(一社)NEA教育アライアンスネットワーク授業力向上学習会 オンライン指導、成功の決め手は保護者との関係構築
「保護者対応力アップセミナー」開催
保護者を味方につける「保護者対応」をお伝えします!
緊急事態宣言解除後も第二波、三波への懸念や、三密を避けるため教室内の生徒数を制限したり、引き続きオンライン授業を併用をしたりと学習塾業界は確実に変化を強いられている。保護者の意識も大きく変化する中、(株)サイタコーディネーションが5月に開催した保護者対応力強化のためWebセミナー(本誌7月号掲載)は大変好評で、参加者からはより具体的な対応策を知りたいとの声が寄せられていた。
これを受け同社では6月22日、「保護者対応力アップセミナー」を一般社団法人教育アライアンスネットワーク(NEA)、(株)塾と教育との共催でオンラインで開催した。
コロナ禍における保護者対応実例 個別指導Q/笠木 誠 代表
個別指導Qは北海道函館市に2010年3月に開校した個別指導の学習塾で生徒数150名。対象は小中高校生です。
今回、4月20日から塾内の自習室を午後からのみの利用とし、定員を15名に設定。午前中はオンライン自習室を開設し質問対応などを行いました。オンライン自習室を午前中に設定したことで学校休校中の生活習慣づくりに役立ったという声が上がっています。また、上級生が集中して勉強している姿に刺激された生徒らが長時間集中できたとのことで、無学年制での実施が功を奏しました。休憩がてら、間にクイズ大会を挟む工夫もし、生徒と先生の距離が縮まったと感じています。
29日にはオンラインランチ(保護者会)を実施。保護者同士の意見共有など横のつながりができたと好評でした。5月3日夜は小学校の教科書から漢字の書き順などを出題するクイズ大会を実施。家族で参加する家庭も多く、盛り上がったのはもちろんのこと、画面越しに友だちと会えたことで生徒たちは大変喜んでいました。
5月11日からはオンライン個別指導を開始しています。90分×5コマで1対3ですが、学年と教科を揃えることで1対5、か6までは可能だと思いました。ただ、生徒の手元が見られず宿題のチェックはどうしても甘くなりがちです。側にいる保護者の声が聞こえてくるなど、家庭での様子が垣間見えることもありました。
保護者への対応としては、塾の管理システムを利用した授業後の指導報告を2年前より実施しています。小中学生を対象に毎日40~50名の保護者へスタッフ4、5名が報告を送るのですが、その返信が非常に早く、塾への期待を感じます。ささいなやりとりが退塾防止や追加受講につながるケースもありました。今回のことで、教えている生徒の奥にいる保護者の存在をより強く意識することができましたし、家庭での状況を知れたことは大きいと思います。
6月からは通常通りの個別指導も再開していますが、遠方や送り迎えの関係で希望者があったのでオンライン個別指導も継続しています。今後、各社の協力により速読の説明会や次世代型キャリア教育体験講座もオンラインで実施予定です。
保護者を味方につける「保護者対応」をお伝えします!
(株)サイタコーディネーション/江藤 真規 代表取締役
学習の遅れやそのフォローの難しさ、モチベーション維持や生活リズムの乱れ、受験の動向、仕事との両立など保護者の8割以上が休校にストレスを抱えていることを知ってください。家庭任せから生まれるストレス、多重化、複雑化する保護者の不安、自粛の長期化に伴いメンタル面でも不安が増加しており、これはWHOが子どもとの付き合い方について発信しているように、全世界共通の課題となっています。
笠木先生は保護者とのやりとりや関わりをとても楽しそうにしていらっしゃいます。保護者への対応を努力だとは思っていないようです。保護者の意見を知ることで見えてくることがあり、その結果、生徒への指導がより良いものへとなるのは間違いありません。しかし、これは「講師によって違う」ということも知っておいてください。保護者とのやりとりが苦手な講師もいます。苦手な人に「保護者対応頑張れ」と言っても無理な話です。
昨今、子どもに「自立(自律)して欲しい」と望む保護者が増え、塾に対する保護者のニーズも変化しています。今後、塾と保護者には「共に子育ての支援者となり長期的な関わり」が求められるようになってきます。しかし塾が全てを引き受けるには限界があります。「子育ての第一義的責任は保護者にある」として保護者にも役割を振りましょう。保護者対応は「家庭における子育てが幸せとなるように」が基本です。ただし、塾や学校の先生を相談相手に選ぶ保護者は1割程度ですので、塾側から積極的に動くようにしましょう。
不安を抱えた保護者を味方につけるには、保護者の話をしっかりと聴き(傾聴)、保護者の不安を薄くすることから始めます。ここで必要なのは「積極的傾聴」と呼ばれるコーチングの技術で、真剣に傾聴し理解しようとする積極的な態度や姿勢を示すことです。人の話を聴くのは意外と難しいものです。内容にそもそも関心がない場合や共感できない場合、無自覚に自分の意見を押しつける場合もあります。塾内でチェックリストを作り、チームで「聴く」ことの見直しをするといいでしょう。
■積極的傾聴のレベル
レベル1 多様な相づち → 相手に聴いてる姿勢を示す
レベル2 相手の言葉の繰り返し・オウム返し → 相手を受け止める
レベル3 自分の言葉で言い換え → 相手を理解する
次に「リフレーミング」です。直訳では枠組みを変えること。つまり異なる視点から見て言い換える技術のことです。
ネガティブな言葉をポジティブな言葉に置き換え、肯定的な捉え方に置き換えることで保護者のマインドアップにつなげます。
・うちの子は頑固で… → 自分の意思をしっかり持っている
・意見が言えない → 争いを好まない、思慮深い
・家では勉強しない → お家の居心地が良いんでしょうね 等々
ただ、オンラインのコミュニケーションには表情が見えにくくタイムギャップがあること、生活空間で話をすることの難しさなど、デメリットもあります。オンラインでの保護者面談の場合は単なる雑談ではなく、塾からの提案や保護者の改題解決に向けて何をすればいいのか、対話にゴールを持たせましょう。
これからの塾には保護者との信頼関係構築以外にも、オンライン授業の利点をきちんと説明し、今後の教育(未来社会)を示すことができる講師が必要です。変化する保護者の価値観や家庭の実態を認識し、家庭との協働的な関係を築いていきましょう。
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担当/柳・太田・今井