NEA 学びの教育セミナートリロジー 今、子どもに伝えたい「学び」とは
2021年11月7日(日)、NEA教育アライアンスネットワーク(下屋俊裕理事長)がシリーズでお届けしている「未来の学びを考える」第3弾(最終回)が会場&オンラインのハイフレックス方式で開催された。
将来の変化を予測することが困難な時代、子どもたちは現在と未来に向け、自らの人生をどのように拓いていくことが求められているのか。自らの人生を生き抜く力をどのように培っていけばいいのか。そのヒントを探るべく、第一部では、20代・30 代の生き方・考え方を学び、第二部では、日本アクティブラーニング協会に学ぶ。内容を深めるセッションの進行役は様々な観点から教育の提言を行う石川一郎氏、モデレーターは、サイタコーディネーション代表取締役 江藤真規氏が担当した。
【第一部】基調講演
私が歩んできた道~みんなのこれからの学びのために~
スピーカー 宮坂 龍一 氏
QRコードを発明した日本人、QRコードで稼いだ中国人。
異文化での生活を通してわかったこと
東京生まれ東京育ちの私は、劣等感や貧しさとは無縁の超温室育ち。筑波大学体育学群に一般入試で入学するも、全国から集ってきた大学日本一の柔道部トップ選手たちの、ひたむきに自分の姿勢を貫く精神力の強さに衝撃を受け、ゼロからやり直したいと思いました。
海外なら日本での学歴や過去の記憶に邪魔をされず自分自身を鍛えることができるのではと考え、中国湖南省で日本語教師として新しい生活を始めました。
貧貧の差が激しい地方都市に住む若者たちは、将来は上海や広州で働くんだという強い夢を抱いています。また趣味でも政治の話でも忖度なしに自己主張を述べる彼らの姿勢に日本の若者との差を感じました。その後香港に渡り、現在に至ります。広東語、北京語、英語、習い事は当たり前の超学歴社会です。
至れり尽くせりの日本文化はやはり最高です。しかし、島国ゆえの精神的、物理的な海外との距離が、私たちの危機感を鈍らせているのも感じています。例えばQRコードは日本人が発明し、中国人がその技術特許権を保有しています。危機感の違いからこういったカラクリが生じるのかと。グローバル化が進む世界で日本人が海外と張り合うためには、彼らのやり方や文化を理解しなければならないのです。モノ、カネがないとき、人間は初めて必死になります。それが調べること、考えること、分析することにつながります。
スピーカー 前田 智帆 氏
私も受けたかったと思った「アフリカの教育プログラム」について
AO入試で津田塾大学学芸学部国際関係学科に入学。現在は大阪の太平洋人材交流センターで働いています。私にとってアフリカのセネガルは第二の故郷です。アフリカのリーダーたちは大変優秀。どのような教育を受けているのかを紹介します。
(1)手洗いマシーンを開発した ケニアの9歳の少年
コロナを機に、手洗いマシーンを開発。生きるというのは想像であり創造。考えたことを形にすることをずっと繰り返す。この背景には、ケニアではクリティカルシンキング(批判的思考、現状に疑問を持ち考え抜く力)がカリキュラムに入っていることが挙げられます。
(2)セネガルでは知識コンペクイズ 選手権がある
すべての中高生が参加。国をあげたクイズ選手権が開かれ、ディベートもあります。クイズを通して知識を増やし、知識の背景も学ぶ。チーム戦のため、いろいろな人と協力し、好きなものを突き詰め、得意なことを見つけられます。
(3)南アフリカ「Design Thinking」
デザイン思考の手順は、課題を設定し、解決策を検討するという2段階で進めます。例えば、問題解決のために、言語や生活習慣も違うアフリカーンスとコサという2つのコミュニティを歩きながら、何をどうやって変えるかを発見。データを集めて情報分析し、誰の何を解決するのかを考え実践します。学校の学びが社会とつながっているのが学びの原点。トライ&エラーできる場所と機会があり、〝自分ごと〟と日々の好奇心が課題解決のタネになり、他人のために役立てることができます。
スピーカー 関谷 昴 氏
DIVE INTO THE WORLD 自分だけの学びをつかみ取れ!
兄の影響で5歳から英会話を始め、東京外国語大学で英語と社会学を学びました。在学中(7年間)に、英語学習コミュニティの設立、フィリピンでの教育支援活動、世界一周の旅(37カ国を自分の足で歩く)、シェアハウスの設立、世界青年の船への乗船を通して、学びと実践を深めました。
旅に出たのは、世界を自分の眼で見たかったからです。生活はすべて世界とつながっており、この世で起きることに無責任でいたくなかった。責任がないというのは自由ではありません。旅に求めていたのは、頭の中で描くバーチャルな世界を、自らの手で触れるリアルな世界にしたかったということです。そして、自分の持つ世界認識とリアルな世界に触れたときに感じる〝違和感〟を大切にしています。
旅には、異なる日常との出会いもあります。インドのガンジス川では、川岸で火葬する場面に遭遇し、〝死〟について深く感じたり、パレスチナでは、ニュースだけではわからない暮らしや、その背景を知ることできました。
私が考える学びの形とは、どれだけ当事者意識を持って物事を見ることができるかということです。課題との出会いは実際に行くだけでもいい。仮説を持ち、知識の場合は観察し、経験の場合は学んでみる。それが自分なりの解釈や学びにつながっていくと思います。
セッション①
モデレーター 石川 一郎 氏
3人の若者の話は、新学習指導要領の3つの特色を体現している。世の中に出て活用できる知識・技能について、彼らは常に考え、実践してきた。想像することの大事さ、先を考える力、それを使う力を身につけることが大切。大人のちょっとした声がけで、子どもたちのモチベーションが上がり、自己肯定感のエンジンがかかる。学ぶことが楽しく、人のために役立ち、モチベーションにつながる空間として、学習塾が担うポテンシャルに期待したい。
【第二部】セッション②
自分の「道」を拓く学びとは
モデレーター 日本アクティブラーニング協会
理事 青木 唯有 氏
理事 小菅 将太 氏
日本アクティブラーニング協会では、これからの学びに必要なことを、様々な人財開発のプログラムを通して開発中。青木唯有氏は、非認知スキルの研究者として、研究成果や知見を教育現場や企業研修における人財育成という文脈でファシリテートしている。研修のテーマにあるのは非認知スキル。企業研修の一部「新時代の学力を鍛える SDGsカリキュラム」を体感するワークと、兵庫にある学習塾のインタビュー動画により非認知スキルのトレーニングを紹介した。
最後に石川一郎氏が、「認知と非認知の両方が大事である。非認知の部分に目を向けることにより、学ぶことが面白くなると学力も伸びる。好奇心が豊かなお子さんが育つと未来は明るい」と締めくくった。