AJC(全国学習塾協同組合)森貞孝理事長の最新教育情報 第55回
教育のあり方が激変する1歩が始まった予感
昨年の東京オリンピックの頃までは、2月の北京の冬季オリンピックはコロナとは無関係に何事もなく開催されると考えていた。そして9月に入って感染者数が急激に減り始めて、第6波が起こると一部の医療関係者が口に出しても、気にも留めないで、早く経済が回るように声高に話す人が増えた。その油断が1月から信じられないくらいの感染力で起こったオミクロン株の拡大に遅れを取っている。重症者が少ないとはいえ、ワクチン接種が行き届かない保育園や小学校、塾などでクラスターが発生し、無症状や軽症者が多いために、家庭内感染や老人ホームでの感染が始まり、重症者の半数近くが高齢者になってきた。二類から五類に分類を移せば、インフルエンザと同等の扱いになり、毎日何人などと発表することもなくなるが、警戒心がなくなり、一気に感染者は増える。そうした中でほとんどの人に抗体が出来て落ち着くことになるのだろうか。新しい毒性の強い変異株が出てこないことを祈るばかりだ。
さて先日中国の出生数が1000万人と過去最低を記録したとの報道があった。隣の韓国は特殊合計出生率が0・5を下回って、このままいけば世界で一番先に消滅する国家になると話題になっている。
日本もどんどん出生数が落ちてきている。出産可能な女性の人口が目に見えて減り始めているのが大きな要因だが、15歳から60歳までの生産年齢人口も減り始めて、日本の国内総生産指数も減少し続けている。
人口の減少はそのまま国力に影響して、今後活力が失われていくことが必至だ。
先日下村前政調会長が中心になって、教育立国推進協議会が設立された。1月19日に憲政記念館で設立総会が開催され超党派で約200人の国会議員と民間の教育関係者が集まった。江戸時代末期、長岡藩の米百俵の故事にもある通り、日本は教育に力を入れて未来を託す思想がある。3年近く文科大臣を務めた下村先生を会長として、自民・公明・維新・立民・国民の教育関係の幹部が勢揃いして、新しい時代の教育のあり方をまとめていくことは今最も求められていることではないのか。これから4月まで9回にわたって総会が開催され、方向性がまとめられていくことになる。教育を柱として日本が今まで以上に世界のリーダー力を発揮できるように期待したい。2月2日の第2回総会では、文科省の初中局学校デジタル化プロジェクトチームリーダー、GIGAStuDX推進チームリーダー板倉寛氏のGIGAスクール構想、経産省サービス政策課長浅野大介氏の未来の教室についての講演があった。今後は分科会に分かれ、4月までに9回の会合の中で、目指す方向性を作り上げていくようだ。
今まで、折に触れて未来の教室について浅野課長の話は耳にしてきたし、GIGAスクールについてもある程度の理解はしているつもりだが、200人近くの国会議員が集まって、その席で論じられると、従来の教育のあり方が激変する1歩が始まった予感がする。グローバルな人材の育成とは日頃耳にしているが、アメリカや中国が激しいIT化の戦いを繰り広げて、日本は今後どうなっていくのか。下村先生を中心に少子化の中で、教育のIT化、グローバル化が進み遅ればせながらも活気が出てきたこと、超党派で変わっていく方向性に大きな拍手を送り、期待を寄せていきたい。