成基コミュニティグループ 社内外から新社長を公募
佐々木喜一代表取締役社長が退任宣言
成基コミュニティグループの佐々木喜一代表取締役社長は、代表を退任して会長職に就き、広く社内外から新社長を公募することを発表した。自身のこれからの目標や新社長に求める人物像などを語った、教育百貨店・平野夏紀氏のYouTube動画の概要をご紹介する。
創立60周年のタイミングで退任を決意した経緯とは
今年、成基コミュニティグループは創立60周年を迎える。「なぜ退任を決意したのか」と平野氏に問われると、佐々木氏は次のように明かした。
「2代目として社長職に就いて35年を機に退任し、代表権のない会長・オーナーとして会社の発展を見守る立場になることを決意しました。今年64歳になります。自分に天命があるのであれば、それを全うしていきたいという気持ちです」
創業者である父親から経営を引き継ぎ、5教場からスタートして現在130教場を超えるまで拡大してきた。しかし、10年前の2012年10月に50周年を迎えた当時は、「自分が発揮するべき力を100%とすれば、まだ3%程度だと感じていた」と振り返る。
「50周年の記念式典に、当時野党であった自民党の下村博文先生を来賓としてお招きしました。『成基が目指すことは日本政府・自民党が考えていることと近い。成基ははるかにその上を目指そうとしている。再び自民党政権になったら、大きな教育改革を行うので参加してほしい』という祝辞をいただきました」
佐々木氏はこれを下村氏のリップサービスだと思ったと話すが、その後、その年の大晦日の日に下村氏から「教育再生実行会議をすることになったので、一緒に教育改革に取り組みましょう」と直接電話があったという。
「多岐にわたる教育再生への意気込みをうかがい、『私もやります』と本能的に即答しました。移動距離にして地球約6周分、各委員の持ち時間8分のために多い時は200時間かけて準備して、合計で5000~6000時間を費やしました。この取り組みによって、私自身は3%から50%まで力を発揮できたのではないかと自負しています」
2021年9月、8年8カ月に及ぶ教育再生実行会議は終了したが、佐々木氏は「教育改革は十分にはやれなかった」と後悔をにじませる。そして、「〝残りの50%〟を達成するために、成基というフィールドを離れようと決意しました」と語った。
1万人の先生を研修して生徒100万人の志を育む
次のフィールドで佐々木氏が目指すことは、どんなことだろうか。
『夢は自分のため、志は世のため人のため』と言われますが、戦後の公教育で最も欠けているものは『夢は語るけれど志は語らない』ことです。教育再生実行会議の第8次提言までの議事録まで全て調べたところ、『志』の言葉は130カ所に記され、提言書には30カ所ほど語られています」
しかしながら、各自治体の教育長や教育委員会の方々に『志』についての具体的な施策を直接訊ねたところ、学校の現場ではほとんど浸透していないと佐々木氏は指摘する。
「『立志教育』として親への感謝の手紙を挙げられました。もちろん素晴らしいことですが、自分の人生をどう生きるかを宣言することが真の『立志教育』です。ただし、これが正しい『志』だという正解があるわけではありません。100人100通りの『志』を創り出すことは、学校の先生には難しいと思います。そこで私は、全国3万4000の小中高校の1万人の先生に対して、子どもたちが『志』を創作できるような研修を行って、100万人の子どもたちの『志』を育みたいと考えています」
さらに、21世紀の最大の課題は、南北問題と地球環境問題だと佐々木氏は提言する。
「これらの課題を解決するために大きな役割を果たす人財を育てたいと思います。しかしあまりにもテーマが大きいため、私自身は成基から離れて活動するべきだと考えました。社長は社業に専念しなければならないとは思いませんが、会社の発展や従業員・取引先・顧客の幸せを願って動くリーダーが社長であるべきです」
日本の子どもたちのために力を注ぐ新たなステージへ
成基コミュニティグループはグランドミッションに『人づくり』を掲げている。今後ますますソーシャルビジネスの分野で社会問題の解決が問われると、佐々木氏は強調する。
「現行の学習塾業界のビジネスモデルは終焉を迎えています。大学入試の体制を切り替えない限り、『塾は栄えて国が滅びる』となるのは芳しくありません。国が栄えるためには、受験や偏差値を超えた新しいものを子どもたちに提供することが肝要です。そこで、社外から新しい血を入れる必要性を感じています」
成基は60年間ほぼ黒字決算で、累積する内部留保も数十億円という優良企業だ。佐々木氏は経営者としての厳しさと求める人財像についても語った。
「イノベーションには強力なリーダーシップが求められます。命がけで責任を持ってやり切る覚悟が必要です。人財の選考では、外部のアセスメントによる適性検査も行い、評価をします。ポテンシャルや仕事をする〝運動神経〟があれば、学習塾勤務の実績や経営経験は一切問いませんので、今学習塾以外の企業で働いていらっしゃる方でもOKです。ただし、プレゼンテーション能力は要求されます。全社員350名が集まる秋の総会でビジョンを語っていただき、投票を実施します」
成基コミュニティグループの今後の方向性について、佐々木氏は次のように示した。
「20年後、新卒の会社説明会で『昔は学習塾だったの?』と言われるようなイメージです。20年後も学習塾は継続していると思いますが、社会人教育や日本語学校など様々な人財育成を通して社会課題に取り組み、『人づくり』にこだわって、能力開発を必要とする時代にふさわしい人財を育成する会社でありたいと考えています」