AJC(全国学習塾協同組合)森貞孝理事長の最新教育情報 第61回
メタバースなどの先端テクノロジーを教育に
今世界中でIT技術の急速な発展により、あらゆる業種で激しい変化が起こりつつある。5年後・10年後に起こる激しい先端技術の変化について、全く無関心でいるわけにはいかない。教育の世界にも影響は当然出てくるはずだ。ここ2年ほどの間でも、コロナで教室での指導からオンラインの指導に切り替わったり、生徒全員にタブレットが配られたりして、旧態然とした指導のままではついていけない新しい塾の方向性が垣間見てとれる。
特定重要技術という言葉をご存じだろうか。5月に成立した経済安全保障推進法について、政府が先端技術の育成に向けて、国家や国民の安全にかかわる「特定重要技術」の候補として人工知能や宇宙関連技術など20分野の中から、有識者らを交えて選定し、基金を用いて研究開発を推進する。
具体的には他国に技術を窃取されるなどして不当に利用された場合に「国家及び国民の安全を損なう事態が生ずる恐れがあるもの」などと定義、AIや宇宙関連技術のほか、バイオ技術、先端コンピューティング技術、ロボット工学、音速の5倍以上の極超音速、センサー技術など20分野を挙げた。
これから数年で激しく進化する先端技術の中で他国に負けない技術革新の研究開発に基金を活用しながら推進する。有識者の意見を求めて9月頃に閣議決定するが、例えば宇宙開発について、ロシアがアメリカとの共同開発から離脱を発表し、中国が新たに宇宙ステーションを打ち上げ、さらに宇宙ステーションに補給物資を送り込む天舟2号も成功させるなど大国が威信をかけて競い合っている。ロシアのウクライナ侵攻から世界の国々が武力を用いてでも、国威を高め他の国々を傘下に収めようとする動きが目立つようになった。
その中で、教育に関係がある、日常生活に関係があるものはいくつも出てくると思われるが、メタバースという言葉を聞いたことがあるだろうか。メタ( 超越した) とユニバース( 宇宙・空間) を合成した言葉で、昨年10月にフェイスブック社が社名をメタに変更したことで一気に話題になった。
メタバースとは仮想空間そして近い将来のインターネットの姿といわれている。仮想空間上の世界にアバターとして人が参加し、仕事をしたり買い物をしたりゲームをしたりする。「あつまれどうぶつの森」などゲーム空間でイベントを行ったり、アバターの衣装を作り上げたり様々な新しい動きが作られる。
2020年のメタバースの市場規模は日本円で約5兆円程度だったが、2028年にはほぼ100兆円規模になると予想されている。先日7月末にリアル展示会「METAVERSE EXPO JAPAN 2022」がグランドハイアット東京(六本木)で開催された。この中で角川ドワンゴのN高校S高校は現実の校舎とは別にVRメタバース内に仮想校舎を持ってVRを活用した教育に取り組んでいる。3Dやコンピューターグラフィックも活用して好きなように見ることができるなど、具体的な活用例もあった。
今まさにすごい勢いで変化を続けている社会の動きにぜひ注視していただきたい。そして来年1月の私どもの主催する塾・教育総合展で時代の波を感じ、塾経営に生かしていただきたいと切に希望している。