教育資源としての民間教育 第46回
公益社団法人 全国学習塾協会 安藤 大作 会長
人づくりの教育は国の基幹産業になってしかるべき
いまや日本の教育の現状において、民間教育抜きには語れない現状があります。公教育だけではカバーしきれない分野を様々に補完して、子どもたちの学びを支えて伸ばしてきたわけです。そのことで多様な人材を輩出し、また基礎学力を根底で支えてきながら、この国の発展に寄与してきたことは誰もが否定しきれないところです。
各省庁のみなさんとお話しをしていますと、チルドレンファーストの観点から民間教育を重要な社会資源として認め、共に歩けるような指針は整備されてきたように感じます。
しかし、教育行政は三重四重になっていて、民間教育と積極的に連携し協働し、参画させようという姿勢にあるかといえば、そのような仕組みにはなかなかなっていません。特に地方においては民間教育を重要な社会資源として認め、共に歩けるように運用している自治体は数えるほどです。
これはこの国の教育行政における仕組みのねじれや、これまでの様々な経緯が妨げとなっている部分が大きいようです。結果としてチルドレンファーストになりきれず、子どもたちの学びにマイナスの影響が出たり、また民間教育の機会喪失につながったとしても、それを行政施策としてカバーしていく機運は相変わらず低いままです。さらに民間教育側としてもそのことに対して声を上げていく機運がこれまではやはり高くはありませんでした。
結果として、国も社会も民間教育の活躍に支えられているところがあるにもかかわらず、それを振興していく姿勢をとりきれず、その中で民間教育は時代の施策に翻弄されながらもなんとか生き続けてきました。
しかし、民間教育という産業は国の基幹産業にもなり得るほどの社会的意義を本来持ち得ますし、さらにはその使命責任も、昨今の社会情勢からすればますます高まってきていると思われます。戦後、エネルギー業界が国の基幹産業になっていったように、今、人づくりの教育は国の基幹産業になってしかるべき時を迎えているようにも思います。
来年に創設が期待されている「こども庁」もそのような従来の仕組みを越えていくためのものとして期待されていますし、その仕組みの枠組みに関しては民間教育側の意見も参考にしたいと、全国学習塾協会にも政治家や諸官庁のみなさまから意見交換の機会の声掛けをいただいています。
民間教育は、また塾は、これまで通りの国も行政も関係なく規制を受けずに自由に営業していくのだという姿勢はもちろん大切ですが、一方で国も行政も関係ないという点においては従来とは変化してきており、国や行政に対してある一定の強い声も持ちつつ、社会資源としてさらに発展していくべき時を迎えています。そうした現状を鑑みたとき、全国学習塾協会の果たす役割は非常に重要なものになってきています。
思いのままにやれる塾から、自由にしかも責任をもって社会資源として堂々とこの国や地方を支える存在としてさらなる価値を高めていくためにも、そして私たちの業界のためにも、全国学習塾協会への加入をお願いするところです。私たちが立脚している社会基盤の強化のためにもご理解いただけますよう、どうぞよろしくお願いいたします。