質疑応答が行われた。
(一財)クラスジャパン教育機構の取り組みについては本誌1月号53ページで紹介されているが、今回は大阪府八尾市からの業務委託。文科省通知の民間への積極的な活用方針に沿った、民間教育機関への委託による学習機会の選択肢を広げるため、八尾市長直轄(教育委員会)専門家チームが不登校児童生徒の学校連携型学校外学習支援コーディネーターをクラスジャパン教育機構に委託。
児童生徒の学び方の選択肢と学校外学習活動を把握し、ネットスクールやICT教材会社を活用してオンライン型学習システム(在宅含む)あるいはリアル型学校外教育機関(適応指導教室、教育支援センター)で個別学習支援を行い、保護者と連絡を取り合い、各小中学校に学習活動の報告を行う。学校に行けなくても学習機会の選択肢が大きく広がることになる。
リーフラス(株)の取り組みについても本誌1月号で紹介されているが、今回はクラスジャパン教育機構と同じ自治体、大阪府八尾市の八尾市立桂中学校のサッカー部の指導支援業務。
一般公募されているのを同社社員が発見し、応募して受託に至ったという。本市では小中一貫校基本方針を策定し、小中一貫教育を推進していくにあたり、特色ある学校づくりの一環として、八尾市立桂中学校のサッカー競技において、部活動指導支援を事業者に委託するもの。部活動顧問と連携し、部活動を通じて部員の心・技・体の成長に寄与する。
1回あたり2時間とし、1週間に2回程度の業務で、業務期間中に100時間相当の業務を行い、業務日の設定に関しては中学校と協議する。要請に応じ、教授手法等についての教員に対する助言等の支援、対外試合等の引率補助、義務審判等の大会運営業務も行うという。
キラメックス(株)は、石川県加賀市から業務委託され、小学生を対象にビジュアルプログラミングを用いたプログラミング体験をさせ、プログラミングの体験イベントにおいて、同社が運営するTech Academyの受講生をティーチングアシスタントとして派遣。プログラミング教育の普及とプログラミング教育必修化に伴う現場負担の増加を解消するためのモデル検証を行うことが目的だ。
また、同市とみんなのコードが展開するコンピュータクラブハウスでのプログラミング講座を提供。コンピュータクラブハウスとは、プログラミングの図書館のようなコミュニティースペースだ。ここに通う10代の子どもたちの中には、独自の映画制作、DJ活動、動画制作など、テクノロジーを使って自分たちの好きなことを仲間と一緒に追求しているという。学校現場以外での地域におけるプログラミング教育の受け皿づくりへの協力、学校現場では扱わない言語や教育内容の提供、要するにステップアップできる環境の提供が目的だ。
さらに、静岡県立掛川西高等学校パソコン部にて、テクノロジーによる地域課題解決の取り組みを実施。地域課題解決をディスカッション・検討で終わらせるのではなく、実際にテクノロジーを用いて実装までの経験を提供し、イベントではなく、実利を生むモデルの検証を目的としている。
高校生18名を対象に、学習内容は観光サイトの構築。フィールドワークやワークショップを用いて、地域課題の発見と解決策を検討し、3カ月のオンライン学習を通して、地域の観光サイトをリリースしたという。
民間教育業者の拠り所となり得る「民間教育振興法」の成立を
質疑応答では、実際学校と連携することは非常に難しいとの質問が多かった。文部科学省の担当者は「根気よく実績と事例を積み上げていくことが重要」と述べ、経済産業省の担当者は、「教育長なり学校の幹部の方々なりに実際に体験してもらい、やってみようという気持ちになっていただくところまでいかないと難しいと思います」と語った。
この日は「民間教育振興法」についても議論する予定だったが、時間の都合上次回に見送られることとなった。閉会の挨拶で、澁谷俊一幹事(一般社団法人日本スイミングクラブ協会専務理事)はこう述べた。
「〝民間教育振興法〟についてもっと皆様と話し合いたいと思っております。昭和36(1961)年にスポーツ振興法が成立し、その後平成23(2011)年にスポーツ基本法という法律に変わり、平成27(2015)年にスポーツ省ができ、その2年後に第2期スポーツ基本計画が発表されました。その中で民間の多くの具体的事例が出てきて、それが我々スポーツ関連業界の一つの拠り所となっているところがあります。〝民間教育振興法〟がもしできれば、我々民間教育に関わる者たちの拠り所になっていくと考えます。今後皆様と議論を重ねながら成立にもっていくことができれば幸いです」
次回は、5月26日(火)に開催する予定だ。