AJC(全国学習塾協同組合)森貞孝理事長の最新教育情報 第58回
進みつつある教育の無償化の動き
塾経営には直接関係はないが、ここ数年教育の無償化が少しずつ進行している。塾通いの生徒たちにとっては大切な内容なので、保護者との面談の折に話題になるかもしれない。基本的な知識として理解しておきたい。少子化が論議された際に、子どもの教育費の負担が大きいことが話題になった。文科省が調査した子どもの学習費調査によると幼稚園から大学まですべて国公立で約770万円、すべて私立で約2200万円だという。そのほかにも生活費があり大学生の場合は自宅外での生活をする生活費がかなり掛かったりすることから、教育費を減らす、あるいは無償化することはできないかという話題が大きくなったように記憶している。幼児から大学生までどのように無償化の話は進んだのだろうか。
現在教育立国推進協議会が超党派で設立され、その中で幼児から大学までの教育のすべての無償化を進めることも含めて議論されている。どのような形でどこまで実現できるのかは今後に待つとして、現状はどうなっているのか検証してみたい。消費税が8%から10%に増税された時点で教育関係の無償化は一気に進み始めた。
子どもの成長に沿って順に見ていきたい。
教育費ではないが子どもが生まれると児童手当が支給される。3歳未満月1万5000円、3歳以上は第2子まで月1万円、第3子以降月1万5000円。中学生一律月1万円。
0から2歳までは非課税世帯の認可施設の保育料は無償、認可外施設は上限4万2000円まで無償。3から5歳児までは全員が対象で認可施設は無償、認可外施設は上限3万7000円まで無償となった。多子世帯については、第2子は所得制限を撤廃して半額、第3子以降は所得制限撤廃して無償。
小中学校は義務教育で、憲法第二十六条で無償と決められている。
高校の授業料は2020年から所得590万円未満の家庭まで授業料39万6000円上限として無償に拡充された。それ以上910万円未満は公立校と同じ11万8800円まで、910万円以上は、授業料は全額自己負担になる。
大学の無償化については、二点の条件がある。
①家庭の収入による制限と不動産以外の資産が2000万円未満であること
②成績の評価が3・5以上であること。
非課税世帯(約270万円未満)では、国公立の入学金28万円、授業料54万円まで無償。私立では入学金26万円、授業料70万円まで無償。家庭の所得が約300万円まではそれぞれの3分の2、約380万円までは3分の1となっている。
そのほかに給付型の奨学金(返済する必要がないもの)があり、非課税世帯で自宅通学者は年額35万円、自宅外通学者は年額80万円までが給付される。
以上述べてきたように、所得制限などがあるもののここ数年で無償化の動きが進んでいる。非課税世帯や一人親世帯で本人がやる気があれば大学まで進学することが可能なシステムが出来つつある。
さらに踏み込んで教育や技術の発展は将来の日本への投資だと考え、少子化で国力が衰えていくことなく、日本の未来が輝かしいものとなるためにすべて無償化し、安心して子どもを産み育てられる社会にしていく努力を続けてほしい。