荒れ狂う世界情勢を乗り切れる人材の育成を

7月にスリランカが国の破産を宣言した。これから数年間立て続けにこのような事態が続出し、世界経済に混乱を起こし、日本にもいろいろな影響が及んでくることが予測される。教育だけに目を向けていればいいという時代ではない。知識として将来への布石として社会情勢についても考えておくべきことだろう。
スリランカは紅茶の生産で有名だ。昔の国名はセイロンで、セイロン紅茶という名前は世界中に知られている。破綻の直接のきっかけはコロナ感染症で、外国人観光客が来なくなり、経済危機が深刻化し、インフレが続き、各地で暴動が起きた。財政破綻は予測されていたことだった。
しかし事はスリランカだけにとどまらない。例えばバリ島では、世界中から観光客が集まっていたビーチには人影はない。観光で多くの人が生活していたのに収入が途絶えて、転業する先もほとんどなく貧苦にあえいでいる。グアムはアメリカの準州でそんなに貧困に苦しんでいるわけではないが、観光業は壊滅した状態だ。日本も3000万人を超えて盛況だったインバウンド（訪日観光客）もストップしてホテルや旅館業、観光業者が倒産・転業せざるを得ないところも増えている。
加えてロシアのウクライナ侵攻で、ウクライナで生産される穀物の輸出が滞り、アフリカ諸国に食料品が行きわたらない状況が続いている。この70年、世界は人口爆発でわずかの間に70億人を超え、南太平洋の小さな島々でも、世界中からの観光客で持ちこたえてきた。
実は私は大学在籍中、国際経済、特に低開発国経済を専攻していたので、強い関心をもってこの数年の動きを見続けてきた。
コロナで傷めつけられて、満足にワクチンもない。観光客も激減して国の収入も大幅に落ち込んだ。そして海外へ出稼ぎに行っていた人たちがコロナ禍の中で締め出されて国に戻ってきた。このわずか2、3年でスリランカだけではなく貧しい国はさらに貧しく、格差は広がりつつある。農産物、鉱産物を持てない国は目の前の経済危機に打つ手がないのが現状だ。中国の一帯一路政策に踊らされて、大きな借金を背負った国は、スリランカだけでなく東南アジア各地に多く、今後中国に飲み込まれる懸念も大きい。
このような世界情勢の中で、教育に何の影響もないとは言えないだろう。兵器が増産され、コロナウイルスなど感染症が収束しきれない中で、貧しい国の人々の飢餓が続く。ICT関連の技術革新が飛躍的に伸びていく中で、難民キャンプで生きていくのも厳しい人たちの数が大発生していく。
これから10年先、国ごとの格差の拡大はとんでもない軋みが出てくる。その軋みを国ごとにどう受け止め、プラスに転じていくことが出来るかがその国の国力、言ってみれば産業と教育の政策に関わるだろう。
少子化とコロナ禍による経済危機。1歩誤れば泥沼にはまり込んで身動きが取れなくなる危うい細い道を渡り続ける中で、まだ日本はいくつかしっかりした武器を持っている。減ったとはいえ巨額なGDP、そして勤勉な国民性、教育力だ。
我々はこれからの日本をしっかりと支えていく人材を育て、荒れ狂う世界情勢を乗り切るかじ取りを任せられる人材の育成に注力していきたい。