AJC(全国学習塾協同組合)森貞孝理事長の最新教育情報 第34回
塾はどのように生き延び、教育の世界にかかわっていくのか?
SARSの時も世界を震撼させた感染症だったが、正直日本では対岸の火事。日本国内で厳しい情勢になることはなかった。しかし今回のこの新型コロナウイルスの感染は想像を絶する感染症との戦いになった。
前号でものすごい感染力だと考えて世界で100万を超えたと数字を並べてみたものの、あっという間に400万人を超えて死者の数も3倍以上27万人を突破した。
国内でも海外でも人は家に引きこもり、感染症の波が過ぎ去るのを耐えて待っている。世界中の国が国境を閉鎖して人の行き来を止めた。まさに想定外だ。
学習塾の経営者にとって、このような事態は初体験だ。今までは学校がインフルエンザで学級閉鎖程度。数週間で元に戻る。今回は3月第1週から5月になっても休校が続く。それも世界中で学校教育が止まった。学習塾はどういった対応をとるべきか。
今の生徒の保護者たちが塾通いをしていた頃、どこの塾も狭い空間に生徒をいっぱい詰め込んで、学校と同じようなスタイルの指導をしていた。15年くらい前からじわじわと個別指導塾が増え始めた。
そして今では圧倒的にグループ指導よりも個別指導が多い。そして大手塾は株式を公開して100億を上回る収入を上げるようになっている。感染症は菌やウイルスでうつる病気だ。今回もくどいほど繰り返し言われているのが密閉空間・密集・近くで話し合う密接の三密を避けること。
個別指導塾は比較的簡単に対応できるところも多かった。1対2程度で間隔をあけてレイアウトを工夫していた。大手塾は全校休校という事態に戸惑いながら休塾したり、オンライン学習に切り替えたりした。初めはその程度だったものが、春休み・新学期になっても休校が続き、感染者が増え続けて自粛の要請がより具体的になってくると、塾の対応が変わってきた。
ほとんどの塾が自粛して家庭学習に力を入れたり、オンライン指導に切り替えたりし始めた。ICTの技術が進んでいろいろなツールがオンライン指導を可能にするようになり始めた時期でもある。奇しくも本年4月から小中学校の生徒に1人1台のパソコンやタブレットを配り始めることになってもいた。教育にPCが入り込む時期と重なってきている。
新型コロナウイルスの感染拡大で学習塾の置かれた立場をどう考えたらいいだろうか。学校は休みだが、学童保育は朝からやるように国は勧めていた。特別学級の生徒たちの放課後デイサービスも続けてほしいと要請された。ふだん放課後に学童保育に行っていた子どもたちは行き場所があり、塾に通っていた生徒たちは自粛させられて自宅学習やオンライン指導になった。長い休校で身体を持て余す生徒が多く、子どもが家にいるために勤めやパートに働きに出ることが出来ない親も出てきた。
教育も経済も大混乱を続けている。世界中が経験したことがない不景気に突入しようとしている。簡単に世界中に飛び回れる時代だから、コロナウイルスもあっという間に世界に広がって、数多くの職業に従事した人を叩き潰そうとしている。
ようやくコロナは峠を越し、人々が、世界の経済が動き出そうとしている。コロナの第二波が襲ってくるのか、どん底まで叩き落とされた経済がどのように立ち直れるのか。そして学習塾は形を変えながらどのように生き延び教育の世界にかかわっていくのか。