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NEA「どうなる? 日本の英語 これからの学びの不安や疑問に答えます」

2021-11-01

NEA2021 学びの教育セミナートリロジー「未来の学びを考える」

モデレーターを務めたサイタコーディネーションの江藤真規 代表

モデレーターを務めたサイタコーディネーションの江藤真規 代表

社会の変化がコロナ禍によって急速に加速する今、児童や生徒がどのように生きていけばよいのか。NEA(教育アライアンスネットワーク)が、小中高生を持つ保護者や教育関係者の声に応えるためのセミナーを3回に分けて実施。それがNEA2021 学びの教育セミナートリロジー「未来の学びを考える」である。その第1弾として「どうなる? 日本の英語 これからの学びの不安や疑問に答えます」が、会場&オンラインのハイフレックス形式で9月26 日(日)に開催された。
(公財)日本英語検定協会会長 吉田研作氏による基調講演と、(一社)YouthAction for Fuchu 代表理事関谷昴氏、ANNIE.. GLOBALEDUCATION 代表 中澤理氏、(公財)日本英語検定協会 マイケル・トッド・ファウツ氏による講演が行われた。モデレーターは(株)サイタコーディネーション代表取締役 江藤真規氏。

大海を泳ぎ回るための英語を

日本英語検定協会 吉田研作 会長

日本英語検定協会 吉田研作 会長

NEA事務局の柳裕樹氏による開会の挨拶に続き、(公財)日本英語検定協会会長の吉田研作氏の基調講演が行われた。テーマは「新しい日本の英語教育の方向性と大学入試改革」だ。吉田氏は上智大学名誉教授であり、日本英語検定協会会長を務め、文部科学省「英語教育の在り方に関する有識者会議」座長などの要職を務められ、日本人の英語力や学習指導要領などの調査研究も行われた。まず、吉田氏は日本の英語教育を振り返り、かつてのそれを金魚鉢にたとえた。
「金魚鉢の金魚は外の世界との接触はありません。第二次世界大戦後の教室が金魚鉢でした。当時は、外で外国人に出会うことがなく、英語教育とコミュニケーションは無関係であり、英語は文献を通して新しい情報を得るための手段でした。そのために細かな文法の違いなどが正確であることが、教育の基準だったのです」

ところが、その金魚鉢に少しずつひびが入る。1964年に東京オリンピックが、1970年に大阪万博が開催され、世界中から多くの外国人が来日したからだ。英語教育にコミュニケーションの要素が求められ、英会話ブームが到来したのである。しかし、英会話を学ぼうとしたのは生徒よりも大人であり、中学や高校では依然として教養としての英語教育が行われていたのだ。
「今から数年前にベネッセが中高生の英語指導に関する実態調査を行いました。学校でどのような英語の教育が行われているかを調べたものです。高校を見ると音読や発音練習、文法の練習問題、教科書の内容理解などが多くを占めています。これでは生徒が自主的に学習しない金魚鉢の中の教育のままです」
こうした教育の結果、2020年の日本人のTOEFL iBTの平均スコアは、アジア約30カ国の中で下から2番目となっている。 

そこで、新学習指導要領に取り入れられた指標がCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)だ。ヨーロッパのすべての言語に適用できるような学習状況の評価や指導の提供を目的としてつくられた基準である。CEFRが重要視しているのは、英語の「何を知っているか」ではない。英語で「説明できる」「理解できる」といった「何ができるか(Can-do)」だ。
一方、新学習指導要領が目標としているのは、思考力や判断力、表現力といった言語活動の「Can─do」である。それは、社会的な話題に関して、聞いたり読んだりしたことについて、自分が考えたことや感じたこと、その理由などを簡単な語句や文を用いて相手と述べ合うことができることだ。
「金魚鉢の中での英語教育は、英語の文法などの言語形式を理解し、練習し、最後に使ってみるというものでした。そのため、今までの入試は知識や技能を測るだけでよかったのです。

これに対して新しい学習指導要領に基づく英語教育は、英語を意味のある文脈で使ってみて、その家庭で知らなかった使い方や意味に気づき、気づいたものが理解され、最後に実際に使えるようになる、というものです。そこで、今年の春からスタートした大学入学共通テストの英語はこの新学習指導要領や、CEFRを参考につくられています。思考力や表現力、判断力、協働性とともに学んだ知識・技能を実際に使える下続き的知識としてどれだけ身についているかを測るテストであるため、文法や発音や語法を問う問題は出題されていません。
これからの英語は、日本人が実際にコミュニケーションできるMyEnglish でよいのです。こうした英語力を身につければ、金魚鉢から出て、無限に広がる大海を自由に泳ぎまわることができるのです」

閉じられた世界を、開かれた世界へ

Youth Action for Fuchu  関谷昴 代表理事

Youth Action for Fuchu 関谷昴 代表理事

次に講演したのは(一社)YouthAction for Fuchu 代表理事を務める関谷昴氏だ。演題は「『英語』から広がる世界~世界中の友達とともに生きる~」。関谷氏は東京外国語大学在学中に英語学習コミュニティを設立。フィリピンで教育支援活動を励んだり、世界を一周したり、世界青年の船で旅をしたりして、海外の人たちと交流してきた。これまで訪れた国は44カ国。現在はまちづくりの会社に勤務している。
「海外に行って英語が話せなくても生活はできます。でも、その国で親しくなった友人が悲しい表情をしていたら、力になりたいと思うでしょう。そんな時に世界共通言語である英語を話せれば、その人の気持ちを言葉を介して理解でき、言葉で励ますことができます。そして、その友人と深い関係性を築けるのです」
関谷氏は「英語を学ぶことは、コミュニケーションを学ぶこと」であり「閉じられた世界を、開かれた世界に変える」と力説。そして、子どもたちが英語を学ぶ理由の一つを次のように語った。
「理由は自分の興味や関心の中にあると思います。サッカーが大好きなお子さんなら、サッカーや応援している選手について日本語だけでなく、ネットなどを通して英語で知る。そうすれば、膨大な量の情報を手に入れることできるはずです。自分が大好きなことの知識が英語を通して限りなく広がることが、英語を学ぶモチベーションの源泉になると僕は考えています。
このセミナーには、多くの教育関係者の方々も参加されています。ぜひ、生徒さんが何に興味や関心を持っているかを知り、英語がいかにその楽しみを広げてくれるかを伝えていただけたらと思います」

国語力に合わせた英語力を

ANNIE.. Global Education  中澤理 代表

ANNIE.. Global Education 中澤理 代表

続いて講演をしたのは、ANNIEGlobal Education代表の中澤理氏だ。演題は「楽しく学ぶを間違わないで!教える側こそ意識を磨け!」。中澤氏は大学卒業後に学習塾や英語スクールを立ち上げ、インターナショナルスクールの運営にも携わっている。「『英語を楽しく学ぶ』と聞くと、子どもたちがニコニコ笑顔で先生を囲み、ダンスをしたりゲームをしたりしている光景を想像する方も多いでしょう。私はこうした『楽しく』を否定はしません。しかし、楽しみながらの先に何を目的とするのかを考えながら指導することが重要だと思うのです」
そして中澤氏は「この講演で最も伝えたいことは『国語力に合わせた英語力』をキーワードに『小さい子にはそんなに難しいことはできない』という先入観を払拭し、大人の感覚で判断しないこと」だと語った。
例えば、氏の英語スクールでは「How did you come here?」と3歳児に聞き、「I came here by car」と答えるようなやりとりは日常的に見られるという。
「これらの英語には中学生で習う過去形や前置詞が入っています。しかし、3歳児が母語でイメージできる内容は、習っていなくても使えるのです。私は年代にかかわらずに習って理解でき、使えるものは積極的に教えるべきだと思います。そして『このレッスンなら、実際にどのような結果が出るのか。どのレベルの英語がどの程度身につくのか』を把握し、その結果を多くの教育関係者と共有してほしいと思います。こうして教育のレベルを上げ、そのスタンダード化を目指すこと。これが私たち英語を教える側の使命だと思います。

日本英語検定協会  マイケル・トッド・ファウツ氏

日本英語検定協会 マイケル・トッド・ファウツ氏

そのために『楽しく学ぶ』を間違えず、学ばせ方、学ばせる内容に対して『本当にこれを続けていれば身につくのか』という課題と向き合い、教える側はその知識を磨くことが大切です」
最後の講演は(公財)日本英語検定協会のマイケル・トッド・ファウツ氏の「英語力をつける学びとは」だ。ファウツ氏は「英語力を身につけるのは、普段の生活の中でどれだけ英語に触れるかが重要である」と語り、そのための習慣を紹介した。その習慣とは「スマホやブラウザの設定を英語にする」「単語を調べるときは英英辞典を使う」「まわりの状況と自分のしている行動を英語にしてみる「英語で調べものをしてみる」「英語字幕で英語や海外ドラマを見る」の5つだ。 
そして日本英語検定協会のホームページからは英検の過去問が級別にダウンロードできると述べ、その活用を勧めた。 
こうして今回のセミナーは、これからの英語教育がどうあるべきかを参加者の心に深く刻んで幕を閉じた。


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