AJC(全国学習塾協同組合)森貞孝理事長の最新教育情報 第51回
中国の学習塾規制「双減」の続報
中国の学習塾規制「双減」の続報をお伝えする。前回(本誌9月号)で記載した通り、塾の新設は認めない。既存の塾はすべて非営利団体として登録する。株式を発行して資金調達することを禁止、投資会社からの投資は禁止する等といった措置を発表して、民間教育界に衝撃が走った。「双減」とは一つは宿題を減らすこと。細かく学年ごとに規制し、平均2・8時間にも及ぶ宿題漬けの状況を改める。もう一つは学校外での指導、つまり学習塾通いを減らすこと。具体的には、「言語・数学・英語・物理・化学・生物・政治・地理・歴史の主要九教科の塾通いを認めない。(体育のみは例外)代わりに学校側に対して放課後に補習授業を実施するよう求めている。
7月に発表されてから1カ月、北京市は8月25日に違法な運営をしていた63の学習機関を閉鎖させ、計311万元(約5300万円)の罰金を命じたと発表した。同日北京市教育委員会は、学習塾を非営利団体に改める「営改非」を推進していくこと等教師の転職支援等の方針を明確にした。8月下旬から大手塾の倒産や閉鎖が相次ぎ、保護者が前払いした費用の返還を求めて教室に殺到し混乱が生じている。ビルに入居している各地の教室は次々に無人となっている。10兆円規模と言われ、日本の10倍以上の産業が一瞬にして禁止された影響は大きい。非営利団体となった学習塾の費用は省が決めることになり、営利目的での存在は難しくなった。
さらに2年前から急成長したオンライン教育は実教室を持たない場合は禁止。学校が休む休日や夏期休暇の時なども指導は禁止など、より厳しい措置が発表された。
7月24日に発表された「双減」政策について概要をまとめてみたい。(目標)学校教育と教育全体のサービスレベルの向上かつ標準化。学生への過度な負担・教育費の負担・保護者の負担を軽減(放課後の教育サービスの向上)放課後の教育サービスの充実、教師が放課後自習サポート・解説(学外教育負担の軽減)すべての地域で学生向け学習塾の新規開設を認めない。既存の学生向け学習塾は非営利団体として再登記する必要がある。学生向け学習塾は株式上場による資金調達の禁止、投資会社からの投資も禁止。資格を持たない学習塾、講師は罰則が発生。週末や祝日、夏、冬休みに塾などの教育サービスを提供してはならない。就学前の児童に対する学習類(外国語も含む)の塾も禁止などを定めている。
そして就寝時間を厳守し、家事やスポーツ、読書などを奨励。1年から3年をかけて効果・結果を出すとしている。
中国は学歴が人生を左右するというほどの学歴社会で、6月に行われる日本のセンター試験にあたる「全国統一大学入試」(通称高考)の結果のみで大学の合否が決まり就職にも影響する。そのような国で「双減」政策はどのような効果を上げることが出来るのか。最近「国と党を愛する指導」とうたった勉強合宿の募集パンフレットが出回っているが実際は数学コンテストである。愛国教育の学習キャンプのプログラムのキャッチフレーズは「党への愛、国への愛、社会主義への愛の教育を推進する」とあるが実際は華数の星(数学コンテスト)への案内だ。果たしてこのような抵抗がいつまで続くのだろうか。また日本にどのような影響が出てくるのか、注視していきたい。