教育資源としての民間教育 第28回
公益社団法人 全国学習塾協会 安藤 大作 会長
国の教育施策に塾も含まれる時期に来ている
学校のオンライン化が進んでいるけれど、ネット環境のない家庭がある中で義務教育をオンライン化していくことはどうなんでしょうか? 参加できない子は別の手段でフォローをしていると聞きますが、家庭の事情で参加できなかった児童生徒の心までフォローできないのではないでしょうか?
学校も奮闘していることはもちろん敬意を表しながらも、それでもやはりこの時期、公教育が学びの平等性を与える意味では十分ではないというのが正直なところです。
今後、公教育が最大公約数の教育の福祉的側面を担う必要がこれまで以上に求められてきていると思います。すべての家庭が時代の変化に対応できないからです。一方でさらなる教育を求める層は存在します。しかし公教育こそ「福祉的側面」に目を向けないと公教育そもそもの前提が崩れます。
だからこそ今、子どもたちを取り巻く環境として公教育は塾との共生が必要になるのではないかと考えます。塾はその黎明期から半世紀以上、個別最適化したモデルで児童生徒を支えてきました。ひたすら詰め込みの受験教育というイメージの方も多いが、塾は多様であり今や一言では片づけられない多種多様な塾が存在しています。個々のニーズを捉えながらも、確かなのは学校で十分でなかった部分を今でも支えているということと、個々の学びの自由を支えているということです。
この時期、どうしても学校の学びには格差が出ます。
公私間はもちろん公教育同士でも自治体間格差も一層顕著になります。しかし学校は教育機会に格差が生まれることを最大限回避しなければなりません。繰り返しですが、福祉的な面こそ今後より一層の重要課題になるのではないでしょうか。
今、半世紀以上子どもたちを支えてきた塾だからこそ、国のためにも子どもたちのためにも出来ることがあります。学校は塾への心理的ハードルがあるのかもしれません。また私企業だから利益のためという人もいるかもしれません。もちろん利益は大切ですが、いつも顧客のためも思っています。そのことは他の業界と変わりません。
塾は三密を回避したり、オンラインや塾側も頭をひねり、児童生徒のことを考えながら、個別最適化した教育を展開しています。
塾は民間だから通える家庭しか通えない、と言われるかもしれません。
しかしより一層の学びのために、公教育が教育の平等性に重きを置く一方で、個別最適化された教育は塾が担い、国が家庭に財政支援しながらでも日本の子どもたちの教育環境を支えていくバウチャー支援を一考してもらえばどうかと考えます。
公教育でないから塾は多様です。様々な家庭にリーチできる自由さもあります。国の教育施策に塾も含めて考える時期は来ているように思います。