教育資源としての民間教育 第29回
公益社団法人 全国学習塾協会 安藤 大作 会長
「ない、ようで、ある」のが本当のつながり
塾という業界、さほど流通にもさらされない産業であり、それぞれの塾流に子どもに学習指導していくことがサービスの中心ですから、ややもすると近視眼的になりがちです。
近視眼的とは、「今だけ・ここだけ・自分だけ」になってしまいがちとも言えるのかもしれません。しかし、社会の中で息づく産業に「今だけ・ここだけ・自分だけ」で成り立つ産業は基本的に存在し得ないとも言えます。
そういう意味においては塾業界が、「未来に向けての今、全体の中での自分、社会と良好でありながらの自分」を意識していくことは大切なのかもしれません。
社会との良好な関係とは、顧客との良好な関係から始まり、地域社会との良好な関係、業界所管官庁との良好な関係、国政との良好な関係まで含みます。その関係すべてが自分に影響を及ぼすとも言えます。つねに社会との良好な関係を保ちながらも、自らの主張をして自らの表現自由を守っていく努力が求められます。
民間教育にとって自由な教育表現は心臓部でもあるからです。
もちろん良好な関係づくりと言っても、すべてがうまくいくわけではありません。だからといってどんなときでも良好な関係づくりという努力を停止するわけにもいきません。世界も国家も業界も、はたまた人間の身体でさえも、個も全体もすべてがうまく機能してこそ活力は継続されます。そこはすべてが連動して、つながっているとも言えるからです。
つながりとは目に見えるつながりばかりではないだけに、そのつながりは存在しないかのように感じるかもしれません。しかし「ない、ようで、ある」のがつながりですから、そこは大切にしていかなくてはいけません。
公益社団法人の全国学習塾協会も、その「ない、ようで、ある」存在なのかもしれません。
社会との良好な関係づくりの中でも、顧客や地域社会との良好な関係づくりは各塾の努力でしょうし、業界所管官庁や国政との関係は業界団体としての努力になるでしょう。顧客や地域社会など近い社会との関係づくりは誰もが意識するので存在し得ますが、遠い社会との関係づくりはふだん意識し得ないとなると、それはまるで「あってもなきが如し」かもしれません。
「ない、ようで、ある」組織が存在しているからこそ様々に機能している類は、人間の身体を例にみるように枚挙に暇がありません。様々につながる関係性があっての「今、ここ、自分」を大切にすることで、「未来、全体」の幸せが拓けていくのかもしれません。そう思うとき、未来づくりや幸せづくりで子どもに接し続けることを使命としている塾業界だからこそ、塾業界全体で、この「ない、ようで、ある」公益社団法人全国学習塾協会を支えていっていただきたいと思うのです。