(一社)日本青少年育成協会 アクティブラーニング実践フォーラム2020
(一社)日本青少年育成協会「アクティブラーニング実践フォーラム2020」開催
Zoomを駆使したオンライン開催に400人が感動
一般社団法人日本青少年育成協会は11月1日(日)、「アクティブラーニング実践フォーラム2020」を開催した。
アクティブラーニング(AL)の研修としては規模・質ともに日本最高峰と評されるようになったこのイベント。例年、京都大学を会場に開催してきたが、今年度は新型コロナウイルス感染予防の観点から初のオンライン開催となった。
講演、12件のポスターセッション、6つの分科会でのワークショップ、対談と、大きく4つのプログラムで構成されたが、驚くべきは、すべてが双方向型で行われた点。14のZoomアカウントを用いて、チャット、ブレイクアウトセッション、画面共有、アンケートなどを駆使。そこにスプレッドシート、Googleフォーム、パワーポイント等を絡めて展開した。しかも専門業者を入れず、すべてがスタッフの手作りによる企画・運営だという。圧巻の5時間であった。
■第1部(10時-12時20分)
[開会挨拶]
まず、日本青少年育成協会副会長の木村吉宏氏((株)ヒューマレッジ代表)が兵庫県から挨拶。 あるレストランで遭遇した「マシンガントーク・ママ」のエピソードを紹介し、ALは学校・教育業界のみならず家庭にも必要な時代になってきていると語った。
[基調講演]
溝上慎一氏 (桐蔭学園理事長)
「オンライン時代をどう生きる、どう支える」
京都大学教授時代から現在に至るまで、ALの研究者として、また実践者として、最先端を走り続けている氏ならではの、ミクロとマクロの両視点を往還する、示唆に富んだ講演であった。
①令和の日本型学校教育―個別最適な学び・協働的な学び 個に応じた指導の重視は80年代から始まり、今後一層促進される。一方で懸念されるのが、学びの孤立化。だからこそ、対話的・協働的な学びを重視していく必要がある。
②桐蔭学園のハイブリッドな学び 桐蔭学園では感染予防を徹底しながらも「学びを止めない」をスローガンに、対話的・協働的な授業実践を貫いている。そこには先生方の強いコミットメントと生徒・保護者の理解がある。
③求められる個の多様性と主体性 90年代から「ライフコースの個人化」が起こり、人生百年時代の到来により、「多様化」が一層加速する。「主体的な学び」がいかに重要かを授業者は認識し、それを育む取り組みを強化していく必要がある。
[ポスターセッション]
「ポスターセッション」とは、学習者の一人が自らの研究成果や実践事例を掲示型資料(ポスター)の前で発表し、聴き手である他の学習者と質問対話するAL法。これをZoomで行うのが今回の形。練り上げられた質の高い発表と、鋭い質問が、双方の学びを深めていく様は、ALの真骨頂と言える。 発表者は、先進実践者12名。幼稚園・中学・高校・大学の教員から、塾・発達支援・サッカークラブチームまで、その領域は多岐にわたる。こうした多様性を持つ研修は他に例を見ない。「違いから学ぶ」をコンセプトに掲げる当フォーラムの特長の一つだ。
■第2部(13時30分-16時)
[分科会]
6つの分科会に分かれてのワークショップ。「Refメソッド」に基づくコーチングやALの実践・研修で豊かな実績を持つ福本・内藤・石田・増田氏に加え、国立教育政策研究所総括研究官の千々布敏弥氏、ユマニテク短期大学学長の鈴木建生氏という講師陣はなんとも贅沢。
「ALは集合・対面でないと無理だと思っていた」「個別指導とALは無関係だと思っていた」「ALは受験指導には不向きだと考えていた」・・・そんな受講者の先入観が心地よく融解していく、まさに目からウロコのALが展開された。
■特別対談
小山英樹氏((株)対話教育研究所・日本教育メソッド研究機構代表)
× 鈴木建生氏(ユマニテク短期大学学長)
「最新かつ最深のアクティブラーニング」
本誌のコラムでおなじみの小山英樹氏は、当フォーラムの実行委員長。今回は、15年にわたって刺激し合う鈴木氏との対談となった。
安全安心を重視した対話型授業が、自己肯定感の低い学生や意欲に乏しい学生の変化を引き出していく・・・そんな実例が、鈴木氏の授業の「リフレクションシート」を通して紹介された。ジャック・アタリ氏の「命の経済」という言葉に象徴される、人の生命を尊ぶ経済社会の実現と、そこにつながる教育の実践のために、主体的・対話的な学びの場を提供し続けていきたいというところに対談は帰結した。
終盤にはブレイクアウトセッションを用いたクロストーク、チャットを通した質問対話も行われた。
終了後、当フォーラム運営委員長である、栃木県の塾(株)Vi Pass 代表福本佳之氏に聞いた。
このフォーラムの理念は、「私たちが参加者にALを教える」場にしないということです。世の中にたくさんあるそのスタイルにすごく違和感がある。「主体者は参加者」「参加者がALをALする」、そんな場にしたいと考え、今回もそれを実現できたと自負しています。
ICTの専門家や映像の専門家の手を借りず、すべてを自分たちでやることを選択しました。ここ数カ月間、調べる、考える、対話する、そして試行する、振り返る、検証する、改善する…その繰り返しでした。「AARサイクル」を回しながら、私たちがALしてきたと言えます。「参加者がALをALする場を創るためのAL」です(笑)。皆さんに「素人でもここまでできるんだ。やってみよう」と思っていただければうれしいです。
ただ、ITが苦手でZoomに苦戦される方がいらっしゃいました。また、ブレイクアウトセッションが機能しないなどのトラブルも生じました。申しわけなく思います。また、塾での実践発表が今年は少なかった。そこにも改善の余地があります。
次年度は、さらにバージョンアップしたフォーラムをご提供します。一人でも多くの方にご参加いただきたいと願います。
このイベントには「より以上を目指す学びのポータルとして」というキャッチコピーが付けられている。まさに先生方が「より以上」の授業・面談・研修を行っていくためのヒント満載のイベントであると実感した。
同時に、塾・民間教育と、学校教育、家庭教育、保育・幼児教育、スポーツ、キャリア教育、社会人教育、発達支援等を繋ぐ「インター(inter-)の役割を果たしていることも実感した。
受講満足度アンケートにおけるTOP2ボックス評価は、実に95%を叩き出した。飽くなき進化を遂げる当フォーラムの未来に注目だ。
さらなる具体的・実践的な学びの機会として、「アクティブラーニング実践講座」、「Ref-T< 教育コミュニケーション講座>」がオンラインで開催されている。
●お問い合わせ先
TEL:075-707-2170
e-Mail: info@jemro.jp